これまでにツアー12勝を挙げ、最高峰のテニス四大大会でも2度の準優勝を経験している男子元世界ランキング3位のステファノス・チチパス(ギリシャ/27歳/現34位)。しかし今季の彼はコート上で苦しい時間が続いた。3月の「ドバイ選手権」(ハード/ATP500)を制してトップ10復帰を果たしたものの、結果的にこれが今季唯一のタイトル。四大大会では3回戦進出がゼロと、シーズンを通してトップ3にいた頃の爆発力や安定感は影を潜め、ランキングも下降線をたどった。
チチパスと言えば、今年5月に元世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア/現4位)を約5年(19年6月~昨年3月)にわたって指導したゴラン・イバニセビッチ氏(クロアチア/54歳)をチームに招聘したことが大きな話題となったが、この“注目タッグ”は「テラ・ウォルトマン・オープン」(ATP500)と「ウインブルドン」(四大大会)の芝ツアー2大会を経て、わずか1カ月であっけなく終焉。その際、イバニセビッチ氏はチチパスを次のように糾弾していた。
「彼が状況改善のために何かしているかというと、何もしていない。“こうしたい、ああしたい”と言うばかりで、実際の進歩は見られない。背中の問題も、本来は自分で解決策を見出さなければならない。正直、僕は彼の現状にショックを受けている。あんなに準備不足な選手は人生で初めて見た」
ロシアメディア『Sports.RU』によると、元々チチパスがイバニセビッチ氏とコーチ契約を結んだのは、同選手の母であるユリアさんの提案がきっかけだった。サービスの改善をはじめとしたイバニセビッチ氏のジョコビッチに対する献身ぶりに心惹かれ、再起を期すチチパスに同氏とのタッグ結成を強く勧めたとのことだ。
しかし実際に仕事をしてみてわかったのは、かつてイバニセビッチ氏とジョコビッチとの間にあった信頼関係は極めて特別なもので、他の選手と簡単に再現できるものではなかったということだった。ユリアさんは息子と同氏の契約が短命に終わったことに「大きな責任」を感じており、「誤った選択だった」と後悔の念も口にしている。
その後チチパスは関係悪化が報じられていた元コーチ兼父親のアポストロス氏を再びチームに招聘。ユリアさんは両者の再タッグ結成に「満足している」と言うが、冒頭の通り息子の苦境は続いている。しかも先日には毎度お騒がせの父親が犯したスピード違反が原因でチチパスの運転免許の返上を余儀なくされるというトラブルにも見舞われ、まさに“踏んだり蹴ったり”の状況だ。
その一方で、ユリアさんいわく「良い兆し」も見え始めている。息子が長らく抱えている背中のケガは幸い深刻ではないようで、「手術なしで治療できた」とのこと。今は同箇所の痛みはないものの、大事を取って「コンディション維持を目的としたエクササイズ」のみにとどめており、本格的なトレーニングの再開は12月以降になると締めくくった。
文●中村光佑
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