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20世紀最大の音楽革命…“ビートルズの物語の決定版” 完全新作エピソードではエモい“新曲制作”過程も<ザ・ビートルズ・アンソロジー>

20世紀最大の音楽革命…“ビートルズの物語の決定版” 完全新作エピソードではエモい“新曲制作”過程も<ザ・ビートルズ・アンソロジー>

「ザ・ビートルズ・アンソロジー」完全新作となるEP9が配信された
「ザ・ビートルズ・アンソロジー」完全新作となるEP9が配信された / (C)2025 Apple Corps Ltd.

1995年に公開されたザ・ビートルズのドキュメンタリー・シリーズ「ザ・ビートルズ・アンソロジー」に新たなエピソードが加わった同作の修復&リマスター版が11月26日より配信開始。11月28日には完全新作となるエピソード9が配信されたということで、今回は幅広いエンタメに精通する音楽ジャーナリスト・原田和典氏が同作を視聴し、独自の視点でのレビューを送る。(以下、ネタバレを含みます)

■ドキュメンタリー・シリーズ“アンソロジー”が令和に復活

本作は、ナレーションやインタビューがメインとなる従来のドキュメンタリー形式ではなく、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターらメンバー自身が、複雑な彼らの歴史を語るという革新的なスタイルで製作された。

これまで「ザ・ビートルズ:Get Back」「ザ・ビートルズ:Let It Be」「ビートルズ ‘64」と多くのドキュメンタリーを配信してきたディズニープラス。その仲間に新たに加わった本作は、今から30年前に公開され、圧倒的な反響を巻き起こした“メンバー自身の語りと、映像と音をたっぷり盛り込んだドキュメンタリー”の修復・リマスター・新編集版だ。

1995年版は約80分のエピソード×8話で構成されていたが、このほど配信された2025年版では60分前後に編集し直され、新たに“EP9”が加えられた。EP9を紹介する前に、EP8までの流れをつかんでおきたい。

EP1では各メンバーの生い立ち、音楽への目ざめ、バンド結成、ジョン・レノン~ポール・マッカートニー~ジョージ・ハリスン~リンゴ・スターの4人組に定着するまで、EP2は、デビューアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』、独自の髪形(いわゆるマッシュルーム・カット)、そろいのコスチュームで英国のトップグループへの道を驀進したあたり。

EP3はアメリカ・CBSの伝説的テレビ番組「エド・サリヴァン・ショー」に登場し、アメリカでも人気爆発。初の映画「ア・ハード・デイズ・ナイト」公開、EP4は世界的に高まる“ビートルズ現象”、「イエスタデイ」誕生秘話、大英帝国勲章の受勲。

EP5は5万人以上の観客を集めた米国「シェイ・スタジアム」でのライブなど、主にコンサート活動について、EP6はコンサートからの撤退、ルックスの変化、凝りに凝ったスタジオ・ワークから生まれたアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』について、EP7はグループの危機…それでも名曲は次々と生まれ続ける。衛星中継など新たなテクノロジーの活用も。

EP8は再び心を一つにしてのレコーディングとなったアルバム『アビイ・ロード』、伝説のルーフトップライブ。ブライアン・エプスタイン、ジョージ・マーティン、デレク・テイラー、ニール・アスピノールといった、いわゆる“5人目のビートルズ”たちの証言もここに混じるのだから、視聴するだけでビートルズの知識が深まるし、「この曲も、このアイデアもビートルズのものだったのか」と何度も驚くことができる。

■完全新作のEP9ではジョン没後の“新曲”制作秘話も

そしてここにEP9がつながる。ビートルズが最後に一緒に演奏をしたのは1969年1月、だが、超大物バンドだからこそであろうややこしい問題や手続きを経て、正式に解散したのは1975年1月であった。その5年後、1980年12月にはジョンが凶弾に倒れ、4人そろっての再会は永久に不可能となった。つまり1995年版は解散20年、ジョン没後15年という節目に公開されたということになる。

その間、テクノロジーの進化は勢いを止めなかった。目に見える形での再結成はあり得ないとしても、ジョンの遺した音源にポール、ジョージ、リンゴが音を加えることで“ビートルズとしての新曲”を創り出すことは理論上、可能なのだ。共同プロデュースを務めたのは、エレクトリック・ライト・オーケストラのリーダーにして、各メンバーと親交があるジェフ・リン。完成した「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラヴ」を聴くと“噴き出すほどの濃厚な愛”という印象を受けるが、その制作過程を見ることができるのもEP9の大きな魅力だ。特にビートルズ世代にはたまらないエモさがある。

いくつかのタムを並べて立ってたたくリンゴ、ピックではなく指弾きで絶妙なソロをとるジョージ、ポールとジョージが声を重ねていく姿、すべてが絵になる。映像の中には「3人ではビートルズとしてステージに立てない」という彼らのこだわり、音楽制作への情熱、さらに「『ナウ・アンド・ゼン』という曲の(ジョンの)音源もあるが、これは作品化に時間がかかりそうだ…」というフレーズも出てくる。この「ナウ・アンド・ゼン」は、2023年に“ビートルズ最後の新曲”という触れ込みでリリースされた。

EP9では、3人並んで楽しそうに往年を振り返っている姿も見ることができるが、2001年にジョージが亡くなり、現存メンバーはポールとリンゴの2人になってしまった。1997年にはデレク・テイラーが、2008年にはニール・アスピノールが、2016年にはジョージ・マーティンが死去と、“あっちの世界”はにぎやかになるばかりだが、ビートルズの音楽がますますエヴァーグリーンの艶を増しているように感じられるのは私だけではないはずだ。

20世紀最大の音楽革命、そして今なお多大な影響を与え続けるビートルズの世界を味わい尽くせるこの9つのエピソードは、まさに“ビートルズの物語の決定版”と言って差し支えないだろう。

「ザ・ビートルズ・アンソロジー」(全9話)は、ディズニープラスのスターで独占配信中。

◆文=原田和典

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