
J2最終節で生まれた様々なドラマ。STVVには古巣の奮戦を力にして翌日の試合を戦った選手がいた。次は俺たちの番だ――【現地発】
11月30日、ベルギーリーグ第16節。ヘントを相手に1-1のタイスコアで迎えた66分、GK小久保玲央ブライアンから始まったシント=トロイデン(STVV)のビルドアップは、MF山本理仁のドリブルも交えて前進。最後は左サイドの崩しからポケットを突いた左SBシメン・ユクレラーのクロスを、後藤啓介がヘッドで仕留めて2-1。後半アディショナルタイムには小久保のビッグセーブも飛び出し、4位のSTVVが4連勝を記録した。
殊勲の後藤はミックスゾーンに姿を現わすと「今日の勝利はエグい!」と叫んだ。
「(チームの雰囲気は)めちゃくちゃ(良い)! 今日、クラブ・ブルージュ(首位)が負けたので、(STVVが首位に)詰めるビッグチャンスだった。自分たちはこれからベルギーリーグでクラブ・ブルージュ戦、(3位の)アンデルレヒト戦と続くから、ここで勝点差を詰めて、仮にクラブ・ブルージュに負けたとしても問題なくシーズンを進めるためにも、しっかり勝点3を取ったのが大きかった」(後藤)
セントラルMFの山本、アブドゥライ・シサコと魅惑の中盤を形成するトップ下、伊藤涼太郎は、この日も多彩なパスワークでチームを牽引した。
「チャンスはこちらにもありましたが、そこで決めなかったから難しい展開になりました。やはり相手のヘントは力のあるチームなので、試合前から難しくなるのは分かっていた。もう少し自分たちのボールを持つ時間を長くしたかったですけれど、そこは次の反省点。次のクラブ・ブルージュ戦で(反省を)活かしたい」
後半アディショナルタイムからの登場という短い出場時間のなかで、FW松澤海斗はカットインシュートで相手ゴールを脅かした。
「もっと早く出してほしかったですね。(今日のような)チャンスを決め切ることが、今後の自分の未来に繋がっていくと思うので、そういうところを決め切る選手になりたいです」
J1昇格プレーオフを残し、11月29日に閉幕した今季のJ2。水戸ホーリーホックOBの伊藤と、昨夏にV・ファーレン長崎からSTVVに移籍した松澤は、古巣のJ1昇格に心躍らせ、ヘント戦を迎えた。
伊藤は二度、浦和レッズから期限付き移籍で水戸に在籍した。1期目は河川敷で練習していた時期。2期目は19年に完成した施設「アツマーレ」で練習した。この2つの時期を経験した伊藤は、水戸のクラブ史上初のJ2優勝&J1昇格を感慨深そうに語った。
「その時代(河川敷での練習)を知っている身としては、『本当にとんでもないことをやりとげたな』と、今でも信じられないくらいです。シーズンオフ、僕は水戸に試合を見に行き、イベントに出させてもらったりとかした。その時の水戸が正直、とても強かった。長崎に開始10分で3点を取って3-0で勝ったんです。『すごく良いチームだな。J1に昇格できるんじゃないかな』とその試合を見て感じました。
ただ、そこから難しいのがJ2。僕もJ2のプレーを経験してますけれど、一年を通じて勝点を積み上げていかないといけない。当たり前のことですけれど、それが一番難しい。特にJ2にはそういう難しさがある。それを乗り越えた選手たちをまずは称えたいし、本当に素晴らしい選手、チーム、サポーターだと思います」
水戸に自身が在籍した頃を、伊藤は「水戸は本当に選手が育つ。僕がいた時は良いベテランの選手もいましたし、若手がプレーしやすい環境でした」と振り返る。それは水戸の公式ホームページにも載っているクラブのミッション「人が育ち、クラブが育ち、街が育つ」に繋がること。
「みんなが、それを意識して、水戸の皆さんの気持ちを背負ってプレーしてました。僕がいた時はサッカーが盛んな街ではなかったので『どんどんサッカーを盛んにしていこう』と(活動していた)。今年の選手たちはJ1昇格ということで、そのことを証明した。本当にそれは凄いし、感慨深いものがあります」
長崎は2位でフィニッシュして、8年ぶりにJ1の舞台に復帰した。今年夏、長崎からSTVVに移籍した松澤が、同チームの魅力も合わせて気持ちを伝えてくれた。
「高木琢也監督に変わって、僕は1試合だけ出ました。そこから後半戦は1試合しか負けてない。本当に高木さんがチームを立て直してくれました。
選手を見てもらえば分かる通り、もともと実力はあるので、そこを高木さんが修正したのが、こういう結果になったと思います。毎試合見てましたが、めちゃくちゃ面白かった。ほとんど勝っていたので、見ている側も面白かったです。
長崎は前線の全員、“個”が本当に強い。特にマテウス選手。個でやってるところがめちゃくちゃ楽しい。失点も本当に減りました。高木監督になってから複数失点はなかったはず。そういうところも見ていて楽しかったです。自分は(高木監督の率いるチームでプレーしたのは)1試合だけでしたが、その1試合だけでも“変わったチーム”でプレーできて良かったです」
――個性派揃いのチームにおいて、やはりMF山口蛍主将の統率する力は大きかったのでは?
「はい。山口選手が出た試合はシーズン通じて2試合くらいしか負けてない。本当にまとめる力が凄い。言葉ではあまり発しないタイプなんですが、本当に行動で示してくれるので心強いキャプテンです。あの人のおかげで昇格できたと思います」
そして、後藤の古巣であるジュビロ磐田は、最終節のサガン鳥栖戦、後半アディショナルタイムにリカルド・グラッサが決勝ゴールを決め、2-1で競り勝ち、辛うじてJ1昇格プレーオフに進出した。
――ジュビロはこれで後半AT3連続弾で、粘ってプレーオフ圏内に入った。これは大きいのでは?
「優勝して上がってもらわないと困ります。自分がいた時は自動昇格だった。望みを繋いだというところは大きかったと思います。次、徳島、めちゃくちゃ強いと思います」
言葉は厳しくても、後藤の顔は嬉しそうに笑っている。やはり彼もホッとしていたのだ。
ホームでの33節・徳島ヴォルティス戦で、磐田は0-4で完敗した。後藤は5月に敵地で徳島と1-1で引き分けた試合を思い起こしながら、エールを贈った。
「自分が見た限り、アウェーでの徳島戦はそんなに相性が悪くないと思います。ジュビロならやってくれると思いますし、やってくれないと困ります」
昨夏、帰省し磐田のホームゲームを観戦すると、試合後はサポーターに願いを託した後藤。そんな彼の発言には磐田への愛情があった。
J2最終節で生まれた様々なドラマ。STVVには、それを力にして翌日の試合を戦った選手がいた。次は、彼らが嬉しい知らせを古巣に報告する番だ。
「水戸から刺激を受けた分、僕たちもやらないといけない。同じサッカー選手として負けてられない」(伊藤)
「クラブ・ブルージュに勝てば、もっと上が見えてくる。前回、クラブ・ブルージュとやった時は本当に歯が立たなかった。今回はホームでやれるのが、僕たちにとって大きなアドバンテージ。何かしら起こると思うので楽しみです」(松澤)
「(今の4位の順位に)もちろん満足してない。CLを目ざしてますし、チャンピオンを狙ってます。しっかり勝点を積み重ねるのが大事です」(後藤)
取材・文●中田徹
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