
「鹿島と大きな差が出ましたね」セレッソ香川真司の焦燥感。“万年中位”からいかに脱却すべきか。本気で頂点に立ちたいなら…
アーサー・パパス監督体制で戦う今季、上位躍進を目論みながらも中位に甘んじているセレッソ大阪。それでも8月23日のヴィッセル神戸戦(1-1)以降は、サンフレッチェ広島や柏レイソルら上位陣と戦い、1勝3分けの無敗と勝点を稼いでいた。
その時点で残り8節。リーグ優勝やACL圏内確保は事実上、難しくなっているが、9月23日に行なわれたJ1第31節の鹿島アントラーズ戦に勝って、少しでも順位を上げたかった。
「このクラブのことを考えた時、今後、どう優勝争いをしていくか。シーズン終盤でもありますし、選手がどこまでできるかしっかりと試さないといけなかった」と語るパパス監督は、前節の柏戦からスタメン11人を全員入れ替えて鹿島戦に臨んだ。香川真司や田中駿汰、ルーカス・フェルナンデスら主力級をベンチに置いて、フレッシュな面々で戦った。
怪我からの復帰戦だった髙橋仁胡ら試合勘が不足気味の選手も何人かいて、前半はギクシャク感も見て取れたが、鹿島もピリッとせず、26分に本間至恩がPKを奪取。これをヴィトール・ブエノが決めて、幸先良く先制点を手に入れた。
だが、30節時点の総失点がワースト5位の42失点というC大阪は、守備がなかなか安定しない。案の定、31分に知念慶の同点弾を浴び、1-1で試合を折り返した。
そして後半に入り、鹿島が鈴木優磨ら主力級を投入してくると、アッサリと2点目を献上してしまう。53分、植田直通のロングパスを西尾隆矢が処理し切れず、いとも簡単にレオ・セアラの裏抜けを許し、そのまま失点した。
その後、香川らが入ったものの、今度は68分に右サイドから崩され、松村優太の得点で3失点目。悪い流れを断ち切ることができず、1-3の逆転負けを喫した。
「2失点目のあとは、自分たちがやりたい形が出せなかった。優勝争いをするチームと中位にいるチームの違いが出てしまった」と指揮官は試合後の会見で苦渋の表情を浮かべた。ミックスゾーンに現われた香川も「いつも同じようなことの繰り返し。(自身がC大阪に復帰してからの)3年間、ずっと一緒ですよ」と怒りをにじませた。
確かに香川が古巣復帰してからの3年間、C大阪はシーズン途中まで上位に顔を出しているのに、夏場以降、失速して最終的に中位でフィニッシュするという悪循環を繰り返している。2023年の9位、2024年の10位、今季も31節時点で10位という順位がそれを物語っている。
「残留争いに巻き込まれていないことは評価できる」という見方もあるかもしれないが、“万年中位”の状態は、パパス監督も香川も他のメンバーも望んでいない。
「セレッソには勝者のメンタリティが足りない」と36歳の大ベテランは口が酸っぱくなるほど言い続けてきたが、それを本気で身につけようと思うなら、現場だけで取り組んでもダメなのかもしれない。
パパス監督も「クラブがどういうビジョンを持って、何をするかということも関わってくる」と言及していたが、タイトルを取るためになりふり構わず突き進むのか、見る者を楽しませるサッカーを志向するのか。そのあたりをハッキリさせるべき時期に来ているのは確かだろう。
そのためにも、クラブの経営・強化基盤を含めて今一度、見直す必要があるのかもしれない。今季の流れを見ても、チーム始動時は森島寛晃社長・梶野智チーム統括部長の二頭体制で強化が推し進められていた。パパス監督の招聘、ラファエル・ハットンやチアゴ・アンドラーデら助っ人の補強も彼らが中心となって行なわれた。
だが、4月1日から森島社長が会長となり、日置貴之新社長が就任。同月には梶野氏が突如として退任し、その下にいた野口裕司氏がチーム統括部長代行として強化にあたるようになり、微妙な変化が起きたところはあったはずだ。
もちろん現体制でも、チームのテコ入れを図るべく、ディオン・クールズや吉野恭平、井上黎生人、大畑歩夢ら実力者を補強。戦力アップに努めてきたが、安定感ある戦い、上位浮上には至っていない。課題だった失点も減っておらず、“万年中位”の空気感は今も漂い続けている。
「選手は目の前の試合に向けて一生懸命やるだけ。それはプロとして当然で、目標とか方向性はクラブが道筋を示すこと。その部分で今回は鹿島と大きな差が出ましたね。悔しいけど、これは認めざるを得ない結果」と、かつてドルトムントやマンチェスター・ユナイテッドでタイトルを取ってきた香川は語気を強めた。やはりクラブ全体が一丸となって、1つの目標を愚直に追い求めるような環境作りが急務なのだろう。
もともとC大阪はアットホームなクラブで、ファン・サポーターも含めて常に温かい。それが大きな魅力でもあるし、筆者も大好きだ。けれども、本気で頂点に立とうと思うなら、レオ・セアラを強奪した鹿島のような厳しさ、貪欲さを持つことも重要だろう。
C大阪にタイトルをもたらそうと戻ってきた香川の焦燥感を今一度、関わるすべての人たちで共有して、前向きな方向に進んでほしい。とにかく今は2025年の残り7試合を大事にするべきだ。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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