
小泉八雲が執筆した『怪談』のエピソードだけでなく、八雲自身もマンガで描かれていた。画像は「別冊太陽 小泉八雲: 日本の霊性を求めて」(平凡社)
【画像】「えっ、美人じゃないか」これがホラー漫画家・日野日出志が描いた雪女です (5枚)
漫画家たちを触発した小泉八雲とセツ夫妻
日本での国際結婚の先駆けとなった小泉八雲と妻セツをモデルにした、NHK連続テレビ小説『ばけばけ』が好評放送中です。言葉がなかなか通じないヘブン先生(演:トミー・バストウ)とトキ(演:高石あかり)ですが、日々の生活のなかで少しずつ打ち解けていく様子に、多くの視聴者が心をくすぐられているようです。
小泉八雲はセツが語る怖い話をもとに、『怪談』を書き記しました。1904年(明治37年)に出版された『怪談』は、日本の知られざる文化を世界に伝えただけでなく、その後の日本のカルチャーシーンにも多大な影響を与えることになります。
文明開化が進む明治時代の日本から消えゆくものを愛した小泉八雲と彼の作品は、人気漫画家たちも触発し、さまざまな形でマンガ化されています。小泉八雲に関連したマンガを紹介します。

谷口ジロー氏の作品集『いざなうもの』(小学館)に、小泉八雲を描いたエピソードが収録されている
明治時代の東京を八雲がぶら散歩する『何処にか』
松重豊さん主演ドラマとして大人気の『孤独のグルメ』(テレビ東京系)ですが、原作マンガの作画を担当したのが谷口ジロー氏です。フランスをはじめとする海外でも人気の高い谷口氏は、2017年2月に69歳で亡くなっています。その遺作となったのが、2017年12月に出版された『いざなうもの』(小学館)でした。
緻密なペンタッチと抒情性豊かな作風で知られる谷口氏にとって最後の単行本となった短編集『いざなうもの』には、小泉八雲を主人公にした『何処にか』その壱「茶碗の中」、その弍「水飴を買う女」が収録されています。1897年(明治30年)、まだ江戸の名残りを感じさせる東京を、八雲がぶらぶら散歩するというシンプルなエピソードです。
八雲は16歳のときに左眼をけがで失明していました。その分、普通の人以上に繊細な感性を持ち、視力を失った左眼は「見えないもの」を感じることができたようです。八雲は街を歩きながら、『怪談』に収録される「茶碗の中」の逸話が頭のなかに浮かび、闇の世界に引き込まれそうになります。セツが一緒にいなければ、危ういところだったかもしれません。
その弍では、八雲が「水飴を買う女」の伝承に興味を持っていたことが描かれます。「水飴を買う女」は、幽霊の女性が自分が亡くなった直後に生まれた赤ちゃんのために、水飴を買い求めに現れたというものです。『ゲゲゲの鬼太郎』の鬼太郎誕生の元ネタになった言い伝えです。
幼少期に両親が離婚し、肉親の愛情を知らずに育った八雲には、亡くなってからも我が子を思い続けた幽霊の女性が愛おしく感じられていたのではないでしょうか。
谷口氏は、関川夏央氏との共著『「坊ちゃん」の時代』(双葉社)にも八雲を登場させています。『「坊ちゃん」の時代』を読むと、東京帝国大学で英語を教えていた八雲は、ロンドン帰りの夏目漱石に職を奪われますが、学生たちからは慕われていたことが分かります。

「宗像教授」シリーズのなかで描かれた小泉八雲のエピソードを収録した『宗像教授セレクション 小泉八雲と出雲』(小学館)。2025年11月28日発売予定
