大人になっても変わらない

スマホから生まれるようになっただけ(写真:iStock)
年月が経って、真理子が大人になった頃。今度はSNSが、同じような“噂の伝達装置”になっていた。
ある日、同僚の女性が社内チャットで同僚の悪口を書き、誤送信して炎上。誰かの裏アカが暴かれて、コメント欄が騒然とする。真理子はその光景を見ながら、心の奥がひやりとしたという。
「結局、あのときの“教室の空気”と同じなんだよね」
リカが撒いた言葉の種が、今は“リポスト”や“スクショ”になっただけ。人間関係の構造なんて、20年経っても何も変わっていない。
“誰かの悪口”は、まるで魔法のように広まる。信じたい人には心地よく、退屈な日常にちょっとしたスパイスをくれる。だからこそ、人は噂話を簡単に手放せないのだろう。
消える言葉の軽さと無責任さ

ボタンひとつで…(写真:iStock)
けれど、ひとつだけ違うのは、昔は「言葉が消えなかった」ということ。手紙でも、ノートでも、一度書いたら消せなかった。だから人は、少しだけ慎重だった。
いまはボタンひとつで送れる。消すことも、ブロックすることもできる。でも、その軽さが人をどんどん無責任にしていく。
「ネットが悪いんじゃない。人の口が怖いんだよ」
真理子のその言葉が、胸に残った。
