上部団体である六代目山口組の外交戦略を占う意味でも注目されるのが、元最高幹部の小澤組・小澤達夫組長の存在だろう。小澤組長は19年10月の髙山相談役の出所直後、弘道会幹部から若頭補佐に抜擢されていたが、今年10月1日に田岡一雄三代目時代からの山口組の親戚団体である東声会・早野泰会長と兄弟分の盃を交わし、東声会舎弟に直ったことで業界の耳目を集めた。
「六代目山口組直参から跡目養子として移籍し、八代目会津小鉃の当代となった髙山誠賢会長の前例もあり、一部では今後、東声会の継承問題にも大きな影響を与える、という声も聞こえてきます」(ジャーナリスト)
分裂抗争下で、小澤組長は関東に地盤を持つ絆會や宅見組系組織などの切り崩しに手腕を発揮してきた経緯があり、弘道会としては戦力的に痛手ではある。しかしこれは自組織だけでなく、業界全体を考えた広い視座に立った措置とも言えるだろう。
ただし最高幹部が組織を辞しただけでなく、現在も弘道会内部では組織の活性化が進んでいる。10月7日には、野内会長の弘道会四代目就任に伴い、二代目野内組で代替わりの盃直しが挙行された。野内会長の側近中の側近として知られる北村和博若頭が跡目を継承したのだ。
野内組は先述したように、野内会長時代には切り崩した敵方の組織の受け皿にもなっていた。抗争中に戦力を増強し、弘道会内でも有数の実力派組織となった野内組を、北村組長がどう導くのか、業界の注目を集めている。
10年続いた分裂抗争では、特に武力面で六代目山口組を大きく牽引してきた弘道会。今となっては敵方との武力衝突は過去の話だが、日本最大のヤクザ組織の中核団体として、これからも不断の役割が求められるだろう。
竹内総裁が若頭として六代目山口組全体の進路を決定する役目を背負う中、新布陣を船出させた四代目弘道会が、六代目山口組の中軸として内外に多大な影響力を発揮していくことは間違いない。

