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【北中米W杯出場国紹介|第7回:ウルグアイ】伝統と実力は十分だが未知数な部分も。“奇才”の戦術が成熟するかどうか

【北中米W杯出場国紹介|第7回:ウルグアイ】伝統と実力は十分だが未知数な部分も。“奇才”の戦術が成熟するかどうか


 南米屈指の実力国であるウルグアイには、サッカー史に刻まれた特別な重みがある。ワールドカップの第1回大会の開催国として優勝し、ブラジルで行なわれた第4回大会でも世界の頂点に立った。

 その歴史は今も国の誇りであり、領土や人口から見れば小国に類するウルグアイが、国際舞台で示してきた競争力の象徴でもある。長らく“古豪”と呼ばれ、2010年の南アフリカ大会でディエゴ・フォルランを擁してベスト4に進出。現代サッカーの強豪として再評価されるきっかけを掴んだ。

 そうした流れは継続しているが、前回のカタール大会はグループステージで苦戦した。ポルトガルとの大一番に敗れ、韓国に総得点で上回られる形で決勝トーナメント進出を逃したことは、チームの課題をはっきりとさせる結果となった。ウルグアイの約10倍の人口を持つ隣国アルゼンチンのように、タレントが溢れ出てくる国ではない。北中米W杯での躍進には何か大きなチャレンジが必要だ。

 その役割を託されたのが、サッカー界きっての“奇才”として知られるアルゼンチン人のマルセロ・ビエルサ監督だ。緻密な戦術設計と強度の高いサッカーで知られる指揮官で、しばしばエキセントリックな振る舞いが話題になるが、明確な戦術理論をベースに、選手の能力を引き出す手腕には定評がある。

 ブラジルやアルゼンチンにないウルグアイの強みは、アンダーカテゴリーの育成環境から築いたコミュニティの結束であり、国民の期待も目に見える形で選手に伝わる。だからこそ、ビエルサ監督の厳しさもプラスに向いていく期待が高い。
 
 南米予選は4位で通過。アルゼンチン、エクアドル、コロンビアに続く成績だったが、チームの潜在力は十分にある。本大会で戦術と選手のキャラクターが噛み合えば、大きな躍進を遂げる可能性は確かに存在する。

 ビエルサ監督は固定のシステムにこだわるタイプではないが、ウルグアイでは4-3-3をベースに、前線からのプレッシングと攻撃時の流動性を重視する。中盤はチーム最大の武器で、キャプテンのフェデリコ・バルベルデ(レアル・マドリー)を軸に、ロドリゴ・ベンタンクール(トッテナム)、ジョルジアン・デ・アラスカエタ(フラメンゴ)が構成する三角形は、いかなる強豪にも優位に立てるポテンシャルがある。

 ベンタンクールのバランス感覚、バルベルデの強度と推進力、デ・アラスカエタの創造性と決定力。それぞれの個性が噛み合い、多様性を生み出す。ここにマヌエル・ウガルテ(マンチェスター・ユナイテッド)を加える選択肢もある。守備強度を高めたい試合では、ウガルテを起用した構成になる可能性も高い。相手に応じて柔軟に中盤の形を変えられる点は、ビエルサのサッカーを支える重要なピースだ。
 
 一方で前線は明確な悩みを抱えている。エディンソン・カバーニやルイス・スアレスという絶対的エースが抜けた後、固定された主軸が定まらない状況が続いている。ワールドクラスと評価される選手が不在で、大手ブックメーカーなどでウルグアイの評価が控えめな理由もそこにあるだろう。

 元リバプールのダルウィン・ヌニェス(アル・ヒラル)は南米予選で5得点を記録したが、本大会で明確な“軸”として起用されるかどうかは流動的だ。このポジションで新たな主役が出てくるかどうかは、ウルグアイの大会成績を左右する大きなポイントになる。

 守備陣では、ロナルド・アラウホ(バルセロナ)が最終ラインを統率し、ホセ・マリア・ヒメネス(アトレティコ・マドリー)の経験値も心強い。機動力と展開力を備える左利きのマティアス・オリベラ(ナポリ)はサイドバックとセンターバックをこなし、システム変更にも対応できる。ディフェンスラインの個の力に関してはポット1の強豪国と比べても遜色はない。
 
 11月にはW杯開催国とのテストマッチに臨み、メキシコとは0-0で引き分けたものの、アメリカ戦ではベンタンクールの退場も響き、1-5で大敗した。本番までの時間を考えれば、この時期に課題を突きつけられるのは決して悪いことではない。タレントのリソースがそこまで潤沢ではないなかで、ビエルサ監督が抽選結果も踏まえながら、どういうチョイスをして戦術的な道筋を立てていくのか。

 ウルグアイは伝統と実力の両方を備えながら、現時点では“未知数”の部分が多いチームだ。中盤を軸に高いパフォーマンスを発揮できれば強豪国とも互角に戦える一方、前線の安定感や試合運びには改善の余地がある。

 ビエルサのサッカーが本大会のタイミングで成熟するかどうか。その一点が、ウルグアイが再び世界の上位に食い込むか、それとも静かに大会を終えるかを分ける鍵になりそうだ。

文●河治良幸

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配信元: SOCCER DIGEST Web

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