「体をシャキッとさせたい」「眠気を吹き飛ばしたい」そんな時に飲むコーヒー。しかし、それは知らないうちにただの「ドーピング」をしているだけかもしれない。今一度、知っておきたいカフェインと自律神経の関係性とは。
医師である小池雅美氏の初の書籍『気分の9割は血糖値』より一部を抜粋・再構成し、カフェインがもたらす作用について解説する。
カフェインをお休みしてみる
カフェインを含むコーヒーや紅茶。その香りと味にほっと一息つく。そんな一時の幸せは何にも代えがたいものです。本来このような嗜好品はその人を幸せにするために存在するはずです。
しかし問題は多くの人が、体調不良をごまかすために無意識のうちに「ドーピング」としてのカフェイン摂取に依存していることです。つまり体を酷使するために使ってしまっているのです。ほっと1杯ではなく、パフォーマンスを維持するために何杯も浴びるように飲んでいる人もいます。
みなさんにカフェインをなぜそんなにとるのか尋ねてみると、「体をシャキッとさせたいから」「眠気を吹き飛ばしたいから」「元気を出したいから」とおっしゃいます。
ちょっとここで考えてみてください。「コーヒーを飲まないと元気が出ない」ということは、コーヒーなしではもう動けないほど疲れているということです。
コーヒーや紅茶などの飲み物をとることそのものが問題なのではありません。カフェインをとらないとシャキッとしない、だるくて眠くなってしまう、その体の状態こそが問題なのです。
エネルギー切れのサインをカフェインでごまかしていると、つねに交感神経が優位になりっぱなしで疲れがとれず、その疲れをごまかすためにさらにカフェインに頼ってしまう。すると体調はますます悪化していきます。
知っておきたいカフェインの作用
朝食のコーヒーで1日をスタートさせ、仕事をしながら何杯も飲む人。食後のコーヒーが欠かせない人、コーヒー好きを通り越してコーヒー依存になっている人は思いのほか大勢いらっしゃいます。
コーヒーやお茶など、食品としてのカフェインの使用は法的に問題がありません。ですから日常的な飲み物として身近にあります。小さな子どもが水分補給にほうじ茶やウーロン茶を飲んでいる姿も見かけます。どちらもカフェインが含まれています。
しかしカフェインそのものは中枢興奮・鎮痛剤として医療用にも使われるほど強い作用があり、過剰摂取には注意が必要です。依存性、中毒性があり、過剰摂取による急性中毒で死亡事故も起きています。大量ではなくても、日常的に摂取することで確実に自律神経を乱します。
体調不良をごまかすためのカフェイン摂取のメリットはまったくない、といっても過言ではありません。
ただ、カフェインの影響には個人差があります。人によってはどれだけ飲んでも平気という人もいれば、ほうじ茶1杯で動悸が出るという人もいます。
カフェインへの感受性には個人差があり、いくつもの遺伝子の特徴が影響し合うことによってカフェインの代謝速度や自律神経への感受性が異なるからです。またそのときの体調にも大きく影響されます。
原因不明の不整脈が出るという人が、じつはカフェインのとりすぎだったというケースは日常の診療ではよく見かけます。不安感が強い、パニック障害があるという場合も、カフェインによる交感神経過緊張が「後押し」をしている可能性があります。
いずれにしてもカフェインを日常的に摂取している人は、まずは10日ほどカフェインオフチャレンジをしてみてはいかがでしょうか。日常生活をカフェインの力に頼っていないのであれば、なおさら問題なくチャレンジできるはずです。
そして体調がどう変化するか、観察してみることをおすすめします。
もし試すのであれば、カフェインレスと書かれたものでは意味がありません。カフェインレスは微量のカフェインを含んでいるので、すべてノンカフェインにしてください。
念のため、大切な用事のある前日からのスタートは避けたほうがいいでしょう。体内から急にカフェインがなくなることで集中力がなくなる、ぐったりする、頭痛がひどくなるなどの症状が出ることがあるからです。これらはカフェインの離脱症状です。普段の活動がじつはカフェインのバックアップなしではできなくなっているということです。

