【漢(オヤジ)の旅 香川県丸亀市編(1)】
『週刊実話 ザ・タブー』で連載中の藤木TDC氏による「漢(オヤジ)の旅」は、全国の公営ギャンブルをめぐるディープツアーガイド。金はないけど飲む・打つ・買う。今回は、香川県丸亀競艇体験記をお届けする。
屈指の難水面でナイターは荒れ模様
ギャンブルと酒のドケチ旅、今回は香川県丸亀市へ競艇の旅だ。瀬戸内海の海水を使ったコースは風の影響が大きく、かつ潮の満ち干きの影響も受ける全国屈指の難水面。はるかに名城・丸亀城を望む美しき競艇場で勝利の美酒に酔えるのか、高級スナックに行けるのか。男涙のギャンブル四国巡礼に、イザ!!
瀬戸わんや、毛抜けて、夕ハゲ小ハゲ~、と小学生の頃に流行った替え歌が口をつく。ここは香川県の丸亀駅。JR予讃線ホームのチャイムは小柳ルミ子の『瀬戸の花嫁』なのだ。
はるばる来たぜ丸亀競艇、なんと東京を出発して8時間もかかった。家を出たのが11時、成田空港到着12時半、飛行機離陸14時、高松空港到着15時半、バスで高松駅着16時半、丸亀着が17時で、競艇場に着いたら18時近くになっていた。
しかし、丸亀競艇はナイターレースで、番組の半分が終わったばかり。到着直後に発走した7Rはもちろん見だが、結果は⑥①③と荒れている。⑥が1着で3000円台、マンシュウじゃないのは6番挺に乗る優勝候補の格上選手が大外から華麗なマクリを決めたから。そしてうわー、マクリが効くコースなのか、難しそうと頭を抱える。
ただし、7Rは謎多き一般戦で、舟券を買い始める8R以降は真剣勝負の準優進出戦だから、そんなに荒れないだろうと踏んだら、本当に8R①②④、9R①②③とほぼ本命で決まった。配当も720円、460円。
これだから真剣勝負ってヤツは…(当然穴を狙ってハズしたのだ)とショゲてたら10Rは①⑥②、11R①⑥④とアウトが突っ込んで6680円、7970円の大荒れ。ここまで荒れては取れる舟券も取れない。もう少し分かりやすい穴にならんものか。
そんなこんなで、この日は1レースも当たらず。今夜はここまで、すごすごと引き上げ明日に賭けた。
【漢(オヤジ)の旅】アーカイブ
夜の街では名物に舌鼓
丸亀競艇場は、約10年ぶり2度目の訪問。2012年に改修されたスタンドは2階の無料席が全席テーブル付きという豪華さ。さらに今回初めて見たのだが、1マークの眼の前にアクアキャビンとアクアデッキなる無料観戦スペースが作られ、激しいターンの攻防を眼の前で見られる。
無料席が充実した丸亀競艇場は観客に優しい施設という面で日本一かも。1マーク付近を高い有料指定席に限定してる競艇場は、丸亀の爪のアカ、コースの塩水でも飲んで見習ってほしいものである。
勝負の途中、場内食堂では香川名物のうどんを賞味。地元バイパス沿いで営業する自家製麺セルフうどんとはさすがに別物だが、香川ではうどんを食うことに意義がある(と自分を納得させる)。
そして無料バスで駅まで戻り、夜の街へ。が、そこにあったのは10年前よりはるかにさびれ、駅前の店舗の3分の1がシャッター化した、暗く人けのない繁華街だった。
しかし、ぽつりぽつりと見える赤提灯。その多くに「骨付鳥」と書いてある。今や香川県全域のソウルフードとなった「骨付鳥」は丸亀発祥で、駅前の「一鶴」という店が元祖だ。駅前の暗い一角でぽつんと営業していたが、なんと店舗が赤坂の高級焼肉屋ふうに改装され、しかも長蛇の行列。有名になりすぎて連日の行列なのだそうだ。
人気店は早々に諦め、夜8時台というのに暗黒のトンネルと化している豪華アーケードの通町商店街を抜けると、ようやく別の居酒屋が営業。『りぶや』という店に飛び込み腰を落ち着け、まずはハイボール、そして「骨付鳥」を注文だ。
「骨付鳥」は日本中でクリスマスに出回る骨付き鶏モモ肉や鶏リブ(肋骨)の揚げ焼きだが、もともと卵を産んだ後の親メス鶏すなわち廃はい鶏けいの肉を食用にすべく考案されたリユース料理。
香川県ではメジャー化したため肉の柔らかい若鶏使用もあり、前者を「オヤ」、後者を「ワカ」「ヒナ」と分ける。
当然、通は「オヤ」一択だが、本来スープのダシにする肉は固く、中高年は噛み切るのも大変だ。添えられた料理バサミで遠慮なく肉をジョギジョギ切断して弱った奥歯でガシガシ噛みしめると、やがて舌の上にジュワーッと熟女鶏の肉汁が広がる。この味が丸亀の味なのだ。
【漢(オヤジ)の旅 香川県丸亀市編(2)】へ続く
「週刊実話タブー」12月5日号より
