今こそ蓮舫さんの言葉を評価しなければならない
──37年前にスタートした『古舘伊知郎トーキングブルース』は、その年の時事ネタをマイク1本で2時間しゃべり続けるトークライブです。今回は何を語る予定ですか?
今年起きたことを我々はどれだけ覚えていると思いますか。情報化社会の極みになって情報の海に溺れていると、そこで思考を停止して、アウトプットするべくもなく忘れていくしかなくなります。
今年何が起きたかということを、ちょっと遊び気分も含めて答え合わせをしていく予定です。
今年は特に政局ですよね。大きく転換期だなと思うのは、多党制の時代に入ったこと。そうなるとやっぱり解散も近いんじゃないかなと、僕は勝手ながら思っています。
政治のありようが変わって世界が流動化し始めているので、今までの固定観念も変わっていかなければいけません。
世界は人とモノと金が自由に流通するグローバリズムに舵を切って何十年も経っているけれど、その歪みもはっきり見えたと思うんです。一部の富裕層がものすごく大儲けをして、中間層がぶち壊される現実を見てしまった。
かといってアメリカの一国主義も問題があるわけで。人間が生み出した民主主義や資本主義にしても、極みまで来てしまった。もう人類、お手上げだと思います。そこにAIが出てきた。自分たちの頭の中を外部化したわけじゃないですか。
20万年の人類の歴史の中で初めてだと思います。自分たちより頭のいい奴が登場したのは。人間がトップ・オブ・トップだという傲慢さと喜びと自負を持って、ガリガリと金儲けをしてきたけれど、あきらめる時代に来たんじゃないかな。
多分、今後はAIに仕切られていきますよね。少なからずAIの手のひらで転がされていく。だから我々はここで、かつて「2位じゃダメなんですか」と言った蓮舫さんを評価しなければならないんです。
これからは僕の好きな仏教的な世界が広がっていくんじゃないですかね。資本主義のくびきから逃れて、怠け者になってぼーっと生きる時代が来る。そういう良い見方もできると思います。
希望と不安が表裏一体で押し寄せる情報の渦の中で、私たちはどれほど“自分の言葉”を持てているか、『トーキングブルース』ではそんな現代の人間の営みや心の悲しみを、ブルースを奏でるようにトークしたいと思っています。
取材・文/松山梢 撮影/石田壮一

