子どもが「お金持ちになりたい」と言った時、親のあなたはなんと答えるだろう? 電子マネーにスマホ決済、インフレに物価高…お金の価値や概念は時代とともに激変しており、子どものうちからその感覚を身に付けるのは重要なことだ。今、親が子どもに伝えられることは…。
経営者で投資家、そして二児の母でもある池澤摩耶氏の書籍『元外資系投資銀行トレーダーママが伝授 子どもを人生ゲームの勝者にする最強マネー教育』より一部を抜粋・再構成し、新しい“家庭内マネーリテラシー”をお届けする。
小学生から「スマホ」&「AI」と仲良くさせる理由
2022年、OpenAIが生成AI「ChatGPT」を正式に公開したあとは、世界中で爆発的に利用者が広がりました。
その後、Googleが「Gemini」、Microsoftが「Microsoft365 Copilot」、xAIは「Grok」を続々と公開。各社がそれぞれの特性を持たせた生成AIを開発し、さらにそれらを目まぐるしくバージョンアップさせながら、ものすごいスピードで可能なことが増えています。そして、最新のスマホには、それらのAIが最初から搭載されています。
少し前に言われていた、誰もが手のひらでAIを駆使できるようになると言われていた未来は、今、まさに現実となりつつあります。
でも、ワクワクする未来がすぐそこにある一方で、一部の親たちは、こんな不安も抱えているようです。
「AIにレポートや宿題を丸投げしちゃうんじゃないか」
「試験中にカンニング目的で使われたら困る……」
そんな“悪用リスク”への心配の声も、たしかに多く聞こえてきます。
でも、世界全体がすでに動き出しているこの流れを、止めることも、避けることも、もはや不可能です。むしろ、ここから目を背けてしまうことこそ、子どもたちにとって一番のリスク。世界のスピードに、取り残される未来が待っているかもしれないからです。
だったら、AIを「どう使うか?」を前向きに考えるほうが、よっぽど健全なリスクの取り方だと私は思います。
「AIに仕事が奪われる」という話はもう珍しくありません。でも、それを“いつか来る未来”ではなく、“もう始まっている現実”として受け止めないと、私たち人間が置いていかれるのは時間の問題です。
とはいえ、必要以上に不安になることはありません。調べもの、計算、文章作成など、時間を短縮してAIが肩代わりしてくれることは増えています。
だからこそ、「努力して全部自分でできるようにならなきゃ」と思い込む必要は、もうないのかもしれません。今の時代に必要なのは、“全部できる人”になることじゃなく、“うまく使える人”になること。
人気の習い事「そろばん」より大切になってくること
よく「子どもにそろばんを習わせようと思っているけど、どう思いますか?」と聞かれることがあります。
私が大学では数学を専門に学び、その後トレーダーをしていたことからそういう質問が投げられるのかもしれませんが、私の答えはいつも同じ。
「AIに置き換えることができるスキルを、小さい子どもにこれから習わせる意味はあるのでしょうか?」
中学受験も、そのうち計算機持ち込みがOKになると私は考えています。実際、私が中学生のときいたカナダの学校では、すでに試験で微分積分の解が出せるような計算機が使われていました。
つまり、計算が早いとか、暗記が得意といった“置き換えられるスキル”の価値は、すでに下がり始めている。それよりも、式を自分で立てる力や、自分なりの視点で物事を考える力こそが、これからの時代に問われていくのです。繰り返しますが、今、人間が苦労して身につけた様々なスキルは、AIがより高いレベルでこなしていくようになりますし、すでになっています。
だからこそ、「AIに触れさせないようにしよう」「AIに負けないようにしよう」ではなく、「いかにうまくAIを使っていくか」を子どもたちに教えることこそが必要だと、私は思うのです。
だからといって、特別なことをする必要はまったくありません。
まずは、AIを日常のツールとして取り入れて、毎日のように使いながら「仲良くなる」こと。それだけで十分です。「検索」するだけじゃなくて、「相談」できるのが今のAIのすごいところ。たとえばこんなふうに――。
「ドラゴンと小学生が冒険する物語を一緒に考えて」
「空を飛んでいるうさぎの絵を描いてみて」
「地球の真ん中って、どうなってるの?」
「今から言うことを小学生っぽい英語に訳して」
なんでも一緒に考えてくれる相棒みたいな存在として、気軽に付き合えばいいんです。毎日使って、生活の中で自然とAIと仲良くなった子と、まるで触れずに育った子。この先の社会でどちらが生き残れるかは想像がつきますよね。

