
中国のbilibiliにて総再生数1億回超えのアニメ「破産富豪 The Richest Man in GAME」の日本語吹き替え版が、毎週水曜25時15分からフジテレビ「B8station」にて現在放送中。WEBザテレビジョンでは、本作のカギを握る謎のキャラクター・リッチェストを演じる福山潤にインタビューを実施。役作りに関してのエピソードや、自身が主催したイベントについて話を伺った。
■正体がわからないからこそ「どんな展開になっても問題ないような役作りを」
――「破産富豪 The Richest Man in GAME」に出演が決まった時の気持ちを教えてください。
最初に作品タイトルを聞いた時は、没落していく富豪の話なのかと思っていましたし、赤字になると得をする……というゲームのようなシステムなど、なかなか先の読めない作品だと思いました。ペイ・チェンが行っているゲームのような財産変換システムも、決して誰かと戦っているわけではない気がするので、これまでにありそうでなかった作品だというのは感じていましたね。
――自身が演じる、リッチェストに対してのイメージは?
彼が黒幕なのか、ただのシステムなのか、まだよくわからない状態なので、どのような展開になっても問題ないような役作りをしていきたいとは当初から思っていました。
あと正体はわからないけど、「ストーリーの進行上、ちょっと出てきてくれたらうれしい」と思っていただきたいので、元のお芝居を土台にしつつも、楽しいと思ったことを入れながら収録させていただきました。

――リッチェストを演じる上で意識したことや、難しかったことはありますか?
字幕によるフォローはあると思うのですが、システムの説明部分は視聴者が理解しやすいよう心がけていました。物語の展開がかなりハイテンポなので、喋っていてわかりづらい音にならないよう意識していましたね。
難しかったところは、たくさんアドリブを入れたいと思っても、アニメの尺的に難しかったことですね。こういうことをしたら面白そうだけど、どうしても喋りすぎてしまう……といったことは、音響監督とやり取りしながら調整していました。第1話でリッチェストが登場する場面などは、こちらからアイデアを出して、新たに取り入れさせていただいたのを覚えています。
――福山さんが思う、本作の魅力を教えてください。
赤字を出そうとしているのに利益が出てしまい、ペイ・チェンがお金を得られないというまさかの展開に加え、(仲村宗悟が演じる)ルアン・グアンジェンが涙を流すくらい感動していたりと派手なリアクションが続いているので、コメディテイストのアニメが好きな方にとっても楽しめるものになっているんじゃないかな。
あと杉田(智和)さんが演じる謎の人物の正体や、物語がどう着地するのかも気になっています。正直コメディなので綺麗に終わらなくても良いと思っているんですよ。この作品の結末がどう向かっていくのかという点は、僕たちも楽しみにしながら演じていました。

■「自発的に見られがち」自身の人物像について語る
――リッチェストはペイ・チェンとの掛け合いが多いキャラクターだと思います。ペイ・チェンを演じる小野賢章さんとの印象的なエピソードは?
僕は今まで、彼(小野賢章)がコミカルな役を演じている印象があまりなくて。どちらかというと影をまとった青年とか、繊細なキャラを演じている時に共演することが多かったんですよ。なのでペイ・チェンのように口数が多くて、いろんな表情を見せる小野賢章は、この近年で初めて見ました。
彼の大変さを知りながらも、僕はずっとニヤニヤしながら「大変な目にあっているな」とイジっていました(笑)。

――リッチェストはペイ・チェンに資金提供を行うなど、助手的な立ち位置のキャラクターだと思います。福山さん自身はリッチェストのようにサポートするのと、自発的に行動するのではどちらが得意ですか?
僕はどちらかというと“サポート”かも知れないです。割と自発的な考えに見られがちなんですけど、僕は追い込まれたらやる側なので、追い込まれない限りはあまり行動しないんですよ。
あと声優としての自分は“クリエイター”ではなく“アレンジャー”で、収録中の立ち回りやアイデア出しが得意な部類だと思っているんですよね。そう考えると僕はサポート側だと感じています。社内には僕以外にもう1人トップ(立花慎之介)がいて、彼の方が自発的なんですよ。
――2人でちょうどよくバランスが取れているということですね。
そうですね。僕はブレーキ役であり「石橋を叩いて渡る」タイプの人間なので、安全かつ人に迷惑をかけないとわかったら思いっきり暴れるというタイプで。声優としての活動だけを見たら、人物像は逆だと思われるんですけど(笑)。


■「今年は特殊な年だった」断髪式、一人朗読劇を経て思うこと
――今年は「福山潤断髪式」や「福山潤一人朗読劇『作家、46歳、独身』」など、福山さんにとって挑戦の多い年だったと思います。
実は同僚からも、いつも変なことをやっている人のように見られるんですけど、「皆がやっていないことをやろう」という考えは全くないんですよ。
断髪式に関しては、長い髪を切るのに理由が必要だと思っていたので、今年切ることは前々から決めていました。これまでイベントを主催する機会がなかったので、「これを機に主催でイベントをやろう」「いつもお世話になっている美容師さんに切ってもらおう」と、トントン拍子に話が進んで、結果的にこうなったという感じですね。
朗読劇に関しても、今から2年前に「朗読劇を1人でやりたい」とずっと考えていて。でもやれるうちにやらないと、どうしても身体が言うことを聞かなくなってくると思い、企画を立てて開催しました。その2つがたまたま合致しただけなんですよ。
――「他の方がやっていないことをしたい」というわけではなく、「皆やっているだろう」と思っていたということですね。
そうなんです。なので「他の人がやってもいいのに」と思っています。今後も朗読劇は企画していきたいんですけど、もう1回くらいは1人でやってみたいなという考えはありますね。
仕事を継続しながら90分の1人芝居を10公演できたのは、自分の中でものすごく自信に繋がったんですよね。体力としてはまだまだいけるなと実感できたし、今後の表現活動の後押しになったので、そういった意味でも今年は特殊な年でした。

――福山さんは「体験すること」を大切にしている印象があります。今後やってみたいことがあれば教えてください。
本当は50歳を過ぎてからやりたいと思っていたことを、ひょんなことから今年やることになりました。大変でしたがメッチャ面白かったので、それは継続してやっていきたいなと感じましたね。
あと僕はまだまだ体験していないことがたくさんあって。それこそ声優としては、10代の少年から壮年までを一貫して自分1人でやりたいという思いはあるんですよ。そういったご縁があった時のために、今から準備していきたいですね。
◆取材・文=渡辺美咲


