
水瀬いのりの音楽活動10周年を記念したライブツアー「Inori Minase 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR Travel Record」の千秋楽公演が、11月30日、神奈川・横浜アリーナにて開催された。Wアンコールを含む全25曲を披露し、会場を大いに沸かせた。
■横アリ千秋楽「ファイナル楽しんでいきましょー!」
自身最大規模となる7都市8公演を完走した同ツアー。開演時刻、会場の照明が暗転すると同時に客席中のペンライトが水瀬のイメージカラーであるブルー1色に染まり、オープニングムービーがスタート。水瀬がこれまで歩んできた道のりが示されると、2階建てステージの上段、風船のように浮かぶカラフルな円形パネル越しにシルエット姿の水瀬が登場した。「ファイナル楽しんでいきましょー!」と元気よく声をかけると、自身のデビュー曲「夢のつぼみ」でライブの幕を開けた。
この選曲とシルエット演出、さらに着用した白いワンピース衣装は、2017年12月に行われた初ワンマンライブ「水瀬いのり1st LIVE Ready Steady Go!」をオマージュしたもの。10年間の軌跡を思わせる構成に、会場のボルテージも一気に上がった。続けて、はじける炭酸のようなビジュアル演出の「まっすぐに、トウメイに。」、水瀬自らタオルを回しながらセンターステージで歌った「Ready Steady Go!」と、冒頭から勢いあるナンバーを連続で披露した。
■「Catch the Rainbow!」でファンと一体に
MCでは、ファンへの感謝の気持ちを伝えつつ、「時にはセンチメンタルに、時にはかっこよくステージを届けるので、ついてきてくれたらと思います!」と公演への意気込みを伝えた。そして水瀬自身が歌詞に込めたメッセージと7色に光るライトが町民(※水瀬のFC会員の呼称)との虹の架け橋を作った「Catch the Rainbow!」、躍動感あふれる演奏と共に新しい一歩を踏み出す「春空」を届けた。
バンドメンバー紹介の後、水瀬の楽曲「Happy Birthday」をベースに、水瀬たっての希望で「笑顔が似合う日」「あの日の空へ」「コイセヨオトメ」も織り込んだインスト演奏で会場を盛り上げた。最後にターコイズカラーの新衣装に着替えた水瀬が再びステージに登場して、“君のそばで笑う未来”を願う「アイマイモコ」を笑顔を浮かべながら歌唱した。
さらに最新アルバム『Turquoise』より、ドラムンベース調の「まだ、言わないで。」で新たな表情も覗かせた。ツアー恒例のバンドメンバーの“行ってみたい旅行先”をテーマにしたトークで和気あいあいとした時間を作りつつ、ここからは新曲のバラードを続けて披露。センターステージで全方位のファンを見渡しながら出会いの感謝を噛み締めるように歌った「アニバーサリー」、黄金の光が舞うような迫力の映像演出が楽曲のスケール感を強調した「My Orchestra」、どちらもツアー最終日ゆえの完成度と気持ちが伝わるパフォーマンスだった。
■リフターで2階ステージにも登場
過去のライブ映像やMCの音声をインサートしながら、水瀬が10年の歩みをイラストなどで形にしていくブリッジムービーを挟み、ライブ後半戦は「Starry Wish」からスタート。パンツスタイルのスタイリッシュな衣装に着替えた水瀬が、リフターで2階ステージに颯爽と姿を現した。続く「スクラップアート」でのアグレッシブな表現、同ツアーで初披露となったプログレッシブな新曲「NEXT DECADE」など、水瀬のアーティスティックでかっこいい一面をアピールした。
その後のMCで、この10年、時に不安を抱くこともあったことを素直に告白しつつ、「“好き”だからずっと真剣に向き合ってきたアーティスト活動でした」と、ここまで続けてこれた感謝の気持ちを伝えた。そして、「これからもずっと、何十年だって続くように、次の曲を歌いたいと思います」と告げると『Turquoise』収録の新曲「海踏みのスピカ」を披露。
これまでのライブタイトルを彷彿させるフレーズが忍ばされた歌詞で10年の軌跡を辿りつつ、ラストのフレーズではファンも共に合唱し“どこまでも君と一緒に”という約束を確かめ合った。
■10年間を振り返り、涙ぐむ場面も
そして、ステージ前面に紗幕が降りると、ピアノのしとやかな調べに導かれて、幕の向こう側に黄色いドレス衣装に着替えた水瀬のシルエットが浮かんだ。まるで深海にいるかのような演出のなか歌われたのは「BLUE COMPASS」。楽曲の後半で紗幕が落ちると、彼女は流れ星やコンパスの映像を背にしながら“どこまでもいっしょに”という願いを、会場の1人1人に届けるように歌った。
続いてセンターステージで歌われた5周年記念シングルの表題曲「Starlight Museum」では、途中で涙ぐんで声を詰まらせる場面も見られた。すかさずファンが歌い継ぎ、同公演でもとりわけエモーショナルで感動を誘う一幕となった。
