
そこで本稿では、映画批評を集積・集計するサイト「ロッテン・トマト」を参考に、2025年に北米で公開されたホラー映画のなかで批評家の評価が特に高い10作品(※9位が同率で3作品あるため11作品)を一挙に紹介しながら、2025年の北米ホラー映画界を振り返っていきたい。
「ロッテン・トマト」とは、全米をはじめとした批評家のレビューをもとに、映画や海外ドラマ、テレビ番組などの評価を集積したサイト。批評家の作品レビューに込められた賛否を独自の方法で集計し、それを数値化(%)したスコアは、サイト名にもなっている“トマト”で表される。
好意的な批評が多い作品は「フレッシュ(新鮮)」なトマトに、逆に否定的な批評が多い作品は「ロッテン(腐った)」トマトとなり、ひと目で作品の評価を確認することができる。中立的な立場で運営されていることから、一般の映画ファンはもちろん業界関係者からも支持を集めており、近年では日本でも多くの映画宣伝に利用されるように。映画館に掲示されたポスターに堂々と輝くトマトのマークを見たことがある方も多いだろう。

それでは、2025年に北米公開されたホラー映画の“フレッシュ”10傑を挙げていこう。
■97%フレッシュ『罪人たち』
■96%フレッシュ『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』
■93%フレッシュ『コンパニオン』
■93%フレッシュ『WEAPONS/ウェポンズ』
■92%フレッシュ『Strange Harvest』
■92%フレッシュ『ファイナル・デッドブラッド』
■90%フレッシュ『トゥギャザー』
■90%フレッシュ『Good Boy』
■89%フレッシュ『V/H/S HALLOWEEN』
■89%フレッシュ『28年後…』
■89%フレッシュ『Bring Her Back』
■ホラー映画としては異例の高評価で、オスカー戦線に名乗り!?

最も高い評価を獲得したのは、ライアン・クーグラー監督がマイケル・B・ジョーダンとタッグを組んだ『罪人たち』(配信中)の97%フレッシュ。1930年代のアメリカ南部の田舎町を舞台に、一攫千金を夢見る双子の兄弟スモークとスタック(ジョーダンの一人二役)が開いたダンスホールに、“招かれざる者”たちが現れるという物語だ。
4月に公開を迎えるや、過去10年で公開されたオリジナル作品としては最高のオープニング興収を記録。口コミで話題が広がり社会現象級の盛り上がりをみせただけでなく、アカデミー賞の有力候補の一角ともいわれるように。ちなみにこれまでホラージャンルでアカデミー賞の作品賞にノミネートされた作品はわずか数本。その多くがサイコホラー作品であり、本作のような“ヴァンパイアもの”は前例がない。ジャンルの壁を破ることができるのか、年末から本格化する賞レースの動向に注目が集まる。

近年はジェイソン・ブラム率いるブラムハウス・プラダクションズや、インディペンデント系スタジオのA24やNEONがホラージャンルで存在感を発揮してきたのだが、今年はなんといってもワーナー・ブラザースのホラー作品が大旋風。先述の『罪人たち』をはじめ4本がリスト入りを果たし、リスト外でも2010年以降のホラーブームを牽引した「死霊館」シリーズの完結編『死霊館 最後の儀式』もホラー映画歴代3位のオープニング興収を記録している。
93%フレッシュを獲得しているソフィー・サッチャー主演の『コンパニオン』(配信中)は日本では劇場未公開だったが、北米では1月末に公開されスマッシュヒットを記録。春シーズンとサマーシーズンの境目となる5月には、「ファイナル・デスティネーション」シリーズ14年ぶりの新作として公開された『ファイナル・デッドブラッド』(配信中)がシリーズ最大のヒットを記録。92%フレッシュという高評価を獲得したことも相まって、さらなる続編の製作も早々に決定したほど。

そしてサマーシーズンにサプライズヒットを飛ばしたのは、93%フレッシュを獲得しているザック・クレッガー監督の『WEAPONS/ウェポンズ』(日本公開中)だ。ある小さな町で、同じ学校に通う17人の子どもたちが一斉に姿を消す。それを境に町では不可解な事件が多発するという考察系ミステリーで、週末動員ランキングでは3度にわたってNo. 1を獲得。こちらも『罪人たち』と共に賞レースへの参戦が期待されている。
他にも、96%フレッシュという非常に高い評価を得ている『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』(2026年1月16日日本公開)は、ノルウェーで製作されたゴシック系のボディホラーで、“シンデレラmeetsクローネンバーグ”とも称される一本。90%フレッシュを獲得した『トゥギャザー』(2026年2月6日日本公開)は、あるカップルが見舞われる身体の変異現象を描く、こちらもボディホラー。どちらも年明けに日本公開が控えているので注目しておきたい。

全編が犬の視点から描かれるという異色作『Good Boy』や、『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(22)が日本でも好評を博したダニー&マイケル・フィリッポウ兄弟の長編第2作『Bring Her Back』など、まだ日本公開が決まっていない作品の続報からも目が離せない。さまざまなかたちの恐怖で盛り上がりを見せた2025年。2026年にはいったいどんなホラー映画が待っているのか、楽しみが尽きない!
文/久保田 和馬
