タレントとして32年活動し、現在は池尻でバーを営む矢部美穂(48)が、亡くなった中山美穂さんへの思いを語った。訃報を知ったときの衝撃、一般献花台で号泣した理由、そして「美穂さんの歌をつないでいきたい」と決意した来年4月の初ライブ。長年“憧れ続けた人”への感謝と覚悟を明かす。(前後編の後編)
前編
感動の初共演から二か月後の訃報に…
──矢部さんは学生時代、いじめにあいながらも中山美穂さんに憧れ、芸能界を目指したと伺いました。昨年12月の訃報をきいた際、どのような思いでしたか。お話しできる範囲で聞かせてください。
ニュースが流れてきた時は「嘘でしょ…」と。とても現実とは思えなくて……。しばらく受け入れられなくて、悲しいはずなのに最初は涙も出なかったです。
私が中山美穂さんの大ファンだと知っている友人からは「美穂ちゃん大丈夫?」と、ものすごい数の連絡が来ていました。共演させていただいた『アウトデラックス』の収録日が9月12日だったので、そこからまだ3ヶ月も経っていなかったですから…。
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──それは大変お辛かったと思います。
今年4月にお別れ会があったのですが、タレントとしてではなくファンとして一般の献花台に並びました。妹の中山忍さんが、昼前から夜8時くらいまで、1万人以上の方全員に挨拶をされていました。
忍さんは私が列に並んでいたのを見て驚かれていましたが、忍さんのお顔を見た瞬間、もう号泣してしまって…。「最後に美穂さんと共演できてよかったです」とお伝えしたのですが、もう泣きすぎてしまって、うまくお話しできませんでした。
6月18日に行われた中山美穂さんのデビュー40周年コンサートでは、NHK出演時の貴重な映像や、バンドの生演奏によるライブで偲んだのですが、いらしていたお客様から「矢部さんは本当に中山美穂さんのファンなんですね。嬉しいです」と声をかけていただいて。
そのときに、恐れ多いながらも、「中山美穂さんの歌を繋げていきたい」という思いが込み上げてきたんです。
──来年4月5日には、中山美穂さんに捧げたファーストライブを行われるとか。
中山忍さんのメッセージの中に、「カラオケへ行ったら姉の歌を歌ってほしい。姉を身近においてもらいたい。忘れないでほしい」という言葉がありまして、私はこの言葉を大切にしていきたいと思ったんです。
私は学生の頃から、中山美穂さんがいたから、いじめにあっても救われてきましたし、ここまでやってこれたと思っているんです。
恩返しじゃないですが、私に何かできないかと考えたとき、恐縮ながらも私がライブをやることで、中山美穂さんの歌を繋いでいけたらと思ったんです。
「アイドル時代はステージでも全部口パクだった」
──4月のライブに向けて、すでに準備も進めていらっしゃるのでしょうか。
はい。歌う曲のセットリストは決まっているけど、まだ内緒です。実は私、歌もダンスも苦手で、アイドル時代はステージでも全部口パクだったんです。
そんな私が、48歳でも苦手なことを克服できたら、年齢で足踏みをしている方々の希望になるんじゃないかな、とも思っています。
衣装は昭和のフリフリ系で、妹がパールを縫い付けてデコレーションしてくれる予定です。私なんかがライブをしたらミポリンファンの方には「お前がやるなよ」って思われてしまうかもしれませんが、少しでも喜んでくださる方がいらっしゃったら嬉しいなって思ってます。
今はとにかく、4月のライブを成功させることしか考えてないです。口パクじゃなく本番で歌うことは、私自身が一番びっくりしているくらいなので。この年になってダンスや振り付けを覚えるのはとても大変ですけど、ライブで皆さんに喜んでいただけたら、これからの矢部美穂も変わっていけるかな、と思っています。
──今年でデビューから32年。長く愛されるタレントでいるために、日々意識されていることを教えてください。
嘘をつかないことですね。ありのままの自分をみせることです。実は私、デビュー当初は番組にぬいぐるみを抱いて出たりして、ゆっくりしゃべる不思議ちゃんなキャラクターを作っていたんですよね(笑)。でも、その後は等身大の自分を見せてきたことで、これだけ長くお仕事を続けて来られたんだと思います。
──ずっと綺麗でい続ける秘訣はありますか?
まずは、恋をすることですね。これを言うと「えっ!不倫してるの?」って言われるんですが、そうではなくて。私は結婚していても旦那さんに恋をしています。
あとは普段からオシャレをしたり、メイクを楽しんだりと、自分なりに刺激を探すことですかね。美穂さんの歌じゃないですけど、日常のなかにドキドキやワクワクがあることが大事だと思ってます。
※
いくつになっても挑戦できる――。その言葉を体現し続ける矢部美穂が、自身の憧れである中山美穂さんの歌を未来へと繋ぐために踏み出すファーストライブ。48歳で挑む新たなステージは、ミポリンを愛した多くのファンに届くことだろう。
文/佐藤ちひろ

