貧乏という「隠したい過去」が、自分らしさの証明になる
極貧体験をテレビで初告白した結果、緑川さんを待っていたのは予想もしなかった反響でした。ブログには「すごく感動しました」「私も同じような生活をしていました」「貧乏界の星になってください」といった温かいコメントが殺到。「嫌われてしまうかも」と恐れていた緑川さんの心境は一変します。
「一気に気持ちが楽になったんです。ずっと背負っていたものが、スッと肩から降りた。『このままでいいんだ』『自分を隠さなくていいんだ』と思えました」
この告白をきっかけに、緑川さんのキャリアは大きく好転します。2019年にスタートした『それって!?実際どうなの課』で、フリマアプリ検証企画を担当し、総売上は約1,800万円に。ここからさらに緑川さんの存在が世に広く知られることになります。
貧乏だったからこそ、ものを大切にする精神が人一倍強く、「不用品も活用しなければもったいない」という想いもあって、2016年ごろからフリマアプリを始めていたのだとか。
「人の力になれるということがすごくうれしくて。『人のために頑張るのが好きなんだな』って気付きました」
充実した日々を送る中、緑川さんは18歳のときに書いた作文を見つけます。そこには、こんな言葉が綴られていました。
これからはもっともっと頑張って、お金だけじゃなくて、言葉として、形として(お母さんに)恩返しがしたい。そのためにも、もちろん自分のためにも、夢を叶えます。想いは、願えば必ず叶う。そう思うので走り続けます。嫌なことも、楽しいことも、どんどんかかってこい。飛び越えてやるんだ。この18年間、悔いなし!
この作文を読み返した今、緑川さんは涙を浮かべながらこう振り返ります。

「すごく夢と希望に溢れていて、エネルギーを感じました。『あ、今もこのときの気持ちと変わっていないな』と思ったんですよね。この作文を書いたのが18歳。そして今、ちょうどその倍の年齢の36歳。当時の自分に『ちゃんと走り続けているよ』と言ってあげたいなって」
隠し続けていた貧乏という過去が、実は誰かの心を動かし、自分自身の可能性を広げる力になっていた。恥ずかしいと思っていた経験こそが、緑川さんを今の場所に導いてくれたのです。
今がしんどいすべての人へ「そのままで大丈夫」
公園で雑草を食べ、砂でケーキを作って誕生日を祝っていた緑川さん。その日々を振り返って、今、彼女はこう語ります。

「貧乏って財産だなと思えるようになりました。小さいことでも感動できるんです。ご飯を食べられただけでもう100点。さらに美味しかったら110点、120点、130点みたいな」
とはいえ、「仕事がしんどい」と感じることもあると話します。
「しんどいと思うことはもちろんあります。でも、『しんどい』で終わらせないようにしています。何か一つでも面白いことを見つけようと意識しているし、『しんどかったけどやってよかった』と思える未来を自分でつくればいい。すべてに意味があると思っています」
最後に、ご自身の経緯を踏まえて、はたらくモヤモヤを抱える若者に向けたメッセージを伺いました。
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「私もモヤモヤはたくさんありますよ。でも、毎日がつらくなってしまうので、『面白い瞬間』を見つけて、その光をたどっていましたね。心が動いたらやってみて、動かなかったら別のことをやればいい。そうやって、心のアンテナを敏感にしていくことが、きっとはたらく楽しさにつながると思います」
物置で虫と一緒に暮らし、雑草で空腹を満たしていた日々から学んだ、人生を豊かにする究極の知恵。それは、どんな状況でも「それで良かった」と思える未来を自分でつくり続けることでした。
(「スタジオパーソル」編集部/文:間宮まさかず 編集:いしかわゆき、おのまり)

