
森保一監督も賛辞「力があることを示している」。途中就任で長崎はV字回復。高木琢也監督はいかにして自身3度目のJ1昇格を果たしたのか
2025年のJ2では、水戸ホーリーホックとV・ファーレン長崎がワンツーフィニッシュし、J1自動昇格を勝ち取った。「J2の門番」と言われた水戸のクラブ史上初のJ2優勝&J1昇格は大いに称賛されるべきだが、2017年以来2度目のJ1昇格を果たした長崎の後半の強さも特筆に値する。
「今年に関しては、最初からチームを見ているわけではなくて、6月からの就任だったと思いますが、そこから1敗しかしない状況でJ1昇格に導くというのは、監督の高木(琢也)さんの力があることを示している結果。同郷の大先輩ですし、一緒にプレーもしていたので、本当におめでとうございます」と、かつて日本代表とサンフレッチェ広島で共闘した“ドーハ組”の日本代表・森保一監督も最大級の賛辞を送っていた。
高木監督の半年間の道のりは、決して容易ではなかった。6月16日の監督交代時点では、首位を走っていたジェフユナイテッド千葉と勝点10差の8位だったのだから、困難に直面していたのは事実だろう。
そこからチームは19試合を戦い、12勝6分け1敗という快進撃を見せ、2位に滑り込んだのは、高木監督のマネジメント力の賜物だと言っていいだろう。
「高木さんになってから、やることがハッキリしたのが大きい」とキャプテンの山口蛍が言えば、最終ラインの一角を占める照山颯人も「ハイプレスに行く時に自分が前に出ても、他の人が絶対についてきてくれるという信頼感がありましたし、得意な空中戦も負けてはいけないと思えるようになった。本当にタスクが明確になった」と強調。守備リーダーの新井一耀も「あまりリスクを負わなくなった。『人に強く』ってところも言われていたので、その意識は高まったし、誰かが行った後のカバーリングもできるようになった」と守備組織の向上に自信をのぞかせた。
高木監督は2006年に横浜FCを率いた時に「ハマナチオ」と呼ばれる堅守を武器に、自身最初のJ1昇格を達成している。そのベースを維持しつつ、2017年の長崎ではフアンマ・デルガド、中村慶太といった得点源をうまく活かしながら2度目の昇格を経験。今回も守備面をまずテコ入れし、失点数を減らしたうえで、チームとして一体感を持って戦える集団に仕向けたのが奏功したようだ。
「僕は今年の前半、外からチームを見ていましたけど、ちょっと苦しくなった時にグループとして、チームとしての弱さがあるんじゃないかと感じていた。でも中に入ってからは、自分をしっかり持っている選手が多くて、お互い助け合いながらプレーできる集団だと感じた。そこには自信を持てたし、大人のチームなんだなと思いましたね」と、指揮官は神妙な面持ちで言う。
高木監督は最低限の修正を図った後は「選手たちを信じて任せればいい」と考えたのかもしれない。選手を自立させ、自ら考えられるように導くことこそ、成功への最大の近道だと悟ったのだろう。
「以前の高木さんは選手と最低限しか話さない感じでしたけど、今は気さくに話しかけてくれる。選手とよく喋るようになったのかなと。そこは変わったんじゃないかなと思います」と長崎、大宮アルディージャでも共闘している翁長聖は変化を口にする。
そうやって選手との意思疎通を密にして、彼らの考えを理解しつつ、最適解を見出していったのではないか。
「チームはみんなで作っていくもの」という原理原則があるが、長く現場に立ち続けていると、それを忘れがちになることもある。高木監督は2022年12月に長崎に戻った後、現場から離れたところで仕事をしてきたが、その経験もプラスに働いたはずだ。
「監督になる前は、事業部でまたちょっと違う角度からサッカーを見るという貴重な経験をさせていただきました。そのなかで視野を広げることができた。いろんなプロジェクトやイベントをやる際、いろんな背景があることが見えてきましたし、良い学びになったと思います。そのうえで監督になり、何とかチームを盛り上げていこうと思っていました」とも発言。「オール長崎」を貫いて、自身3度目のJ1昇格を果たしたのである。
こうして一応の成果を残した高木監督だが、本当の戦いはここから。横浜FC時代は昇格翌年の2007年にシーズン途中で解任の憂き目に遭い、長崎を昇格させた翌18年も1年でJ2に戻る羽目になっている。
今回はJ1定着を確実に果たさなければいけない。山口やディエゴ・ピトゥカのようなJ1トップ経験者もいる今は、それが可能なはず。2026年以降のチーム作り、マネジメントを興味深く注視していきたいものである。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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