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28歳で亡くなった阪神タイガースの元選手の実話を映画化! 松谷鷹也「横田慎太郎さんのことを知っていただきたい」前田拳太郎「誰かの背中を押す作品になるはず」『栄光のバックホーム』【インタビュー】

28歳で亡くなった阪神タイガースの元選手の実話を映画化! 松谷鷹也「横田慎太郎さんのことを知っていただきたい」前田拳太郎「誰かの背中を押す作品になるはず」『栄光のバックホーム』【インタビュー】

 プロ野球、阪神タイガースの将来を担う選手として期待されながらも、21歳で脳腫瘍を発症して引退、その後も病気と闘いながら講演会活動などを続け、2023年に28歳で亡くなった横田慎太郎の生きざまを描いた『栄光のバックホーム』が、11月28日から全国公開となる。

 主人公・横田慎太郎を演じるのは、新人俳優の松谷鷹也。元プロ野球選手の父を持ち、かつては高校球児として甲子園を目指すなど、横田との共通点も多いことから、大抜てきとなった。阪神タイガース在籍時の先輩で、横田の親友でもあった北條史也を演じる前田拳太郎と共に、作品に込めた思いや撮影の舞台裏を語ってくれた。

-プロ野球選手として将来を絶たれながらも、最後まで生き抜くことを諦めなかった横田選手の生きざまに心を打たれました。松谷さんは企画の立ち上げから関わり、その後、主演に決まったそうですが、まずは出演が決まった時のお二人のお気持ちからお聞かせください。

松谷 最初に秋山(純)監督から、横田慎太郎さんの映画を企画し、慎太郎さん役に僕を考えていると聞いたのは4年ほど前、僕もスタッフとして参加した『20歳のソウル』(22/市立船橋高校の応援曲「市船soul」の誕生秘話を描いた映画)の撮影が終わった後でした。そのときは、信じられないような気持ちでした。その後、慎太郎さんと何度かお会いする機会があり、映画が完成したら、慎太郎さんが続けている講演会に僕も協力できたら…と考えていたんです。でも、その夢がかなわないまま、慎太郎さんが亡くなってしまって。ただその分、慎太郎さんのことを多くの方に知っていただきたい、伝えなければと、より一層、作品に向き合う気持ちが強くなりました。

前田 僕は、この映画のお話をいただくまで、横田選手のことを知らなかったんです。でも、だからこそ「きっと誰かの背中を押す作品になるはず。僕のように横田選手のことを知らない人たちに、その生きざまを伝えられれば」という気持ちになりました。実在の方を演じるのは初めてでしたが、秋山監督からは「北條選手のまねをするのではなく、この映画における北條選手を演じてほしい」というお話がありました。

-強い気持ちを持って臨んだ撮影で、特に印象に残ったことを教えてください。

松谷 劇中では、慎太郎さんが引退試合で披露した“奇跡のバックホーム”も再現されています。今も語り継がれる伝説のプレーなのでご存じの方も多く、秋山監督が「CGは使わない」とおっしゃっていたので、その撮影のために4年間かけて準備をしました。野球をやるのは肩を壊してやめて以来約10年ぶりで、最初は全く投げられませんでしたが、「絶対に成功させなければ!」と強い思いを持って臨みました。その分、撮影当日は「ついにこの日が来た!」と身震いするような気持ちでした。

前田 僕は野球の経験がなかったので、最初は「野球のシーンは少ない」と聞いて安心していたんです。ところが、撮影に入ったら、思ったよりも多くて(苦笑)。そうしたら、鷹也さんが僕の練習にずっと付き合ってくださったんです。地方に泊まり込みでの撮影でしたが、撮影が休みの日も早朝から一緒に練習をしたり、素振りをしたり…。

松谷 限られた時間の中で一生懸命、野球に取り組まれていてすごく尊敬してます。

前田 手にできたマメがむけるのを、鷹也さんに見せて2人で喜んだこともありましたね(笑)。鷹也さんには、本当に支えていただきました。

-横田選手と北條選手は親友だったそうですが、初共演のお二人の中で、その距離感をどのように作り上げたのでしょうか。

松谷 特別なことをしたわけではありませんが、やっぱり、一緒に野球の練習をしたことが大きかったと思います。

前田 おかげで、役とはまた違った僕たちならではの関係を築くことができました。東京に戻ってからも、たびたび鷹也さんが食事に誘ってくれますし。

松谷 マエケン(=前田)は、全身から人柄のよさがにじみ出ている好青年なので、いつも会いたくなってしまうんだよね(笑)。

前田 実は撮影前、鷹也さんとどう接すればいいのか、いろいろ考えていたんです。実年齢は鷹也さんが上ですが、役の上では僕が先輩なので、先輩らしくドーンと構えていた方がいいのかな、とか(笑)。でも、誰に対しても平等に接する鷹也さんは、人見知りの僕のこともすぐに受け入れてくださったので、そんな心配は無用でした。

