『週刊実話 ザ・タブー』で連載中の藤木TDC氏による「漢(オヤジ)の旅」は、全国の公営ギャンブルをめぐるディープツアーガイド。金はないけど飲む・打つ・買う。今回は、香川県丸亀競艇体験記をお届けする。
【漢(オヤジ)の旅 香川県丸亀市編(1)】を読む
丸亀城と電車で景気付け!
スタミナがついたところで、明日儲かった場合の準備(?)で、大通りの向こうの大手町スナック街を徘徊。港町だけあり、店は多いがこちらも暗い。その薄暗い路地からヌーと女性が現れ、「マッサージ、イカガデスカー」。懐かしや、東京では見かけなくなった辻立ち中国人マッサージ嬢が香川じゃ現役とは。嬢は何カ所かにいて、ウンコ座りしたまま声かけしたりも。
酔いの勢いで入ってみたいが、自分は過去に痛い経験もしているので、コワイデスネ~と敬遠。今夜はおとなしく宿に帰ろう。
宿泊したホテルは丸亀の隣の宇多津駅前にあり、一駅離れただけで激安の2泊9487円。結婚式場もある立派なホテルなのに、朝食バイキング付き。これはお値打ち。朝食をガッツリ食えば昼飯を抜けると、ドケチ根性発揮。そして昼前に丸亀に電車で向かうと、JR四国名物・アンパンマン電車に遭遇。縁起ものに出会った気分だ。
丸亀に着き、まず向かった先は石垣の名城、丸亀城である。競艇場からもライトアップした姿が見える丸亀城は、江戸時代築の天守が現存。腰高な二層の石垣が美しく荘厳だが、天守閣まで登るとなると坂がきつく、猛烈にしんどい。二日酔い、そして季節外れの猛暑で40度以上ある急坂は無理だった…。
暑くて路上にいられないので、第1Rにはまだ1時間あるものの無料バスに乗り込んでエアコンの効いた競艇場内へ避難。舟券を1Rから買うってことは、恐怖の負け戦が8つもあるということだ。
【漢(オヤジ)の旅】アーカイブ
旅の終わりはうどんがビールで祝杯
難解度が増してきた一般戦最終8R、難しいので見にするかと思ったが、一走めの1R、3枠で着外の無印⑤が匂う。ゆるく3連複で買ったら1Rのスットボケはどこへやら、ダッシュを決め鋭く差した⑤は3着に残り①④⑤で的中。3連複なので970円だったが、自分にすれば無印選手の一発狙いを読み切った会心の舟券だった。
とはいえ、そのツキが次のレースに持ち越されるわけでもなく、準優戦の10レースをハズしたところで勝負を降り、丸亀駅行きの無料バスに乗った。
時刻は20時を過ぎた頃。今日も真っ暗なアーケード商店街をトボトボ歩く。が、見ると闇の中にかすかな灯が。近寄るとそれは立ち飲み屋の灯りだった。
ガラス張りの店舗、ボトルや調味料を置かない麺打ち台のようなフラットなカウンターと超個性的な立ち飲み屋。これぞ、探していたインディーズ系立ち飲み屋。店名は『チャコリスタンド』。曜日限定の立ち飲み営業で、昼は地域産品の丸亀うちわなどを売っている。
シャッター街となった商店街で復興の芽吹きをもたらす志高き店だ。店名の『チャコリ』はスペイン・バスク地方の微発泡ワイン、それを供するスペインバル風だが、オッサンが好むビールや焼酎も置いている。
まずはビール、そしてサバのトマト煮缶詰(賞味期日迫り半額品)をフォークでつつき、地元の話をいろいろ聞く。問題のチャコリワインは微発泡だがクセはなく、純米酒のようにグビグビいける。ほかに美味かったのは、地元醸造所ミロクビールの「UDON IPA 旋風」。なんと、うどんを原料にしたクラフトビールという。さすが丸亀、今、うどんは立ち飲み屋で飲むスタイルになった。
IPAだからホップ味が強いが、その中にかすかに讃岐うどんが香る。丸亀ならでは、一期一会の酔い口だ。
店主の話によれば、ほかにも一軒、近くに立ち飲み屋がオープンしたと。立ち飲みから蘇るシャッター商店街。いつかこの通りに個性的セルフうどん店ができるといいなと願いつつ、立ち飲みで満足した丸亀の夜。良い旅打ちだったな、とひとりごちた。
「週刊実話タブー」12月5日号より
