現在は駅ビル、駅ナカ施設などに多数のテナントが出店。様々なグルメを堪能することができるが、昔からの定番といえばそば。だが、基本的にどの駅そばも製麺所などから仕入れた麺を使用しているのが現状だ。
とはいえ、手打ち麺を提供する店がまったくないわけではない。中国地方有数の秘境ローカル線として名高いJR木次線の亀嵩(かめだけ)駅構内にある「扇屋」では、打ち立ての出雲そばを食べることができる。
この店、そば好きの間でも名店として有名で、石臼でそば粉を挽き、水は名水で知られる奥出雲の天然水を使用。手打ちゆえか麺はこし、そばの風味ともに強く、店主のこだわりが感じられる。実際、週末には遠方から多くの方が食べに訪れるようだ。
なお、この亀嵩駅は、何度も映像化された松本清張原作の「砂の器」の舞台となった場所。扇屋が入っている駅舎は昔ながらの風情あり、今も聖地巡礼のファンが後を絶たない。観光とセットで蕎麦を味わうのがいいかもしれない。
そして、手打ち麺の駅そばを提供する店として忘れてならないのが、新潟・福島の山深い場所を結ぶ、JR只見線・大白川駅の「そば処 平石亭」だろう。沿線の秘境度は木次線を上回り、1日に発着する列車の本数は上下線合わせてわずか8本。しかも、営業時間中に停車するのは、会津若松行きの上り線1本しかないため、駅そばでありながら鉄道でのアクセスは困難を極める。
加えて、同店は土日祝のみの営業で、冬季(12月~4月下旬)は休業となる。ただし、地元・魚沼産のそば粉を使ったそばは絶品。ざるそばに季節の天ぷら、山菜小鉢がセットになった「鬼面そば」、これに駅名と同じ名を冠した地元産のどぶろくが付いた「どぶろくセット」がオススメだ。
どちらの店も現地に行くまでは大変だが、そこも含めて魅力と思えばそれも楽しいはず。この秋は秘境駅の手打ちそばを食べに行く旅というのも悪くないかも。
(高島昌俊)

