デビューから32年。タレントとして活躍を続ける一方で、池尻のバー『YABEKE』を16年切り盛りする矢部美穂(48)が、自身の過去を語った。学生時代のつらい“いじめ”の記憶、芸能界入りの転機、そして長年の憧れである中山美穂との共演で涙した理由とは(前後編の前編)。
いじめにあっていた学生時代
東京・池尻大橋の駅からほど近い場所に佇むバー『YABEKE(ヤベケ)』。ドアを開けると、「いらっしゃいませ!」と矢部さんが明るく迎えてくれた。
オープンしたばかりの時間帯にもかかわらず、次々とお客さんが入ってくる。矢部さんが常連客の男性に「今日、取材があるんですよ」と声をかけると、「お姉さん、何か飲みなよ」と、記者を気遣ってドリンクをオーダーしてくれるお客さんも。
──アットホームなお店ですね。何年くらいやっているんですか。
矢部(以下同)2010年にオープンしたので、今年で16年になります。基本は文子ママとアルバイトの女の子の二人体制で、私は顔を出せるときに出勤する感じです。
お酒は強くないので、そんなにたくさん飲めたりはしないですが、ハロウィンやクリスマスはコスプレをしたり、お誕生日にはドレスを着てお店に出ることもあります。喜んでくださるお客さんもいるんですよ(笑)。
――矢部さんといえば、15歳のときに雑誌のグランプリ受賞をきっかけに芸能デビューし、アイドル、グラビア、バラエティと幅広く活躍されてきました。
実は学生時代は、いつも下を向いて歩いていて、暗くて何もしゃべらない子だったんです。そんな私のことを“矢部菌”なんて呼んで、コソコソと陰口を言う子もいて。学校の椅子に『バカ』とか『死ね』と書かれたり。
先生も、きっと気づいていたはずなのに何もしてくれなくて……。親にも言えなくて、全部ひとりで抱え込んでいました。
学校にも家にも居場所がなく、自死を考えたこともありました。あの時は、本当に苦しかったんですが、私がオーディションに受かって雑誌に載った途端、全員が手のひらを返したように急にちやほやしてきたんです。
――どんな風に?
それまで陰口を言っていた子たちが、「芸能人のサインもらってきてほしいなー!」なんて、まるで友達みたいに話しかけてきて。正直すごく驚きましたし、複雑な気持ちでした。その後、芸能界デビューしたら自然といじめはなくなりましたね。
中山美穂さんに憧れて芸能界に
──矢部さんが芸能界を目指されたきっかけとして、中山美穂さんの存在が大きかったとうかがいました。どのようなところに惹かれたのでしょうか。
小学校のころからずっと憧れてました。なんといっても、あのお顔が大好きで。あんなお顔になりたいとずっと思ってました。それと明るい雰囲気はもちろんでしが、時として見せる切なさや悲しげな表情…そのバランスが女優さんとしても素敵で。
かわいいとか綺麗なだけじゃなく、“何かを秘めている”雰囲気もすごく魅力的に感じていました。
実は20代の時、私のマネージャーをしていた方が内田有紀さんのマネージャーとなり、当時、中山美穂さんと同じ事務所というご縁で、ライブ後の楽屋に連れて行っていただいたこともあったんです。
その時は、私以外にもたくさんの方がご挨拶にいらしていたので、おそらく認識されえてなかったと思うんですけど、私としてはお会いできたこと自体が夢みたいで、ほとんど何も覚えていないんです。
──昨年9月、バラエティ『アウト×デラックス2024 世界中の誰よりアウト集結SP』との中で、念願の中山美穂さんとの共演を実現されました。収録時の心境を改めてお聞かせください。
インスタントジョンソンのじゃいさんと中山美穂さんが親友ということで、おふたりで番組にゲストで出演されたんです。私、じゃいさんとはずっと競馬のお仕事をしていたので、「なんで中山美穂さんと親友なの!」って、ちょっと嫉妬していたんです(笑)。
私としては、本当にずっと憧れていた方が目の前にいたので、収録では感極まって泣いてしまいました。「願いは口に出して言えば叶う」って信じているんですけど、やっぱりずっと中山美穂さんのファンだと言い続けてきたのがよかったのだと思ってます。
──収録現場で中山さんと印象に残っているエピソードはありますか。
スタジオに中山美穂さんが入ってきた瞬間に、もう号泣してしまって。MCのマツコさんからも、「矢部美穂がもう泣き始めてる」と言われたくらいでした。
「小学校の頃からずっと大好きで、中山美穂さんに憧れて、美穂さんの顔になりたくて芸能界に入ったんです」って、ご本人にお伝えしたら、最後に2ショットのお写真も撮らせていただいて。
しかも、その時に中山美穂さんが優しく腕を組んでくださったんです。今でも夢のような、本当に幸せなひとときでした。
──番組の中では、中山美穂さんのファンすぎるあまり、エレベーターのドアを閉めてしまった、というお話が印象的でした。
スタジオに入る前にエレベーターに乗っていたら、中山美穂さんが同じエレベーターに乗ろうと前から歩いてきたんです。私はその時、「憧れの中山美穂さんとエレベーターで一緒になったら、喜びの感情が爆発してしまう!」と思って、思わずドアを閉めてしまったんです。
その後、中山さんと週に3回は飲みに行っているというじゃいさんに「私もミポリンさんと飲みに行きたいです」とお願いしたんですが、私が大ファンすぎるからか、じゃいさんが「ファンとなると、プライベートの時間なのに中山さんに気を遣わせてしまうからどうかな…」となって、結局、実現することはありませんでした。
番組収録のときは『ミポリンって呼んでいいよ』とご本人から許可までいただけたんですが、その後、まさかあんなことになるなんて…本当に信じられない思いでした。
文/佐藤ちひろ
後編 48歳で「口パク卒業します」矢部美穂が中山美穂さんに捧げる初ライブ開催への思いと覚悟「美穂さんの歌を繋いでいきたい」に続く

