MotoGPの2026年シーズンに向けた最初のテストで、アプリリアはマシンのエアロダイナミクス面でかなりの変化を見せていた。チームはさらに幅広い状況で機能するマシンを目指しているという。
アプリリアはMotoGPで近年どのチームよりも積極的に空力開発を推し進めてきた。今季は後半戦にかけてドゥカティに次ぐパフォーマンスも示すようになっていたが、彼らが11月18日に実施されたバレンシアテストに持ち込んだエアロダイナミクスは、2025年型からは一変したモノだった。
フロントウイングの形状はドゥカティやKTM陣営に近い印象を受けるタイプに変更され、リヤウイングもステゴサウルス系から、F1のようなウイングに切り替えられた。リヤに関してはもう1種類がテストされていたが、セッションの大半でF1スタイルのリヤウイングが試された。
エアロダイナミクスを大きく変えたアプリリアは、今回のアップデートの狙いが特定の領域にあるのではなく、マシン全体の性能向上を目指していると説明した。
「基本的に、エアロダイナミクス開発の特徴のひとつとして“カバーを広げる”というものがある」
アプリリアのテクニカルディレクターを務めるファビアーノ・ステルラッキーニはそう語る。
「例えば、優れた最高速を手にしていることが明らかで、それがラップタイム向上への寄与がそこまでではなかったとしても、オーバーテイクやレースマネジメントを楽にすることにつながる」
「しかしその一方で、最高速のために必要なモノとは真逆で、ドラッグを増やすことによって、ブレーキング時のパフォーマンスを改善することができる」
「つまり、ライディングのあらゆるフェーズで適切な空力効率が得られるように、カバーできる領域を広げようとしているんだ」
なおバレンシアテストでマルコ・ベッツェッキは、最終的に最速タイムをマークしたラウル・フェルナンデス(トラックハウス)から0.027秒差と僅差のタイムを記録。ポジティブな1日になった。
ただ、前夜の雨でコースインが遅れたためテスト時間が限られたこともあり、新マシンの評価については保留している。
「まあ、もちろん違っているよ。でもしっかりと理解を深めるためには時間が十分ではなかったんだ」と、ベッツェッキは語る。
「当然だけど色々なことをテストした。でも天候のせいもあって、少し変わった1日だった。コース上で過ごす時間はかなりロスしてしまった」
「だからテストについてはいつものことだけど複雑なフィーリングだ。ポジティブなこともあったけど、疑問点やネガティブな面だってあった。でもそれがテストだからね」
「決断する前に全てをしっかり分析する必要がある。今回のはほんの前菜のようなものだった」
なおベッツェッキは現時点では2026年型と、2025年型のパフォーマンスはほぼ同じだと感じている。
「この2台はかなり似ていた」
「新型のほうが、ベストのラップタイムは良かったかもしれないけど、0.05秒とかそんなものだ」
「最初はそういうものだ。今シーズンを経て、僕はこのバイクのことはよく理解している。1万kmは走ったんじゃないかな。だからこそ、新型で40周や50周を走った程度ではしっかり理解するのは不可能なんだ」

