F1カタールGPの決勝では、マクラーレンのオスカー・ピアストリとランド・ノリスが7周目のセーフティカー中にステイアウトするという戦略が成功せず、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)に勝利をさらわれてしまった。この3者はドライバーズタイトルを争っている上に、フェルスタッペンがノリスとの点差を12に縮めたことはマクラーレンにとって痛手であった。
前戦ラスベガスGPでも車検違反で2台失格になり、ポイントを取りこぼしてしまっていたマクラーレン。彼らはまたしても深刻なエラーをしてしまったのか? motorsport.comの記者陣が考察する。
マクラーレンがフェルスタッペンをタイトル争いに招き入れた——フィリップ・クリーレン
ラスベガスのダブル失格と、カタールの戦略失敗には共通点がある。もちろん色々な事情があったにせよ、“他は正しく対処していた”という点だ。
確かに、セーフティカーが出てもトップを走るマシンは判断が難しい。他の出方が分からないからだ。そのためトップを走るピアストリがピットに入らないという判断はまだ分かるが、3番手を走っていたノリスは前のフェルスタッペンに続いてピットインできたはずだ。
カタールGPはタイヤ1セットあたりの最大周回数が25周となっており、2ストップが必須だった。各チームはあらゆる周回数においてセーフティカーが出た時の対応マニュアルを用意しているものなので、マクラーレンが今回のシナリオを想定できていなかったとしたら驚きだ。
それにトラックポジションが重要であることを踏まえても、ライバルであるフェルスタッペンにフリーストップを与えたことは理解に苦しむ。仮にピアストリがペースの面で秀でていたとしても、フェルスタッペンに追い付き、さらに追い抜くことができたのかは空想の域を出ない。
フェルスタッペンにはそもそも、このタイトル争いに加わる権利はなかったはずだ。にもかかわらず、フェルスタッペンは最終戦まで戦いに残った。その戦いぶりはチャンピオンにふさわしいものである。ノリスやピアストリが敗れるべきだと言っているわけではないが、マクラーレンはマシンの性能を考えれば、ドライバーを過度に失望させている。
タイトル争いの重圧に潰されそうなのはドライバーではなくチーム——ヘイデン・コブ
ラスベガスGPで、スキッドブロックの摩耗によって2台失格となった後、マクラーレンはドライバーに謝罪した。今回のカタールGPでの一件により、チームは2週連続で謝罪することになるだろう。
セーフティカー中に2台のマシン……少なくとも1台のマシンをピットに呼び込まなかったことは、当時から不可解だった。そしてその周回にはほぼ全車がピットに入ったことで、マクラーレンの決断にはより不可解さが増した。フェルスタッペンらは残りの50周で2セットのタイヤを25周ずつ使えばいいわけで、残り1回のピットストップで済む状態になった。
マクラーレンはピットインしなかった理由について、戦略の柔軟性が失われる点を挙げていた。しかし、ステイアウトしたことでトラックポジションを失い、なおかつフェルスタッペンにクリーンエアを与えた上で、戦略上の柔軟性を持たせられたとて……トラックポジションとクリーンエアが重要な今回のレースにおいては理に適った戦略とは言えないだろう。
今シーズン、マクラーレンはドライバーによるミスも見られた。カナダとオースティンでは2台が接触し、ブラジルとバクーではピアストリが単独クラッシュを喫した。しかしタイトル争いのプレッシャー高まる終盤3連戦において、チームがドライバーを失望させている状況にある。
公平性を求めすぎてレースの本質を見失った——オーウェン・ベルウッド
セーフティカー出動時にピットインしなかった判断で、マクラーレンは大きな失敗をした。ほぼ全車が7周目にピットに向かった中、ステイアウトしたピアストリとノリスは不利な状況で優勝争いをする羽目になった。
彼らには膨大なデータがあったはずだし、フェルスタッペンがタイトル争いで猛追している事実を理解していたはず。しかし2台のマシンをコース上に放置したのは判断ミスだと言える。ステイアウト戦略で勝てると確信していないのなら、2台で戦略を分けるべきだった。
全てのチームがとるであろう行動……つまり前を走っているドライバーを優先的にピットに入れるという行動をとっていれば、マクラーレンは優勝できていたはずだ。F1で重要なのはチームのドライバー間の公平よりも、勝利を追求することではないだろうか。
フェルスタッペンのタイトル獲得に現実味が出てきた——オレグ・カルポフ
今目の当たりにしている事態は驚くべきものだ。ここ数ヵ月で、マクラーレンがフェルスタッペンに築いていたポイント差を失っていく様子は……言葉にならないほどだ。
ラスベガスは完全な大惨事だった。そして「軽微な技術違反で失格は重すぎる」という論争が起きたこと自体が、マクラーレンが集中すべき方向を見誤っている証拠なのかもしれない。あのレースで車検に引っかかったのはマクラーレンだけであり、文句を言える相手はいない。つまり自業自得と言えた。
そして同じことがカタールでも起きた。セーフティカー中にピットインしないという判断により、マクラーレンの2台は実質的にライバルより義務ピットストップが1回多い状態となった。またしても、“マクラーレンだけ”がコース上に残った。そして今回も、責任を転嫁できる相手はいない。
ノリスとフェルスタッペンの点差は12しかない。しかもフェルスタッペンのリラックスして自信に満ちている様子を見ると、タイトル争いの本命はノリスではなく彼の方だとさえ感じられる。マクラーレン組織全体に緊張感が走っている。
ドライバー、エンジニア、ストラテジスト……その全員が影響を受けてプレッシャーに対処できていないように見える。
パパイヤ・ルールがチームを混乱させているのか?——ベン・ヴィネル
以前私は、タイトル争いにおいてマクラーレンはピアストリよりもノリスを優遇するのではなく、チャンピオンになる現実的な可能性を持つふたりのドライバーを公平に扱うべきだと主張した。
しかし、とはいっても今回の対応は完全に不要だった。マクラーレンがこの状況への準備ができていなかったのだとしたら、それはチームとして非常に驚くべきことだし、あるいはチーム内での自由な競争を許可する“パパイヤ・ルール”の存在に気づいてパニックになったようにも見える。
たとえそうだったとしても、2台同時にピットインさせてダブルスタックさせることが唯一の合理的な判断と言えた。ノリスがわずかにタイムロスをすることになったとしてもだ。今回のレースでは2位と4位という結果に終わったが、これよりもはるかに悪いリザルトになっていてもおかしくなかったからだ。