MCでも引き続き涙が止まらず、「次に歌う曲ももれなく泣いちゃうかもね」と告げた彼女が次に歌ったのは、ファンとの絆をテーマにした2ndシングル表題曲「harmony ribbon」。終盤、水瀬が「みんなの声を聴かせて!」と呼びかけると、会場がひとつになって「ラララ~」と歌った。そして「私たちだけのこの10年を、この曲に込めて咲かせたいと思います」と語ると、夢への純粋な想いを込めたミディアムバラード「Innocent flower」を披露し、ライブ本編を締めくくった。
■アンコールはトロッコでアリーナを周遊
盛大な「いのりんコール」を受け、アンコールに応じた水瀬。いのりバンドが演奏とクラップで盛り上げる中、過去のライブ前の円陣の様子を全公演分つないだ、千秋楽だけの特別映像が流れた。そして、水瀬は自身が考案したキャラクター“くらりちゃん”のトロッコに乗って登場。2ndハーフアルバムの表題曲でもある新曲「Turquoise」を歌いながらアリーナを周遊した。
そしてアリーナを半分ほど回ったところで「Million Futures」を皮切りに自身初となるメドレーへと移行。引き続きトロッコに乗りながら「HELLO HORIZON」、メインステージに戻って「フラーグム」「glow」を連続でパフォーマンス。できる限りたくさんの楽曲と共に10周年ツアーを回りたい、という彼女自身の発案で実現したものだという。
その後、この10年の感謝の気持ちを改めて伝えつつ、「ここがゴールではありませんからね」と、未来の予定の新情報を告知。前日の公演で発表されたFCイベント「いのりまち町民集会2026」の開催決定に加えて、同公演の映像のオンライン配信が12月24日より行われることが決定。さらに水瀬の誕生日でありアーティストデビュー日である12月2日に「水瀬いのり10周年記念スタジオライブ」がYouTubeでプレミア公開されることが発表となった。
そして水瀬は「デビュー曲の『夢のつぼみ』を感じていただきながら、でも、今だからかける言葉をたくさん込めました」「自信をもってみんなに言える言葉を書きました。ぜひそんな気持ちを受け取ってほしいです!」と伝えると、自身が作詞した『Turquoise』収録の新曲「夢のつづき」をラストナンバーとして披露。最後は銀テープが発射され、華やかにライブの幕は閉じた。
■ダブルアンコールで「僕らは今」を涙ながらに歌唱
さらに、会場からの「もう一回!」コールに応えてダブルアンコールが実現。水瀬が「もう1曲、みんなと一緒にひとつになりたいと思います」と語り、マイクスタンドを持ち出すと、次曲を察知した客席からどよめきと歓喜の声が上がった。「この言葉が、未来でこんなに私たちの希望になってくれるなんて、本当に幸せです。みんなで一緒に神話を作りましょう!」と告げて「僕らは今」を歌唱。中止になった2020年のツアーの横浜アリーナ公演で、ファンと一緒に歌う予定だった楽曲だ。その後、彼女はオンラインライブを含めて4度、横浜アリーナでライブを行ってきたが、有観客かつ声出しOKの環境でこの曲を披露するのはこの日が初めてとなる。
冒頭の一節を歌い終えた後、水瀬は再び涙ぐむが、拳を掲げて力強く歌い上げた。2番ではハンドマイクを握ってセンターステージへ移動。アリーナ中からの大合唱の声を全身で受け止め、その歌で思いを繋いだ。最後は「これからも幸せな時間を重ねていきましょう、約束!」「10年の思いを込めて飛びましょう!」と呼びかけ、会場が一体となったジャンプでアニバーサリーライブは終演した。
■「Inori Minase 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR Travel Record」
◇11月30日(日)◇神奈川・横浜アリーナ
<セットリスト>
M01.夢のつぼみ
M02.まっすぐに、トウメイに。
M03.Ready Steady Go!
M04.Catch the Rainbow!
M05.春空
M06.アイマイモコ
M07.まだ、言わないで。
M08.アニバーサリー
M09.My Orchestra
M10.Starry Wish
M11.スクラップアート
M12.NEXT DECADE
M13.海踏みのスピカ
M14.TRUST IN ETERNITY
M15.BLUE COMPASS
M16.Starlight Museum
M17.harmony ribbon
M18.Innocent flower
<アンコール>
EN1.Calling Blue(overture)〜Turquoise
EN2.Million Futures→HELLO HORIZON→glow
EN3.夢のつづき
EN4.僕らは今

