ランキングには入らなかったものの、近頃東京でも食べられるようになった、ご当地おでんの存在が気にかかる。
真っ黒なスープが目を引く「静岡おでん」。お膝元の地で毎年開かれる「静岡おでん祭り」には、今年なんと3日間で20万人もの熱狂的なファンが県の内外から殺到。こうしたおでんイベントが全国各地で行われる昨今。ご当地おでんも群雄割拠の時代に突入しているのだ。
濃厚な味噌の味わいが特徴の「名古屋おでん」、カニ面から加賀野菜まで地元の食材が堪能できる「金沢おでん」。さらには、生姜醬油でさっぱりと食べる「姫路おでん」、テビチや島豆腐の厚揚げなど沖縄の食文化が詰まった「沖縄おでん」‥‥。
こうしたご当地おでん界に新風を巻き起こすニューウェイブおでん、次はどこから誕生するのか。
その答えを意外にも現在放送中の朝ドラに発見! 髙石あかりがヒロインを務める「ばけばけ」(NHK)の舞台となる島根県には「松江おでん」があった。放送作家で映像プロデューサーの島右近氏がトレンドを先読みする。
「『ばけばけ』は、明治時代の松江を舞台に怪奇文学作品集『怪談』で知られる小泉八雲の妻をモデルとしたトキを髙石が熱演。明治時代を生き抜いた夫婦の泣き笑い人生を描き、大きな反響となっています。ドラマの舞台となった松江の大橋川に架かる松江大橋界隈には、『松江おでん』の名店が点在しています。この冬から春にかけて“聖地巡礼”に訪れる朝ドラファンの口コミで『松江おでん』が人気を呼ぶのは間違いないでしょう」
「松江おでん」は、松江藩七代目藩主・松平治郷が当時、京都で人気の豆腐の醬油煮込みを持ち帰り、庶民の間で広まったと伝えられる。鶏ガラや昆布とカツオ、島根特産のトビウオなどを使う味わい深い出汁、ひとつひとつの具も大きく、地元の食材である黒田セリや春菊といった葉物野菜をシャキシャキとした食感で楽しむことができるという。
しかも、松江は人口に比しておでん店の数が全国トップクラスだけに、夜の街をそぞろ歩きしてみれば、「おでん」の提灯がともり、朝ドラファンならずとも、この風情は訪れる者の心と胃袋をくすぐるに違いない。
次世代のおでん界のニュースターに思いを馳せながら一献。それもまた一興ではあるまいか。

