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「今の時代だったら命を絶っていたかも」一場靖弘が明かす“栄養費騒動”での壮絶バッシング…43歳、今も痛み止めを打ちながら野球に関わり続ける理由

「今の時代だったら命を絶っていたかも」一場靖弘が明かす“栄養費騒動”での壮絶バッシング…43歳、今も痛み止めを打ちながら野球に関わり続ける理由

育成含め116名が指名された今年のプロ野球ドラフト会議。その多くが祝福の中での門出となるが、一方で21年前、大バッシングを浴びながらプロ野球選手になったのが一場靖弘だ。逆境からスタートし、不完全燃焼に終わってしまったプロ野球人生とはどんなものだったのか、本人に振り返ってもらった。〈前後編の前編〉

「最初は“なんのこっちゃ”と…」

ダルビッシュ有、涌井秀章、金子千尋、能見篤史など、投手の当たり年と言われた2004年のドラフト会議。

その中でも目玉として注目を集めていたのが明治大4年の一場靖弘だった。

しかし、同年8月に“栄養費”という名目で複数の球団スカウトから裏金を受け取っていたことが発覚。世間から大バッシングを受けた一場は謝罪と謹慎に追い込まれ、本命だった巨人入団は叶わなくなった。

結局、新規参入したばかりの楽天へ入団するも、プロ通算8年で16勝33敗、防御率5.50とポテンシャルを発揮できずに引退。

世間をザワつかせ、球界にも大きな影響を与えた “一場事件”とは何だったのか。あれから21年、一場が正社員として働く保険代理店「ほけんのぜんぶ」のオフィスへと訪れ、事件の真相を聞いた。

――今年のドラフト会議も無事終了しましたが、やっぱりこの時期になるといろいろとフラッシュバックしますか?

一場靖弘(以下、同) 20年以上前の話ですからね。さすがにそれはありませんよ。

――昨年12月に“一場事件”当時の巨人オーナーだった渡辺恒雄氏がなくなりましたね。

球界のドンを失ったわけですから残念ですよね。ただ、直接お会いしたことはないので、これと言った感情はないんです。

――事の発端は2004年8月。一場さんに対して約200万円の“栄養費”を渡していたことを巨人が公表し、渡辺オーナーが辞任、さらに球団社長、球団代表、編成本部長らの解任が発表されたことから大騒動に発展しました。

ちょうどその時、全日本で台湾遠征(7月24日~8月1日まで開催されていた第2回世界大学野球選手権大会)に行ってたんです。たしか準決勝か決勝の前に、巨人のスカウトから電話がかかってきて「大変なことになったので、帰国したら事務所に来てください」と。

最初は“なんのこっちゃ”って感じでした。

「今の時代だったら命を絶っていたかも」

――日本学生野球憲章では「部員がプロ野球団体と選手契約または雇用契約などの締結を条件として、金品および経済的利益を受けてはならない」としています。このルールは知らなかった?

プロに入る注目選手はそういうものなのかなと勝手に思ってました。でも自分が悪いんですよ。憲章を読めばちゃんと書いてあるんですから。

――事実、ドラフト上位候補選手が入りたい球団に入団できる「自由獲得枠制度」(1993年に導入された当時の名称は「逆指名制度」)の弊害として、有望選手にお金を渡して交渉を有利に進めようとする球団は多かったと聞きます。

地方から出てきた野球部員なんて仕送りで生活している人がほとんどですから、差し出されたら、学生野球憲章を知らない学生で断れる人なんていないと思いますよ。

――公になっていないものの、多くの学生が裏金を受け取っていたのに、なぜか一場さんだけが実名公表。しかも当時、億単位の裏金が飛び交っていたなかで、一場さんは巨人から約200万円、横浜は約60万円、阪神は約25万円と決して大きい金額ではなかった。今では一場さんも被害者だったという風潮もあります。

いまだに名前が出た理由って当時者の僕もわからないんです。読売グループ内での派閥争いに巻き込まれたと噂で聞いたことはありますが……。

当時は僕自身、知りませんでしたが、他の選手も裏金をもらってることをマスコミが知っていたなら、そういう記事を騒動時に出してほしかったという思いはなくもないです。あの時はマスコミも一緒になって僕を叩いて、世間からは僕が初めて裏金をもらった選手ということになってましたからね。

そういう記事が出ていれば、世間からのバッシングが少しはマシになっていたかもしれませんし。

――そんなに大変だった?

SNSでの誹謗中傷がひどい今の時代だったら命を絶っていた可能性もあるでしょうね。テレビのニュースも新聞も週刊誌も僕の話題ばかり。コンビニへ行くだけでも車が追いかけてくるので、完全に人間不信。後ろばかり気にして歩くようになってました。

――謝罪会見を開いた後、野球部を退部して地元群馬で謹慎生活。

明治の野球部の仲間に挨拶できずに寮を去ったのが心残りですね。春季リーグは優勝できたのに、秋季リーグは4位。僕が迷惑をかけた影響もあるから申し訳なかった。

――事件の影響で日本球界入りが危ぶまれるなか、即戦力がほしかった新規球団の楽天が一場さん獲得に名乗り。無事、自由獲得枠でプロ入りとなりました。

ダメだったらアメリカに行こうと思っていたので、ホッとした気持ちと感謝の思いでいっぱいでした。

――しかし、その入団会見では「メジャーを目指す」という発言をして、報道陣をザワつかせたとか。

アホだったんでしょうね(笑)。そういうつもりで言ったわけではなく、ゆくゆくはみたいなニュアンスだったんですが、緊張もあってあんな感じに……(苦笑)。

――不正の温床になるという理由から「自由獲得枠制度」は2007年に撤廃。ある種、球界の浄化に一役買った形になりましたが。

ただ、将来的にまた復活する可能性もなくはないんじゃないですか。なんだかんだ選手も行きたい球団がありますから。僕の場合だったら両親が巨人ファンで、恩返しのために巨人へ行きたかった。お金をもらってる、もらってない関係なくですね。

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