
俳優の岸井ゆきのが11月29日、都内で行われた映画「佐藤さんと佐藤さん」公開記念舞台あいさつに、宮沢氷魚、藤原さくら、三浦りょう太、中島歩、天野千尋監督と共に登壇。観客の反応を受けて、すぐさま意見を変える場面があった。
■誰かと生きることに真っすぐに向き合ったマリッジストーリー
同作は、笑い合った日、ぶつかった日、沈黙の夜、“夫婦”というかたちが揺れ動く日々を見つめ、出会ってから別れるまでの15年間を描き出した、誰かと生きることに真っすぐに向き合ったマリッジストーリー。
活発な佐藤サチ(岸井)は、大学で真面目な佐藤タモツ(宮沢)と出会う。正反対な性格の二人はなぜか気が合い、同居を始める。5年後、弁護士を目指しているタモツは司法試験に失敗。サチは独学を続けるタモツに寄り添い応援するため、自身も勉強をして司法試験に挑むことに。そして、見事に合格したのはサチだった。弁護士になったサチと、子育てと家事をしながら勉強し続けるタモツ。あの時の二人は変わっていないはずなのに、なぜか段々と変わっていってしまう。
■人と人が一緒に暮らす大変さを学んだ作品
登壇した岸井は、初めて脚本を読んだ感想について「私は夫婦生活とか、誰かと一緒に住むということを経験したことがなかったので、最初は『こんな些細なことで、こんな噴火的なけんかをしてしまうんだ』と割とドラマチックだなと思ったんです」と振り返る。
「でも、人に話を聞くと『いや、こんなもんだよ』って言われて…。映画が完成して他の方の感想を聞いても『これはうちの家の話だ』と言ってくださることが多くて、自分にとって“人と人が一緒に生きるっていうことが、どれほど大変なのか”ということを思い知らされる映画になりました」と述懐。
さらに、「私は結構タモツ派なので、思ったことを思った時に言えないんですよ。言葉になるのが遅いので。そういう部分はタモツに共感しましたし、ちょっと思いやりを欠いてしまった瞬間のパワーワードみたいなのは出しちゃう時があるなと」と明かした。
また、完成した作品を見た感想について「『どうすれば良かったんだろう』というのと、私はやっぱりサチの気持ちでずっと演じていたので、『ごめんね』という気持ちが大きかったですね。ただ、サチはサチでその時の最善を尽くしているので、客観的に見て『ごめんね』って思うこともあったけど、それが正義じゃないっていうか、二人はこれでいいとは思っています」と語った。
■今年中に夜の海に行っておきたい
ほか、子供との共演については「めちゃめちゃかわいかったです。泣いちゃうこととかもたくさんあったんですけど、それすらもいい時間でした」としみじみ。
そんな中、司会者から「今年中にやっておきたいこと」を聞かれると、「夏からずっと夜の海に行きたかったんですけど行っていないので、今年中に夜の海に行っておきたいなって」と返答。すると、司会者から「なんでですか? 怖いじゃないですか」と言われ、中島からも「夜の海は危ないよ」と忠告されてしまう。
その反応が想定外だった岸井は「え!? だから、そんな『シーン…』って感じだったんですね」と客席の薄い反応に納得しつつ、「夜の海に行って波音を聴くんです。え…、そんないいものじゃないってことですか? なんだかいいものな気がしてたんですけど、そっかぁ~。じゃあ、楽しくないならやらない!」と急ハンドルを切って、会場を沸かせた。
◆取材・文=原田健

※三浦りょう太の「りょう」の正式表記はけものへんに寮

