11月26日にXに投稿されたある画像が大きな反響を呼んでいる。美しい夕焼けと東京の下町・谷中の商店街を一望できる場所として親しまれた場所「夕やけだんだん」、その名所の景観の変化を惜しむ声が相次いでいる。地元住民や自治体に話を聞いた。
谷中の名所「夕やけだんだん」の隣で進むマンション建設に住民は「残念」
「夕やけだんだん」は谷中銀座商店街に通じる階段の愛称だ。JR日暮里駅から徒歩5分ほどの場所に位置し、古くはお寺の境内の中にあったという。階段の上からきれいな夕やけが見られる名所として、地元住民や国内外の観光客から愛されている。
その景観を遮るように進むマンション建設をめぐり、Xには「ここの雰囲気は唯一無二だったのに」「とても残念です」など、惜しむ声が多く上がっている。
12月の平日に取材班が現地を訪れると、建設中のマンションを囲う灰色の養生幕が階段横にそびえ立ち、以前とは大きく様子が変わっていた。
商店街は多くの人でにぎわい、外国人観光客の姿が目立った。
階段の近くで数年前から営業しているというベーカリーの店員は次のように話す。
「客足は以前とは変わっていませんが、マンションの建設が始まってから、少し店内が暗くなってしまい、階段の上から夕やけも見られなくなってしまいました」
商店街の台東区側でバーを営む女性は、複雑な事情を教えてくれた。
「ここはちょうど荒川区と台東区が近接するエリアで、商店街のお店も片側は荒川区、もう片側は台東区と、二つの区にまたがっているんです。坂の上の七面坂方面からは今でも夕やけが見られるので、私はそちらから夕やけを見ています。
『夕やけだんだん』という愛称の場所から夕やけが見られないのは、悲しいかぎりです。建設が進むにつれてマンションは日に日に高くなっていき、圧迫感は否めません。ここまで高いとは思いませんでした。下町風情が残る谷中銀座に塀ができたように感じています」
商店街で古くから営業している精肉店の店員は、あきらめたような表情で次のように話した。
「ずっと前から工事をやってるのに、なんで今頃になって騒いでるんだろうね? 仕方ない。『なるようになる』だよ」
「夕やけが見えない商店街になってしまうのであれば反対だ」という声も
荒川区と台東区の境界に位置し、1990年に一般公募によって愛称が付けられたという「夕やけだんだん」。そもそも、いつ、どのような経緯でマンション建築が始まったのか。ある台東区議は次のように話す。
「商店街の何人かの方から『立ち退きの話が出てる』と聞いたのが、今から3年ほど前だったかと思います。私もマンションの住民説明会に参加していたのですが、私の活動拠点が建設予定地から離れているという理由で、途中からは説明会の通知も来なくなってしまいました」
同区議によれば、計画が立ち上がってから地域住民への説明や折衝などを経て、「当初の予定よりも1階層低くする」「マンションの1階にはお店が入るような造りにする」などの方針で最終的には合意に至ったという。
「マンションに最も隣接しているのが谷中銀座商店街の方たちですが、商店街の総意としては反対の表明はありませんでした。ただ、商店街にとっては『夕やけだんだん』が売りであり、その夕やけが見えなくなってしまうのであれば反対だ、という声を上げていた方もおられます」
さらには、二つの区が隣り合うという地域特有の事情も絡んでいるという。
「台東区の谷中地区では『地区計画』を定めており、建物の高さに制限をかけています。ですがマンション建設地は荒川区であり、台東区で定めた制限にはかかりません。台東区が『地区計画』を策定する際に、荒川区に対して『高さ制限も含めた地区計画を作るほうがいいのではないか』という投げかけはしていました」
結果的に荒川区では地区計画の策定には至らず、マンション建設が始まったという。
「法令があるために行政は縛りがかけられません。荒川区や台東区だけの問題ではなくて、東京都全体で高い建物や再開発の問題を考えなければいけないと思います」
荒川区で長年活動する区議も次のようにため息をつく。
「区は観光スポットの一つに『夕やけだんだん』を挙げており、区としても規制をかけてマンションの高さ制限をすべきではないかというお願いはしました。もっと景観を守ったり、住民の暮らしや問題をしっかり見たりするべきだと私どもは考えています。
建設中のマンションは1戸あたりの価格帯が1億1000万円から2億円を超えるようですが、そういうあり方が本当にいいのでしょうか」

