なぜ猫は男性飼い主に対して鳴き声頻度が上がるのか?

では、なぜ猫は男性の飼い主にだけ、鳴き声の頻度が上がるのでしょうか?
単純に考えれば、猫たちは男性に対してより強くアピールする必要があると感じていると言えるでしょう。
問題はその理由です。
論文の著者たちは、先行研究をもとに「男性のほうが、猫のささやかなサインを読み取りにくいのではないか」と推測しています。
女性の飼い主は、日頃から猫に話しかけ、鳴き声の意味を読み取ることに慣れているため、小さな声やしぐさでも気付いてくれます。
一方で、男性はそうとは限らず、「はっきり鳴かなければ反応してくれない」と猫が学習しているのかもしれない、というわけです。
さらに著者らは、トルコという文化の影響も指摘しています。
トルコでは、男性が感情をあまり言葉で表さない傾向があるとする研究があり、そのため猫が「言葉少なめの男性」のかわりに、自分の鳴き声でコミュニケーションのギャップを埋めている可能性があると述べています。
猫たちは日常の経験を通して、「この人には小さく鳴いても伝わりにくい」「この人には一声で十分」といった、相手ごとの“反応パターン”を学んでいる可能性は十分にあります。
これら論文著者の予測が正しければ、男性に対してお帰りの「ニャー」が多いのは「愛ゆえ」というより猫目線では男性のほうがが「鈍くみえるから」となるでしょう。
さらに今回の研究は「鳴き声は他の挨拶行動と独立したレイヤーかもしれない」「猫は人の性別や文化的な話し方の違いに応じて鳴き方を変えているかもしれない」という、新しい問いを投げかけました。
著者たちは今後、多様な国や文化で同様の調査を行うこと、飼い主の話しかけ方や猫の性格なども同時に測ることを、次のステップとして提案しています。
もしあなたの家で、猫が特定の人にだけよく鳴くなら、それはもしかすると「この人には、これくらい声を張らないと気付いてもらえない」という、猫からの鈍感度の評価なのかもしれません。
元論文
Greeting Vocalizations in Domestic Cats Are More Frequent With Male Caregivers
https://doi.org/10.1111/eth.70033
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部