-そんな親しい関係を築き上げたお二人に加え、WEBで公開されている本作のプロダクションノートを拝見すると、秋山監督をはじめとするスタッフの熱量もかなり高い現場だったようですね。

松谷 俳優がスタッフも兼任するのが秋山組の特徴で、「慎太郎さんの生きざまを伝えたい!」という思いを全員が持って撮影に臨んでいました。真夏のロケなど、現場では大変なこともありましたが、全員野球で一丸となり、乗り越えていきました。

前田 鷹也さんが言ったように、俳優とスタッフを兼任する方もいて、秋山組のチームワークの良さを感じました。後から合流した僕のことも、「一人にさせない」という空気が感じられ、仲間として受け入れてくださったことが、うれしかったです。おかげで、僕も迷うことなく、皆さんと同じ方向を向いて撮影に臨むことができました。

-そういう皆さんのチームワークが、この作品に結実しているわけですね。では、そんなふうに人を引き付ける横田さんのどんな点を最もリスペクトしていますか。

松谷 初めてお会いしたとき、慎太郎さんが「病気になってから、世のため、人のために何かしたいと心から考えるようになった」とおっしゃっていたんです。「タイガースの選手時代は、ひたすら野球、野球、野球で、自分がレギュラーになることしか考えていなかったけど、脳腫瘍になり、いろんな人に支えられ、助けられていることを、強く感じるようになった。だから、これからは支えてくれた人たちを、自分が支えられるようになりたいんだ」と。実際、慎太郎さんは亡くなる直前まで講演会やYouTubeを通じて、自分の経験を多くの方に伝えていたんです。慎太郎さんのそういう姿勢は、ものすごくリスペクトしているところです。

前田 横田選手の生きざまには、僕も深く感銘を受けました。ただ、横田選手だけでなく、この物語に登場する人たちは、誰もが自分のすべきことを最後までやりきっているんです。皆さんのそういう姿勢は、本当に尊敬できるなと。僕の演じた北條選手も、プロ野球は引退しましたが、今も横田選手の思いを受け継ぎ、諦めずに社会人野球で選手を続けています。そんな北條選手の生きざまにも、胸を打たれました。

-この作品を経験して、ご自身の中で変化を感じたことがあれば教えてください。

前田 初めて実在の方を演じさせていただきましたが、台本を読んでもすごく身近に感じられるようになり、今までとは台本の見え方が変わった気がします。それは、この映画が横田選手や周囲の人たちの生きざまを伝えるノンフィクションの物語だったからだろうなと。おかげで、お芝居に対する距離感が今までよりも縮まったと感じています。

松谷 先日、甲子園でファーストピッチをやらせていただいたとき、甲子園歴史館を見学させていただきました。普段は飾られていない慎太郎さんが入団したときのサイン色紙を、特別に見せていただいたんですが、そこには「日々成長」という言葉が書かれていました。慎太郎さんは、子どもの頃から目標を立てて一歩ずつ前進してきた方で、病気になったときもその姿勢は変わらなかったそうなんです。だから、その色紙が僕には慎太郎さんの象徴のように感じられて。以来、僕も「日々成長」を胸に生きています。

(取材・文・写真/井上健一)

幻冬舎フィルム 第一回作品

『栄光のバックホーム』

11月28日(金)より、TOHOシネマズ日比谷 他 全国ロードショー

製作総指揮:見城 徹 依田 巽

原作:『奇跡のバックホーム』横田慎太郎(幻冬者文庫)

『栄光のバックホーム』中井由梨子(幻冬舎文庫)

脚本:中井由梨子

企画・監督・プロデュース:秋山 純

出演:松谷鷹也 鈴木京香

高橋克典 前田拳太郎 伊原六花・山崎紘菜 草川拓弥

主題歌:「栄光の架橋」ゆず(SENHA)

配給:ギャガ

制作:ジュン・秋山クリエイティブ

 

配信元: エンタメOVO

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