
【北中米W杯出場国紹介|第6回:サウジアラビア】賛否両論の4次予選を勝ち抜いて本大会行き。エースと主将のホットラインが生命線に
サウジアラビアの7度目となるW杯出場の物語は、ギリギリの綱渡りを乗り越えた粘り強さに満ちている。
アジア最終予選では日本の独走を許し、ライバルのオーストラリアにも競り負けて3位でフィニッシュ。健闘が目立ったインドネシアとともに、4次予選に回ることになった。
6チームが2つのグループに分かれて、それぞれセントラル開催で行なわれた4次予選の会場が、サウジアラビアとカタールに決定した時は当然、世間で賛否両論が起きた。
ただし、現場のチームは雑音を振り払い、ホームアドバンテージを味方にして、サウジは初戦でインドネシアに3-2の逆転勝利。2試合目は、中盤の“心臓”モハメド・カンノをインドネシア戦の退場による出場停止で欠くなか、難敵のイラクとスコアレスドローに終わったが、2試合の総得点で上回ったサウジの予選突破が決まった。
指揮官はフランス人のエルベ・ルナール。カタールW杯でもサウジを率い、開幕戦でチームは、後に優勝するアルゼンチンに勝利。大金星に導いた“白シャツの魔術師”は、大会後に退任し、母国の女子代表の監督に就任する。そして24年10月、ロベルト・マンチーニ監督の後任として復帰した。
前任者のもとで、やや不足していたように見られた攻守のコレクティブを整備し、相手に応じてポゼッションとカウンターを使い分ける柔軟な戦術で、タフなチームに仕上げつつある。当時から主力メンバーの構成に大きな変化はないが、若いタレントの台頭も見られる。
代表チームは、基本的にアル・ヒラル、アル・アハリ、アル・ナスル、アル・イテハドの国内ビッグ4でプレーしている選手で占められる。ただ、いわゆる“オイルマネー”で欧州や南米からビッグネームが集まってきたことで、そうしたクラブの主力が外国人選手におされる形で、代表クラスの選手がプレー時間を失っているという意見も多くある。
もっとも、アル・ヒラルのサレム・アルドサリなど、厳しい競争の中でもポジションを勝ち取っている選手は、代表の試合でも安定して高水準のパフォーマンスを見せている。
また国内組が多いメリットとして、代表活動はスムーズで、国際Aマッチデーなど短い期間に制約されず、イレギュラーな合宿を張ることも可能だ。
例外的な存在が、現在はリーグ・アンのRCランスで活躍する右サイドバックのサウード・アブドゥルハミド。東京五輪にも出場したスーパーエリートで、20歳からA代表に定着している。2024-25シーズンにアル・ヒラルからセリエAのローマに移籍し、現在はローンで加入したRCランスで、好調のチームを右サイドから支えている。
頼れるエースとして前線に君臨するのが、フェラス・アルブリカン(アル・アハリ)だ。プレーオフのインドネシア戦では、PKでの逆転ゴールに加えて決勝点となる3点目を叩き込み、チームを救った。フィニッシュワークはもちろん、試合の流れを読んで的確に走ることができ、周囲を活かすプレーもできる。カタールW杯のアルゼンチン戦で、サレー・アルシェフリ(アル・イテハド)の先制ゴールをアシストしたのもアルブリカンだった。
攻撃のキーマンでキャプテンのアルドサリは左右のウイングをこなし、ポゼッションからでもカウンターからでも、クリエイティブな仕掛けでチャンスを切り開くことができる。相手陣内の高い位置でファウルをもらうのもうまく、FKの場面では危険なキッカーとして相手ゴールを脅かす。アルブリカンとのホットラインが、本大会でサウジアラビアが躍進するための生命線になる。
4-3-3をベースとする中盤では、モハメド・カンノ(アル・ヒラル)が抜群の存在感を見せるが、より攻撃的なキャラクターとして、22歳のムサブ・アルジュワイル(アル・カーディーシャ)が躍動すれば、得点チャンスはさらに広がりそうだ。
カタールではアルゼンチン撃破というビッグサプライズを起こしながら、ポーランド、メキシコに敗れてグループステージ突破は叶わなかった。48チームに拡大された北中米大会は、16強入りを果たした94年アメリカW杯と同じ北米の地で行なわれる。世界をあっと言わせる躍進を見せられるか。
文●河治良幸
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