吉本興業を退所し、独立から1年を迎え、お笑い芸人としての仕事だけでなく、舞台、YouTube、創作活動と幅を広げ続けるエハラマサヒロ。自身の仕事スタイルだけでなく、モノマネ業界にも大きな変化が訪れているという。いまモノマネ界で何が起きているのか、エハラの目線で語ってもらった。(前後編の後編)
“歌マネ”が重宝される時代に。変わりゆくモノマネの評価基準
──今のモノマネ業界において、トレンドはどこにあると思いますか?
エハラマサヒロ(以下、同) ここ数年で大きく変わったのは、「誇張モノマネ」より「歌モノマネ」が重宝されるようになったことですね。昔はテレビを見て「なんとなく似てる」で成立していた部分もあったと思うんですけど、今はスマホでTikTokやYouTubeを観れば、いつでも「答え合わせ」ができる。みんなが「正解」を持っているから、誇張すると「いや違うやろ」ってなってしまうんです。
──昔は「印象」が笑いになっていたけれど、今は「どれだけ似ているか」が重視されているということですか。
はい。それにテレビの視聴者の年齢層も上がっていますよね。40代以降の方々は、笑いより「ちゃんと歌を聴きたい」という気持ちが強い印象で、歌のクオリティが高いほど評価されやすい。そこが近年のモノマネ界の大きな変化だと思います。
──原口あきまささんも30周年記念ライブで生バンドを取り入れた歌ものをたくさん披露していましたし、集英社オンラインの「ものまねスター列伝」で同様の変化を口にしていました。
原口さんも、トレンドを察知してニーズを取り入れているんだと思います。でも本当は葛藤があって、もっと誇張して面白いことに振り切ったモノマネをやりたいはずやと思うんですよ。だけど求められるものが変わってきているから、お客様のニーズを考えて構成されてるのだと思います。
ただ、「めちゃくちゃ面白ければ、似ていなくてOK」という方向もあって。ハリウッドザコシショウさんやキンタロー。は、その代表格ですよね。
ミラクルひかるに感じる、モノマネ芸人としてのすご味
──そうしたモノマネの質と笑いを絶妙なバランスで実現しているのって、誰でしょう?
ミラクルひかるですね。上手いのに面白い。僕の中でのライバルは、完全にミラクルひかるです。あの人はほんますごい。
──舞台「ザ・ミュージカルマン2025」でも共演されてましたが、どのあたりにすごみを感じるのでしょうか?
一番すごいのは「発掘をまだ楽しんでいるところ」ですね。家でネタを作って「明日学校で友達に見せたい!」みたいな、あのワクワク感のまま今もモノマネをやっている。「ウケるからやる」「今のトレンドに合わせよう」とかじゃないんですよ。純粋に「見つけること」が楽しくて、それを早く誰かに届けたい。そのピュアさがめちゃくちゃ強いと思います。
モノマネ芸人って、仕事になっていくと「数字が取れるから」「テレビ映えするから」という理由でモノマネの対象を選ぶことが増えるんですけど、彼女には関係ない。自分が今やりたいことだけを探して、それを形にしてるんです。今回のミュージカルでも、十八番の広瀬香美さんも工藤静香さんもやってないですからね(笑)。
──そうした業界の変化に対して、エハラさんはどう感じてますか?
僕は笑いも欲しいけど、同時に「おぉ、すごい!」という反応も好きなので、どちらが主流になってもあまり気にはならないですね。昔は北斗晶さんのモノマネコントとかも結構やっていましたけど、ここ数年はちゃんと歌って、その中で面白いように歌う、みたいな方向でやっています。
──SNSでは「あるあるモノマネ」のほうがバズると言われますが、そこも変化のひとつ?
たしかにそうですね。芸能人を真似るより、学生時代の友人や先生とのやりとりとか、バイト先の先輩とか、 “日常あるある”のほうがSNSだとウケがいいんです。
僕も『細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』などで、細かいあるあるモノマネをいっぱいやってきましたし、昔からあるテーマではあるんです。でも今のほうが重宝されますし、シチュエーション込みのミニコントとして見せるなど表現方法も変わってきています。

