■複数の登場人物の視点で迫る児童失踪事件の驚くべき真相とは…?
平凡な町メイブルックで、“深夜2時17分”に小学校の同じクラスの生徒17人が失踪する不可解な事件が発生した。クラスで姿を消さなかったのは、赴任してきたばかりの担任教師ジャスティンと、男子生徒アレックスのみ。事件を受け、アーチャーら失踪した児童の保護者たちは、ジャスティンの責任を厳しく追及。戸惑う彼女は、自ら事件を調べ始めるが…。

本作の監督を務めたのが俊英ザック・クレッガー。スリリング&予測不能な展開で絶賛されたホラー『バーバリアン』(22)に続く2本目の長編となる。もともとクレッガーはコメディ畑の出身で、怖いだけでなくユーモアや遊び心も持ち味。若き日のサム・ライミを思わせる作風は、今作にも活かされている。そんな本作の魅力の一つが、事件に関わってしまった登場人物たちによって繰り広げられる群像劇。一癖も二癖もある個性的なキャラクターを演じるため、製作総指揮も務めるジョシュ・ブローリンをはじめ、世代を超えて演技派たちが集結した。映画を彩る彼らのプロフィールを紹介しよう。

■消えた児童の父親アーチャー/ジョシュ・ブローリン

失踪した生徒の父親で建築業を営むアーチャー。学校や警察の対応に不満を抱き、独自に捜査を開始する。それまで“よき父”でなかったアーチャーは、後悔の念に駆られ、強引なやり方で情報を収集しながら事件の核心に近づいていく。演じるブローリンは1968年生まれ。映画デビューは『グーニーズ』(85)で、『ミルク』(08)ではアカデミー賞助演男優賞にノミネートされている。いかついルックスからタフガイ役を数多く演じてきた。おもな出演作に『ノーカントリー』(07)、『L.A.ギャング ストーリー』(13)、『インヒアレント・ヴァイス』(14)、『デッドプール2』(18)、『DUNE/デューン 砂の惑星』(20)など。近年では、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)などマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)における最強の敵サノス役で最も知られている。

■生徒が失踪したクラスの担任教師ジャスティン/ジュリア・ガーナー

なんの前触れもなく教え子たちが姿を消し、途方に暮れる新任教師ジャスティン。保護者やマスコミからもバッシングを受けるなか、しだいに彼女の“不適切な”過去が明らかになっていく。ジャスティンを演じているのがジュリア・ガーナーだ。1994年生まれのガーナーは、17歳の時にカルト教団を題材にした『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(11)で映画デビュー。『愛しのグランマ』(15)で注目を浴びると、映画界でのハラスメントを描いた主演作『アシスタント』(19)でも演技派として高い評価を獲得した。追い詰められる役がよく似合うガーナーは、『ローズマリーの赤ちゃん』(68)の前日譚『7A号室』(24)や『ウルフマン』(25)のほか、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(25)でも地球の滅亡を警告する宇宙からの使者シルバーサーファー役で出演して話題を呼んだ。

■どこにいても肩身が狭い警察官ポール/オールデン・エアエンライク

警察署長の娘婿で、職場でも家でも立場の弱い警察官ポール。実はジャスティンの元カレなのだが、要領がよくないことから事件に巻き込まれていく彼の痛いユーモアは本作における一種の清涼剤といえる。そんなポール役を担ったのがオールデン・エアエンライク。1989年生まれで、フランシスコ・フォード・コッポラの自伝的映画『テトロ 過去を殺した男』(09)に主演し映画デビュー。『ヘイル、シーザー!』(16)の西部劇スター役も称賛され、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(18)では若き日のハン・ソロを熱演。『オッペンハイマー』(23)にも出演したほか、MCUのドラマシリーズ「アイアンハート」ではヴィランのゼイクを演じている。

■ドラッグ依存症の路上生活者ジェームズ/オースティン・エイブラムス

町外れの森でテント暮らしをしているクスリ漬けのジェームズ。窃盗を繰り返していた彼は、とある家に侵入し、あるものを発見する。警察官ポールとのかけ合いで映画に味わいをもたらすジェームズを演じているのがオースティン・エイブラムス。1996年生まれのエイブラムスは、『L.A.ギャング ストーリー』(13)、『キングス・オブ・サマー』(13)、『47歳 人生のステータス』(17)、『スケアリーストーリーズ 怖い本』(19)、『ウルフズ』(24)など話題作に出演。人気ドラマ「ウォーキング・デッド」での心に闇を抱えるロイ・アンダーソン役で注目を集め、演技派イケメンとして人気を博した。本作に続いてクレッガー監督が手掛ける『バイオハザード』リブート版では主演を務める予定だ。

■ただ一人教室に残った生徒アレックス/ケイリー・クリストファー
ほかの同級生が失踪するなか、ただ一人教室に残された少年アレックス。事件についてはなにも知らないと繰り返す彼は、好奇の目を避けるようにひっそりと暮らしている。大人しく、いじめっ子の標的でもあるアレックス役にはケイリー・クリストファー。3歳の時にデビューし、「フラーハウス」や「アメリカン・ホラー・ストーリー」などドラマのゲスト、『Mank/マンク』(20)を経て、アルフォンソ・キュアロン原案・製作のアニメーション『クリスマスはすぐそこに』(24)では主人公の声を務めている。今後は26年配信予定のニコラス・ケイジ主演のドラマ「スパイダー・ノワール(原題)」にセミレギュラーで出演するとのこと。

■小学校の校長マーカス/ベネディクト・ウォン

生徒が失踪したメイブルック小学校の校長マーカス。優しく面倒見はよいがルールを遵守する性格で、思いがけない形で事件に巻き込まれてしまう。男性パートナーと暮らすマーカスを演じているのがベネディクト・ウォン。1971年イギリス生まれのウォンは『スパイゲーム』(01)を機にハリウッドへ移り、『堕天使のパスポート』(02)で注目を浴びる。その後は『サンシャイン2057』(07)、『オデッセイ』(15)、『ジェミニマン』(19)など大作で活躍。『ドクター・ストレンジ』(16)ではベネディクト・カンバーバッチの相棒的存在を務め、『アベンジャーズ/エンドゲーム』や『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)など多くのMCU作品に出演している。

■強烈キャラの“叔母”グラディス/エイミー・マディガン
アレックスの母方の親類グラディス。病を患いアレックスの家で暮らす個性の強い彼女を演じるのはエイミー・マディガンだ。1950年生まれの彼女はバンド活動を経て俳優になり、『ストリート・オブ・ファイヤー』(84)では流れ者の女兵士を演じて注目を浴びた。その後も賞レースを席巻した『プレイス・イン・ザ・ハート』(84)や『フィールド・オブ・ドリームス』(89)、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(07)など話題作に出演。『燃えてふたたび』(85)ではアカデミー賞助演女優賞にノミネートされている。

以上のキャストの競演も見どころの『WEAPONS/ウェポンズ』。二転三転していくスリリングな展開だけでなく、演技派たちが火花を散らすせめぎ合いもスクリーンで味わってほしい。
文/神武団四郎
