
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
【画像】え…っ! 夫婦で立って並ぶと「なんか小っちゃくてかわいい」 コチラが小泉八雲さん(ギリシャ人)と小泉セツさん(日本人)の身長差です
松野家はいつ完済できるのか
2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツさんがモデルの物語です。
第10週46話では、『ばけばけ』の物語の根幹にかかわる、「松野家の借金額」が話題になりました。第1週では主人公「松野トキ(演:高石あかり)」の養父「司之介(演:岡部たかし)」が、舶来のウサギを売る商売で儲けようとして失敗し、一生かかっても返せないという多額の借金を背負ってしまいます。
司之介が始めたウサギの商売は、「1羽5円で仕入れたウサギが最大600円で売れる」という夢のあるビジネスでした。彼は始めてすぐに200円もの儲けを得ますが、その後間もなくウサギのバブルがはじけてしまい、松野家には多額の借金と、売り物にならないウサギたちが残されます。
そのせいでトキは学校に通えなくなり、幼いうちから実父「雨清水傳(演:堤真一)」の機織り会社で働き始めました。そして、第7週からは未来の夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」の女中を務めています。
トキは当時としては破格の月20円の給料をもらい、毎月そのうちの10円を借金取りの「森山銭太郎(演:前原瑞樹)」に渡すようになりました。しかし、銭太郎は46話で、松野家の借金がまだ「宍道湖を埋め尽くすほど」あると語っています。
松野家の借金はこれまで、「一生働いても返せない借金長者」「100年経っても返せない」「200年以内にはなんとか」と、気の遠くなるような言葉で表現されていますが、具体的な額は明かされていません。
SNSでは
「宍道湖埋め尽くす程の借金って具体的にいくらよ?利息の方が膨れ上がってない?」
「松野家の借金がヘブンの任期がくるまでに返せる額か? あと1年延長されたら返せる額ぐらい?」
「なんか借金取りが来ても基本のんきだし、松野家の皆さんは自分ちの借金のデカさにマヒしてるんだと思う。もう何年もあんな生活続いてるし」
「具体的に言ったら視聴者がドン引きしちゃうくらいの額なんだろうか」
と、借金総額が気になる視聴者のさまざまな声が出ていました。
トキのモデルである小泉セツさんの養父・稲垣金十郎さんが、商売を始めるも失敗して多額の借金を背負ったのは事実ですが、具体的に何の商売をしたのか、借金がいくらになったのかは資料でも不明です。ただ、金十郎さんがどれほどの大金を失ったのかは、ある程度分かります。
明治政府は1874年から75年にかけて、士族に就業の資金としてそれまで貰っていた家禄(年々の米の支給額)の6年分を一括して奉還する政策を行いました。そして当時、多くの士族がその資金を商売に当てたものの、10人中8、9人もの割合で失敗して借金を背負い、貧民に転落したそうです。
そして、金十郎さんも1875年4月に家禄奉還を願い出ました。「島根県士族家禄奉還資金調」という古文書によると、彼はこのとき「680円50銭7厘」ものお金を受け取っています。しかし、お人よしで商才もなかった金十郎さんは、狡猾な詐欺に引っかかって資金を失い、稲垣家の先祖代々の屋敷も売り払うことになったそうです。
680円という大金を溶かし、さらに武家屋敷を売ってもまだ多額の借金が残ったとなると、金十郎さんはとんでもない詐欺被害に遭ったと思われます。
具体額は不明ながら、とにかく莫大な松野家の借金ですが、今後トキは月100円の高給取りのヘブンと結婚するので、いつかは完済できると思われます。ヘブンのモデルであるラフカディオ・ハーンさんは、お雇い外国人としてキャリアップしていき、1896年から東京帝国大学の講師として働いていた際は、400円もの月給をもらっていました。
宍道湖を埋め尽くすほどの借金も、さすがに物語の後半にはなくなっているはずです。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)
