
ケープペンギン(学名:Spheniscus demersus)は、アフリカ大陸で唯一見ることのできるペンギンです。
その愛らしい姿とは裏腹に、いま南アフリカ沿岸の個体群が深刻な危機に直面しています。
南アフリカ森林・漁業・環境省(DFFE)の研究チームは、2004年にダッセン島とロベン島で繁殖していた成鳥の約95%が、その後8年間で姿を消したことを報告し、その主因を換羽期に起きた飢餓と結論づけました。
研究成果は2025年12月4日付の『Ostrich: Journal of African Ornithology』に掲載されました。
目次
- 南アフリカ沖のケープペンギンがわずか8年で95%減少
- どうしてケープペンギンたちは餓死したのか
南アフリカ沖のケープペンギンがわずか8年で95%減少
ケープペンギン(またはアフリカペンギン)は南アフリカからナミビア沿岸にかけて生息し、イワシやカタクチイワシなどの小魚を中心に採餌する中型のペンギンです。
繁殖コロニーでは岩の陰や砂地に巣を作り、雛を育てるために日々多くの餌を海から運んできます。
しかし、このペンギンには生理的に避けられない重大な弱点があります。
それが年に一度おこなわれる換羽で、古い羽をすべて失う間は防水性がなくなるため、約21日間は海に入れず完全な断食状態になります。
この期間を乗り切るためには、その前にしっかりと脂肪を蓄え、換羽後も衰えた筋肉を早く回復させるため十分な餌をすぐに確保する必要があります。
研究チームは、「換羽前に体力を蓄えられなかったペンギンは断食を生き延びることができず、換羽後に餌が見つからない場合も同様に弱って死亡してしまう」と説明しています。
今回の研究では1995年から2015年までの20年間にわたって、ダッセン島とロベン島の2つの主要な繁殖地で繁殖ペアの数や換羽に戻ってきた成鳥の数が継続的に記録されました。
ケープペンギンは通常、繁殖したコロニーに戻って換羽する習性があるため、換羽個体の数は生き残った成鳥の数を示す重要な指標です。
記録を分析すると、2004年以降は換羽のために戻ってこない成鳥が急激に増加し、2004年に繁殖した成鳥の約95%が8年以内に姿を消したことが明らかになりました。
約6万2000羽の繁殖個体が姿を消したのです。
また個体に標識をつけて再捕する生存率調査でも、同じ傾向が確認されました。
研究者たちは、換羽前後に十分な脂肪を蓄えられなかった個体が海で餌を確保できず、餓死に至ったと結論づけています。
では、どうしてケープペンギンたちは餌を確保できなかったのでしょうか。
どうしてケープペンギンたちは餓死したのか
では、なぜ2004年以降に換羽期を乗り越えるだけの体力を蓄えられない個体が急増したのでしょうか。
研究チームが示した最大の要因は、ケープペンギンが主要な餌として依存しているイワシ資源の崩壊です。
2004年から2011年の間、西岸におけるイワシの資源量はほぼ毎年、最大値の25%以下という極端に低い水準で推移していました。
イワシが減少した背景には海水温や塩分の変化があり、これによってイワシの産卵場が長年の主要地であった西岸から南岸へ移動していました。
その一方で漁業の中心は依然として西岸にとどまり、産卵場の変化に漁獲構造が追いつかなかったことで資源の再生産がさらに妨げられました。
研究者たちは、この影響はダッセン島とロベン島に限られず、南アフリカ全域のコロニーで同様の減少傾向が確認されていることも指摘しています。
では、絶滅の危機にあるこのペンギンを守るためには何が必要なのでしょうか。
研究チームは、ケープペンギンの回復にはイワシ資源の再生が不可欠であり、若いイワシの死亡率を下げる漁業管理が重要だと述べています。
また、主要繁殖地周辺を禁漁区として保護し、人工巣の設置や救護活動などによって直接的にペンギンを支援する取り組みも進められています。
このようにケープペンギンの危機は、海洋環境の変化と人間活動の影響がいかに密接に結びついているかを示す象徴的な事例といえます。
参考文献
Penguins likely starved to death en masse: Populations off South Africa may have fallen 95% in just 8 years
https://phys.org/news/2025-12-penguins-starved-death-en-masse.html
元論文
High adult mortality of African Penguins Spheniscus demersus in South Africa after 2004 was likely caused by starvation
https://doi.org/10.2989/00306525.2025.2568382
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部

