東京都練馬区の私立武蔵高等学校中学校で28日正午ごろ、中学1年の男子生徒(13)が同級生の首をカッターで切りつける事件が起きた。「武蔵」といえば毎年、東大をはじめとした難関大学への合格者が多数輩出し「開成」「麻布」と共に御三家と呼ばれる超名門校だ。事件を受け、同校校長は同日午後9時から校舎内で会見を開き、謝罪を述べたうえで「事件の真相解明に尽力する」と述べた。
「少なくとも約28年間はこのような“事件”が起きることはなかった」
事件の舞台となった学校は、「御三家」と呼ばれ、名門進学校とされている「私立武蔵高等学校中学校」。同校では同日午後9時から緊急の記者会見が行われ、会見には杉山剛士校長と酒井良介教頭、同校の顧問弁護士の3人が出席した。
校長と教頭は冒頭に「お預かりしております大切な生徒の命、安全を脅かす、あってはならない事態が発生いたしましたことに対して、関係者の皆様に対して心からおわび申し上げます」と謝罪し、約10秒間頭を下げた。
校長によると、加害生徒と被害生徒の2人は中学1年生の同じクラスとのこと。事件は4時限目(午前11時30分〜12時30分)に行われていた英語のスピーキングテスト中に起こった。
4時限目が開始されてから20分後の午前11時50分。男子生徒が被害生徒に対して、首の左側を約15センチほど切りつけた。
校長によると、使用された刃物は刃渡り1センチ程度のミニカッターで、学校から支給されたものではなく生徒個人が所有していたものだという。校長は「ミニカッターは(授業で使うわけではないが)いわゆるプリントを切り貼りしたときに使用していたものと思われる」と説明した。
切りつけられた被害生徒は、正午ごろにクラスの生徒が付き添う形で保健室に運ばれ、救急車が10分後に到着した。被害生徒は会話が可能な状態だったという。
「私も救急車が来る前にすぐ保健室に行きました。 そのときすでに、被害生徒は応急処置を受けて、包帯で傷口を止められており、ベッドの上に座っていました。言葉のやり取りも普通にできて『大丈夫か』と聞くと、『大丈夫です』と返ってきました。被害生徒は近くの大学病院に搬送されました」(校長)
いっぽう切りつけたとされる加害生徒には、保健室で聞き取りが行われ、その後警察官によって署へ連行されたという。
「警察の方が横で聞き取りしたので、私は声をかけることができなかったんですけども、涙を浮かべていたのが印象的でありました。2人の間でのトラブルなどは把握していません。また、イジメにあっていたとか、そのようなことはございません」(校長)
幸いにも被害生徒の傷は浅く軽傷で済み、午後3時20分に母親と同校に戻ってきたという。1週間後に抜糸を行う予定で、「明日も学校に行きたい」などと話しているという。
酒井教頭によれば「少なくとも約28年間はこのような刃物による“事件”が同校で起きることはなかった」と肩を落とした。
教育方針は「自ら調べ 自ら考える」
同校は今後、調査委員会を設置し原因を究明する方針だ。
「警察への捜査協力はもちろん、生徒へのケアも進めているところでございます。 本日は、6時間目には中1の全クラスでホームルームを行い、事件の一報を伝えるとともに、生徒が動揺しないように各担任から声がけをしたところです。 今後、必要に応じてクラス担任との面談、さらに本校にはスクールカウンセラーが常駐しておりますので、その面談を進めてまいります」(校長)
息子を同校の高等部へ通学させる保護者は「武蔵中学は中高一貫で都内有数の進学校として知られています。まさかこんな事件が起きるとは思わなかった。
ひと学年年の人数は約170人程度で、東大や京大といった最難関国公立に多くの合格者を出しています。また医学部への進学も強いです」と語る。
武蔵高等中学のホームページによると、同校の教育方針は「自ら調べ 自ら考える」と定められている。前出の保護者によると、教育方針に準ずるように制服や校則はなく、授業もノーチャイム制で、中学校の図書館は大学図書館並みの蔵書数を誇り、特に洋書や専門書が豊富だという。そのほか、運動部にも力を入れているという。
「グラウンドは人工芝で、サッカー部や野球部が使用できます。また、プールは温水などの体育設備が整った学校とも言えます。
特にこの学校は理科教育に力を入れており、物理・化学・生物・地学といったそれぞれの専用の実験室が設置されるほど、学習にも力を入れているんです」(同前・保護者)
同校のOBもこう証言する。
「学校の教育方針は、世界に雄飛する人物を目指せ、です。自調自考がモットーで、暗記教育に頼ることなく、自分で調べて考えて知識をつけていくといった教育を目指しています。卒業生には衆院議員の木原誠二氏や元首相の宮澤喜一氏などの政治家が多数います。まさかそんな母校で粗暴な事件が起きるとは……」
学校は今後、事件の解明に急ぐという。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

