子どもを連れて外出するとき、周りに助けを求めたい場面があっても、言葉にできないまま飲み込んでしまう親は少なくありません。気まずさや遠慮、迷惑をかけてしまうのではという不安は、多くの親が抱えるものです。一方で、困っている様子を見かけても「声をかけたほうが良いのか」「余計なお節介になるのでは」と迷う人もいます。
双方が歩み寄りたい気持ちを持ちながら、うまく伝えられずにすれ違ってしまう――そんな状況を少しでも軽くするために誕生したのが「子育てマーク」です。
このマークは、親の「助けてほしい」という思いと、周囲の「力になりたい」という気持ちを、キーホルダーという身近なかたちで可視化する仕組みです。言葉にするのが難しい場面でも、マークをきっかけに自然なコミュニケーションが生まれることを目指しています。
孤育てという社会課題が注目される中、「頼る」「手を差し伸べる」という行動をもう少しやさしく、自然にできる社会へ。その願いを背景に、子育てマークプロジェクトは動き始めました。今後はクラウドファンディングを通じて、多くの人と一緒にこの仕組みを広げていく予定です。
子育てにまつわる“言えない気持ち”が生む課題

子どもを連れて外を歩いていると、ほんの少しだけ手を貸してほしい場面は少なくありません。ベビーカーの段差、荷物が多い日のお会計、泣いてしまったときの周囲の視線……。誰かに助けを求めたいのに、声に出す勇気が持てない。そんな思いを抱えている親は決して少数ではなく、アンケートでは多くの人が「助けて」と言えない経験をしたと答えています。

一方で、困っていそうな親子を見かけたときに「声をかけたい気持ちはあるけれど、迷惑かもしれない」「どう手伝えばいいか分からない」と立ち止まってしまう人も多いといいます。手を差し伸べたい側にも遠慮が生まれ、結果として双方が“やさしさを伝えられない”状況が続いてしまうのは、今の子育て環境にある静かな課題のひとつです。
本当はつながりたいのに声が届かない――。そんな親と周りの人の間にある小さな溝を、どうすれば埋められるのか。今回のプロジェクトは、その問いに向き合うところから始まっています。
思いを可視化する「子育てマーク」とは

子育てマークは、親の「助けてほしい」という気持ちと、周囲の「手を貸したい」という思いを、自然につなぐための小さなサインです。キーホルダーやステッカーとして身につけることで、言葉にしなくても相手に気持ちを伝えられるよう工夫されています。
デザインは二つに分かれており、ひとつは「助けて」という思いを持つ側のマーク。もうひとつは「助けたい」と思う側のマークです。色で区別されているため、お互いがどの立場なのかが一目で分かり、自然に声をかけやすい雰囲気をつくります。

この仕組みは、ママやパパだけでなく、祖父母の方やベビーカーを押すファミリー、また子育て経験者や学生、地域の大人など、誰でも使えるように考えられています。駅のホームや買い物中、公園での時間など、ふだんの生活の中で活用できる場面は想像以上に多くあります。

「助けたい気持ちがあったけれど、どう声をかけていいかわからなかった」
「少しだけ手伝ってほしかったけれど、言い出せなかった」
そんな場面をやさしくつないでくれるのが、この子育てマークです。
