
2018年に『万引き家族』でカンヌ国際映画祭最高賞パルムドールに輝いた映画監督の是枝と、シリーズ累計3400万部を突破し、劇場公開中の『チェンソーマン レゼ篇』は2025年11月現在、全世界での興行収入が270億円を超える大ヒットとなっている漫画家の藤本。そんな世界から注目されるクリエイター2人によるタッグが実現。
「ルックバック」は、2021年に少年ジャンプ+で公開された、ひたむきに漫画家を目指す2人の少女を描く青春物語。公開されると当時に、著名なクリエイター陣をはじめとした数多くの漫画ファンの間で話題を呼び、「このマンガがすごい!2022」オトコ編第1位を獲得。2024年には劇場アニメ化され大ヒットとなり、世界最大規模のアニメーション映画祭である「アヌシー国際アニメーション映画祭」をはじめ世界各地で上映され、国内外からの高い評価を受けている。

是枝も「ルックバック」が紡ぐ、切実な物語に魅了された一人だそう。偶然立ち寄った書店で表紙の“背中”に惹かれて購入し、一気に読んだという是枝監督は「きっと藤本タツキさんはこの作品を描かないと先に進めなかったのだろうなと、そんな気持ちが痛いほど伝わってきました。自分にとっては、『誰も知らない』がそんな作品でした」と初めて読んだ感想をコメント。そんな原作との出会いのあと、本作のプロデューサー小出大樹より、本作の実写映画化のオファーを受け藤本と対面。その帰り道に、「“やらないわけにはいかない”と覚悟を決めた」のだという。
そして、藤本もコメントで、自身が初めて観た是枝監督作品に『海街dairy』(15)を挙げ、細やかな演出を絶賛し、「是枝監督がルックバックを撮ってくれるなら僕はもうなにも言うことはないです。楽しみにしています!」と全幅の信頼を寄せています。漫画と映画、ジャンルは違いながらも、常に最前線を走り続ける2人のクリエイターが出会い、歩み始めた、実写映画『ルックバック』。原作同様に、小学生時代から始まる13年に渡る2人の主人公、藤野と京本の軌跡を、美しい四季と共に丁寧に描く。作品の撮影はすでに終了。秋田県にかほ市を中心にロケが行われ、現在は編集作業中とのこと。
公開決定とあわせ、第1弾ビジュアルとなるティザービジュアル2点も到着。雪深い道を歩く2人の後ろ姿、部屋で机に向き合い漫画を描く2人、共に劇中の印象的なシーンが映しだされている。本作では国内外で活躍する写真家の濱田英明が撮影現場に帯同しており、このビジュアルのスチール撮影も担当している。
日本国内のみならず、早くも韓国や台湾での公開も決定している本作。漫画、アニメと続き、気鋭の監督の手で実写映画化される本作。藤野と京本を演じるのは誰なのかなど、今後の続報にも注目したい。
■<コメント>
●是枝裕和(脚本、監督、編集)
「京都からの新幹線の帰り、品川駅の本屋に平積みされていた表紙の『背中』に惹かれて、思わず手に取ったのが、『ルックバック』との出会いでした。その晩、一気に読みました。漫画と映画でジャンルは違いますが、同じ作り手として、覚悟が切実に伝わってくる作品で、きっと藤本タツキさんはこの作品を描かないと先に進めなかったのだろうなと、そんな気持ちが痛いほど伝わってきました。自分にとっては、『誰も知らない』がそんな作品でした。
その出会いのあと、小出プロデューサーから『ルックバック』を実写映画に、という誘いを受け、藤本さんにお会いする機会をいただきました。まずは、このような作品を世に産み落としていただいたこと、その作品に同時代に出会うことができたことへの感謝をお伝えできればと思っていたのですが、その帰り道、『やらないわけにはいかない』と覚悟を決めたことを覚えています。撮影は終了し、現在、編集中ではありますが、とても豊かなものが映しだされる作品になるのではないかと思います」
●藤本タツキ(原作)
「是枝監督作品で初めて見たのは『海街diary』です。主人公が新しく住む事になる家の中や、町の食堂の中の家具などがとても生活感があって物語に説得力を持たせるものになっていました。物語に関わらない細かい演技なども、キャラクターが日々、僕達の見えない所で生きていると思わせるもので感動しました。是枝監督がルックバックを撮ってくれるなら僕はもう何も言う事はないです。楽しみにしています!
●小出大樹(企画、プロデューサー)
「ジャンプ+で公開された日に何度も読み返しました。衝撃でした。すごいものを読んでしまったと思いました。様々な感情と共に、ぼくは、藤野の背中から、なにか強い力をもらった気がしました。その矢先、藤本タツキさんにご挨拶できる日がありました。藤本さんに読んだ直後の感想を伝えたいと思っていたのですが、ぼくは、間際になって、この漫画を、是枝監督による実写映画にさせていただけないかと伝えたいと思っていることに気がつきました。
是枝監督とは、ぼくが学生のころに受けていた授業の先生として出会い、教室の席からその背中を見つめていました。『誰も知らない』で、1年をかけて四季を巡りながら子どもたちの成長を撮影したこと、『海街diary』や『奇跡』で、子役の方に台本を渡さずにセリフを口伝えで演出されたことなど、これまで見聞きした話が思いだされました。なによりも、『誰も知らない』を観た際に抱いた強い感情が呼び起こされ、考えれば考えるほど、この実写映画化に際しては、是枝監督しかいないのではないかと思い、お声がけしました。是枝監督をはじめ、キャストとスタッフの皆さん、秋田県にかほ市の方々と、四季を通じて、できうる限り丁寧に撮影してきました。力を尽くして作りますので、楽しみにしていただければと思います」
文/サンクレイオ翼
