地方に移り住むことと、人生のパートナーを見つけること。この二つを同時に支える取り組みとして、「移住婚」という言葉を耳にする機会が増えてきました。結婚相手の紹介だけではなく、新しい土地での生活環境や仕事、子育てといった日常の基盤まで含めてサポートする仕組みです。地方創生や人口減少といった社会課題が注目される中で、移住と結婚支援を一体的に行うこのモデルは、都市部でも関心を集めています。
最近では、千葉県大多喜町と長野県宮田村で応募者が100名を超えるなど、実際に参加を希望する人が着実に増えていることが分かります。どちらの地域も自然の豊かさと生活のしやすさが特徴で、結婚をきっかけに新しい暮らしに踏み出したいという人に選ばれているようです。担当者のメッセージからも、地域と移住希望者とを丁寧につなごうとする姿勢が感じられました。
移住という大きな決断には不安がつきものですが、自治体と専門団体が協力して伴走してくれることで、安心して検討できる環境が整いつつあります。今回は、千葉県大多喜町と長野県宮田村の取り組みを例に、「移住婚」という新しい選択肢がどのように広がっているのか、その背景を追いました。
移住と結婚をつなぐ新しい支援モデル「移住婚」

都市部での暮らし方が多様化する中で、「結婚をきっかけに、より自分らしい生活環境を選びたい」と考える人が増えています。そんな背景の中で生まれたのが、自治体と一般社団法人日本婚活支援協会が連携して行う「移住婚」という取り組みです。結婚相手を探す活動と、移住先での新しい生活づくりを合わせてサポートする、これまでにあまり例のなかった支援モデルとなっています。
移住婚は、結婚を望む独身者を対象に、自然豊かで暮らしやすい地域を紹介しながら、移住後も安心して生活がスタートできるようサポートする仕組みです。費用はかからず、希望者は気軽に申し込みができるため、結婚相談所の利用や移住支援制度とは違ったアプローチで、将来のライフプランを考えるきっかけになります。
地方での暮らし方は、大きな自然や落ち着いた環境など魅力にあふれていますが、移住を一歩踏み出すには不安を抱える人も少なくありません。そこで、結婚と移住の両面から伴走するこの仕組みが、都市部在住の若い世代を中心に注目を集めています。自治体側も地域の未来につながる取り組みとして積極的に協力しており、「人と地域が無理なくつながる形」として、自然に選ばれ始めている印象です。
応募者100名超えが示す、“地域と人がつながり始めたサイン”
移住婚の取り組みは、千葉県大多喜町と長野県宮田村という、まったくタイプの異なる2つの地域で応募者100名を超える結果につながっています。どちらも安定して参加者を集めており、都市部からの関心が確かな形として現れ始めています。
大多喜町は「東京圏から近い、ほどよい田舎」としての魅力が光り、宮田村は「自然の豊かさと暮らしやすさのバランス」が評価される地域です。距離も環境も違う2つの町が、同じように応募者を増やしていることから、移住婚そのものが一つの新しい選択肢として、多くの独身者に受け入れられ始めていることが分かります。
応募が増えている背景には、移住後の暮らし方を具体的にイメージできる仕組みが整えられている点があります。各自治体では、住宅、仕事、子育てといった日常の基盤となる環境まで細やかにフォローしており、移住に伴う不安をできるだけ小さくする工夫が続けられています。
「結婚したあと、どんな土地でどんな生活を送るのか」という視点は、これまで婚活の中で触れられる機会が少なかったテーマです。そこに自治体と団体が一緒に向き合い、一歩ずつ整理していく“安心感”が、参加者の増加につながっているように感じます。
100名という数字は大きな節目ですが、それ以上に「地方での新しい暮らしを前向きに捉える人が増えている」という動きが見えてくる点が、この取り組みの興味深い部分です。
