取引先と関係を深めたい、商談をうまく進めたい…そんなときにしばしば行われるのが「会食」。食事をしながらビジネス談義をするメリットに、実は医学的根拠があることをご存知だろうか?
医師である小池雅美氏の初の書籍『気分の9割は血糖値』より一部を抜粋・再構成し、血糖値が仕事に与える影響を考える。
血糖を制する者は、仕事を制す
ビジネスの現場では、血糖コントロールは驚くほど強力な武器になります。
自分自身の血糖値を安定させるのは当然として、チームや取引相手の血糖状態、それにともなう自律神経の動きまで意識しておくと、場の空気や流れが大きく変わります。
信頼関係を築きたいなら、まずは「食事をともにすること」から始めましょう。できれば、ゆっくり時間をかけて話ができるようなスタイルが理想です。
コンビニのおにぎりを片手に済ませるような食事ではなく、コース料理や会席料理のように2~3時間かけてゆっくり食べられる場がベストです。政治家が料亭で密談をするのも、じつは信頼関係を築く上で理にかなっています。贅沢というよりも、時間と血糖値の使い方の問題です。
一緒に食事をして、ゆっくりと血糖値を安定させながら会話を重ねる。それによって、相手との心理的な結びつきが深まるのです。自律神経を整えることで「おたがいは味方である」と体に理解させる工程が食事会ともいえるでしょう。
チームでプロジェクトを進めるときにも、血糖コントロールは欠かせないマネジメント要素になります。最も避けたいのは「空腹+コーヒー」での会議です。空腹時のカフェイン摂取はアドレナリンの急上昇を引き起こし、交感神経が過剰に刺激されることで、イライラや攻撃性が高まりやすくなります。全員が戦闘モードに入り、まとまるはずの話がこじれてしまいます。これが夕食前であればさらに目も当てられないでしょう。
コーヒーブレイクのつもりが、イライラ促進タイムにならないように、できればカフェインフリーの飲み物と軽食などを用意して、場を落ち着かせる工夫をしましょう。
重要な交渉事は空腹状態で行わない
他社との重要な交渉事でも、血糖コントロールの考え方は同じです。
「この案件、通してもらえるか微妙だな」
「少しでも有利な条件で契約をまとめたい」
そんなときこそ、自分も相手も、空腹状態で交渉に臨むのは避けるべきです。
特に、午後4時は要注意です。まさに「魔の時間帯」。
昼食からは時間が経ち、血糖を維持するコルチゾールの分泌が減ってくるタイミングです。血糖値を維持するために交感神経が働き出し、誰しもイライラしやすくなります。自分も相手も無意識にイライラしてしまい、冷静な話し合いができなくなります。
そんなときは、サンドイッチや焼きおにぎりなど、軽い食事を一緒にとりながら打ち合わせをすると、場がぐっと和らぎます。打ち合わせ場所をカフェにして、飲み物と軽食を楽しみながら進めるのも効果的です。可能であればできるだけカフェインは避けたいところですが、空腹のままよりはマシと考えてください。
やむをえず、午後4時ごろに得意先を訪問しなければならない場合は、手土産を持参して相手に振る舞うのも1つの方法です。手土産が難しい状況なら、少なくとも自分の血糖値だけは安定させてから臨みましょう。血糖値が安定していれば、無駄なトラブルはまず起きません。そもそも、重要な商談を「お腹が空きやすい時間帯」に設定しないのが、もっとも簡単で確実な対策です。
低血糖にならないように体が準備し始めるころは、アドレナリンによる漠然とした不安や焦燥感で疑心暗鬼になりやすいタイミングなのです。

