2025年シーズンのF1は、特に序盤戦はマクラーレンが驚異的なスタートダッシュを切った。開幕からの15戦で12勝を挙げたことでコンストラクターズランキングでは圧倒的なリードを築き、第18戦シンガポールGPの時点で6戦を残しながらタイトルを確定させた。
今シーズンは翌2026年に新規則導入を控えていることもあり、どのタイミングでニューマシンの開発に切り替えるか、各チームは非常に重要な決断を強いられた。その中でマクラーレンの序盤の独走は、フェラーリの開発方針に大きな影響を与えた。
フェラーリのバスール代表は、4月の段階で空力開発を2026年に向けたものに切り替えていたと明かす。この時点ではわずか数戦しか終わっていなかったにもかかわらずだ。ただこの決断は、今季のマシンに長期間アップデートがないことでチームの心理面へ悪影響を与えた可能性があると認めた。
「シーズン序盤は最高の滑り出しではなかった。中国では2台が失格になり、ライバルに対してかなりのポイントを失った。そしてマクラーレンが開幕から4戦、5戦で圧倒的な強さを見せていたので、我々が2025年シーズンの巻き返しはかなり難しいと判断した」
バスールはそう説明した。
「そこで4月末には2026年へ完全にシフトした。これは難しい決断だったし、心理面に与える影響を少し軽視していた部分があったかもしれない。というのも、まだ18〜20レース残っているのに空力開発が止まるというのは、精神的にはかなり難しい状況だ」
「それでも我々は前進を続けている。メカニカルの領域でもいくつかアップデートをしていて、オペレーションの改善にも努めている。それがF1のDNAというものだ。私はそれでも自分たちの決断に自信を持っている」
わずか3レース前のメキシコシティGPまではコンストラクターズランキング2番手につけていたフェラーリだが、メルセデスとレッドブルに追い上げを許してしまった。フェラーリはこの2チームに逆転されランキング4番手に転落したばかりか引き離されてしまい、同3番手のレッドブルには44ポイント差。最終戦での逆転は不可能となり、ランキング4位が確定してしまった。
今季はまだ勝利がなく、新加入のルイス・ハミルトンに至っては適応に苦しんだ結果決勝レースでの表彰台も獲得できておらず、キャリアワーストのシーズンを送っている。
そんな厳しい状況にあるフェラーリだが、バスールはドライバーであるハミルトンとシャルル・ルクレールを含めたチーム全員で合意した開発方針であると話す。
「この決断はチーム全員で共有したものだ。当然ドライバーもその決定に加わっていて、彼らはこのプロジェクトに完全に賛同している」とバスールは言う。
「チャンピオンシップの状況を見れば、マクラーレンに追いつくのは非常に難しかった。そこで『よし、じゃあ風洞のリソースは26年に集中させよう』と決めたんだ」
「一方でメカニカルサイドは開発を続けているし、空力以外はアップデートも行なっている。困難な週末やセッションへの対応も良くできていると思う。来年、それが正しかったか分かるだろう」

