食の基本は「学校給食」
いまでは鈴木選手は自分の体の栄養士といえるほど知識と技術を身につけていると、志保子先生は太鼓判を押す。
「以前はちょっと体を大きくしようかとか、いろいろなことにチャレンジしていた時期もあったのですが、今はもうほぼ固定した状態。何より、私以上に自分の体のことをよく理解していて、何をどう食べたら体がどう反応するかわかっているので、世界のどこに行ってもほぼ大丈夫です」
鈴木選手も食事づくりのベースにしているのが、食事の基本構成だ。スポーツ栄養では、エネルギー源とたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルのバランスが重要とされている。要は、①主食(ごはん、パン、麺)、②主菜(肉、魚、卵、豆・豆製品)、③副菜(野菜)、④乳・乳製品(牛乳、ヨーグルト)、⑤果物 を毎食そろえればよい。
「すべてそろえると、自分の体にとっていいものがちゃんと入ってきて、タカみたいな丈夫な体が作れますし、泳ぐのも速くなったりします」
ちょっと難しそうと感じる場合は、学校給食を参考にするといい、と志保子先生。
「学校給食はみんなの頭の中を整理するための構成になっています」
子ども自身が調理を体験。自分で作ることでおいしさも倍増しそうだ©Tokyo Metropolitan Government
小学生の場合、おやつをどうするか、という問題もあるだろう。鈴木選手はケーキなどのスイーツは食べず、ご褒美としてヨーグルトにはちみちをかけたりする程度。小学生の場合は、食事をきちんと摂ったうえで、エネルギーが足りない場合は、おやつとしてスイーツやお菓子を食べるものいいそうだ。
小学生の保護者からは、少食や偏食を気にする声も聞かれたが、志保子先生は、発育のピークの時期にしっかり食べられるようにすることが大切とアドバイスする。
「個人差はありますが、基本的には中学に入ってから一生懸命食べても手遅れになる可能性があるので、小学4年生ごろからきちんと食べられるようにして」
お題は「へとへとに疲れたとき、どんな食事が食べたいか」。お皿に見立てた白い台紙に食材シールを貼った©Tokyo Metropolitan Government
痩せ志向にも警鐘を鳴らす。
「身長が伸びれば、その分エネルギーが必要になるので食べる量も増やさなければいけません。にもかかわらず、食べる量を控えると栄養状態が悪くなって身長が伸びにくくなりますし、貧血や疲労骨折、女子の場合は初経遅延といった問題が起こり、一生苦労する体になる恐れも出てきます。そうならないためにも、1ヵ月に一度程度、身長と体重を測って成長曲線と照らし合わせてください。急激に身長が伸び始めたら、ほどほどの運動とよく食べてよく寝ることが大切。大きくなることにエネルギーを使いましょう」
パラアスリートの状態は十人十色。鈴木選手の場合、胃腸が丈夫である程度の量は食べられるが、両足が欠損している分、消費カロリーが少ないため、実際の食事量はこぢんまりとしたものになるという。そのギャップを踏まえ最適な食事を考えるのがスポーツ栄養の役割であり、見極めるには自分の目で本人を見るしかない、と志保子先生は語る。
食べムラや好き嫌いのある我が子に頭を抱える保護者は少なくないだろうが、スポーツ栄養の知識を踏まえつつ、我が子を見て都度、できることを模索する。その積み重ねが、アスリートのパフォーマンスを支えることにつながるのだろう。
参加者は味の素社のキャラクターのエプロンと三角巾を着けて調理した©Tokyo Metropolitan Government
text by TEAM A
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