日常の中にひそむ、読めそうで読めないあの漢字。
でも、読み方や意味を知ると、ぐっとその言葉が好きになる。
今回は野外で暖を取るための携帯用具です。
この漢字、あなたは読めますか?
さて、正解は…
【難読漢字よもやま話】アーカイブ
【漢字の由来と語源】
「懐炉(かいろ)」という言葉は、その名の通り「懐(ふところ)に入れる炉(ろ)」という意味から来ています。
昔の懐炉は、火鉢や七輪を小さくしたようなもので、陶器や金属製の容器に木炭や灰、または熱した石などを入れて、それを布で包んで懐に入れて体を温めていました。
現代の使い捨てカイロのように化学反応で熱を出すものではなく、文字通り「火を燃やす、あるいは熱源を入れる小さな炉」を懐に入れていたため、この名前が付けられました。
漢字の由来は中国古代にさかのぼります。もともと「懐(かい)」は「ふところ」や「胸の中」を意味する字で、心の中や懐中(ポケット)を表します。
また、「炉(ろ)」はこれも中国由来の漢字で、「ろ」や「いろり」のように「炉(火を入れる器具)」を意味します。古代中国では、暖房や調理のための炉を指していました。この漢字の組み合わせが江戸時代に定着したと考えられます。
【興味深い懐炉のトリビア】
●懐炉のルーツは平安時代?
現代の使い捨てカイロとは異なりますが、日本には平安時代にはすでに「温石(おんじゃく)」と呼ばれる、温めた石を布で包んで懐に入れる習慣がありました。これが懐炉の原型とも言われています。
●使い捨ては日本生まれ!
現在世界中で広く使われている「使い捨てカイロ」は、実は日本で発明・開発されました。1970年代に大手化学メーカーが世界で初めて実用化し、その利便性から世界中に普及しました。
●発熱の仕組みは「錆びる」こと
使い捨てカイロが温かくなるのは、内部の鉄粉が空気中の酸素と結合して錆びる(酸化する)際の化学反応熱を利用しているからです。この反応を促進するために、活性炭や塩分などが配合されています。
●「貼るカイロ」も日本発祥
通常のカイロを衣類に直接貼れるようにした「貼るカイロ」も、日本で開発されました。これにより、カイロがずれる心配がなくなり、特定の部位を効率的に温められるようになり、利便性が飛躍的に向上しました。
●低温やけどに要注意!
懐炉は、体温より少し高い程度の温度でも、長時間同じ場所に当て続けると「低温やけど」を引き起こす可能性があります。特に就寝時や飲酒時は感覚が鈍りやすいため、使用は避けましょう。
●海外では別の呼び名も
日本ほど懐炉が一般的でない国も多く、英語圏では「hand warmer(ハンドウォーマー)」や「pocket warmer(ポケットウォーマー)」などと呼ばれています。日本の「KAIRO」がそのまま通じることもあります。
