F1は来シーズンから、車体・パワーユニット共に刷新された新世代マシンが導入される。現行のグランドエフェクトカーは今季限りとなるが、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)を含めた複数のドライバーは、現行マシンで走れなくなることは惜しくないと考えている。
その理由のひとつには、グランドエフェクトカーが重く、大きく、扱いにくく、特に低速コーナーで軽快さを欠くということがある。しかしそれ以上に大きな理由となっているのが身体的な負担だ。
フロアで大きなダウンフォースを発生させる現行マシンでは、その車両特性を最大限活かすためにも、車高をできる限り低くして、なおかつサスペンションを硬くしてその車高を維持することになる。現在ではポーパシングと呼ばれる車両の上下動は見られなくなったが、それでも足回りの硬いマシンはドライバーの身体にダメージを与えているようだ。
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は、「現行世代のマシンは恋しくない」と語ったが、フェルスタッペンもラスベガスGPでオランダメディアの取材に応えた際に同様の見解を示した。
「この数年間、全く快適ではなかった。背中はボロボロだし、足もいつも痛い」
「身体的にはベストとは程遠い。検査してみると状態はよろしくない。モトクロスと比べたら文句は言えないけど、これまでのことを考えたら、2015〜2016年くらいのマシンに戻りたいね」
こういったドライバーたちのコメントによって、FIAが現行マシンの身体的負荷を軽視していたのではないかという疑問が浮かび上がったが、FIAシングルシーター部門のディレクターを務めるニコラス・トンバジスは、motorsport.comの取材に次のように語った。
「主な問題は、車高が極端に低く、硬いマシンで走っているということで、これは現行マシンの設計時には想定されていなかったものだ」
ただトンバジス曰く、来季のマシンではこういった問題は改善される見込みだという。
「来年のマシンも、空力の方向性としては依然として低車高を好むが、その度合いは弱まる。車高が空力に与える影響が小さくなるため、最適車高は少し高くなり、メカニカルグリップを確保するために(サスペンション設定も)より柔らかくなるはずだ」
とはいえ、FIAは今後の見通しについて断言することを避けている。というのも、2022年に現行マシンが投入された当初のポーパシングやバウンシングといった問題も想定外のものだったからだ。
「これは明らかに、我々の予測に過ぎない」とトンバジスは言う。
「実際に車両を走らせて確認しているわけではないが、現時点で見られる兆候からは、多少改善されると考えられる。といっても、一度マシンを走らせれば確実なことが分かるだろう」
メルセデスの副技術責任者のシモーネ・レスタは、2022年に各チームがポーパシングを急速に解決させた例を挙げ、チーム側も予期せぬ問題への適応力が向上していると述べた。
「レギュレーションが変更される時はいつでも、問題は初めの頃に最も明確かつ強烈に顕在化する。2022年には多くのドライバーがポーパシングに悩まされ、不満を述べていた」
「しかしレギュレーションのサイクルでは毎回、年月が経てばチームが現象を理解し対処方法を学ぶ。すると問題は自然と消えていく」
「したがって毎回のレギュレーションサイクルにおいて、常に多くの学びがある。とてもエキサイティングだ。チームはまた問題を解決していくだろう」

