『時をかける少女』(06)、『サマーウォーズ』(09)、『おおかみこどもの雨と雪』(12)、『バケモノの子』(15)、『未来のミライ』(18)、そして『竜とそばかすの姫』(21)。これまでに国内外の数々の賞に輝き、日本のみならず世界中の観客を魅了し続けているアニメーション映画監督・細田守さん。そんな細田監督の最新作となる『果てしなきスカーレット』が2025年11月21日(金)に公開されました。
今作のテーマは、“生きる” 。主人公の王女・スカーレットが父の復讐に失敗するも、≪死者の国≫で再び、宿敵に復讐を果たそうとする今までの細田作品と一線を画す物語。これまでのイメージを覆す衝撃の最新作に込めた想いを、細田監督にインタビューしてきました。
( Index )
- 世界の現状を考えると、“復讐劇”は今日的なテーマ
- 魅力的なキャラクターになったのは2人のおかげ
- ≪死者の国≫はここ数年の日本の状況に影響を受けた
- 芦田さんの内面にある大人の女性観がスカーレットそのもの
世界の現状を考えると、“復讐劇”は今日的なテーマ
細田監督の作品では、いつも“家族”や“つながり”が軸に描かれています。今作『果てしなきスカーレット』では“生と死”という重厚なテーマが置かれていますが、どんな思いから生まれたのでしょうか?
「生と死」というとても大きなテーマですが、自分が映画を作っていてこのようなテーマにたどり着くとは思いませんでした。コロナ禍が終わったと思ったら戦争が始まり、いまだに続いています。世界中に不穏な空気が漂い、「この先どうなるんだろう」と皆が思っているはずです。そういった中で、報復の連鎖が止まらない中で、この“復讐劇”というのは今日的なテーマだなと感じたことが企画のスタートです。そこでモチーフの1つとして浮かんだのが復讐劇の元祖である『ハムレット』でした。『ハムレット』と言えば「生きるべきか死ぬべきか」という、人生にとっての永遠の問いのセリフがあり、本作のテーマである「生と死」と繋がっていったわけです。
復讐劇を作ろうという切り口で、映画制作がスタートしたわけではなかったのですね。
そうですね。世界の状況を踏まえて考えた結果、復讐劇が現在の世の中 を表しているのではないかという気がしたんですよね。悪人を倒してスカッとするというのは昔からありますが、今はそうじゃない。つまり、悪人を倒したらもう一方でまた復讐が始まる、それに復讐したらまた復讐が始まる。延々繰り返しになってしまいます。要はどちらにも正義があるのか?、単純な善悪じゃないという中で、「復讐劇」というジャンルはどのようになっていくんだろう? 僕らの生きている世界はどうなってくんだろう?」というようなことを考えました。

