2016年から2018年の3連覇から7年あまり。マツダスタジアムを真っ赤に染めた頃の勢いとは裏腹に、広島カープは苦しいシーズンが続いている。ここ7年間でBクラス6度。かつての強さを知るファンほど、現状を嘆いている。よく指摘されるのは「資金力の差」だ。
カープは12球団で唯一、親会社を持たない独立採算のチームだ。黒字を守る必要があるため俸総額には自然と制約が生まれ、1億円プレーヤーは限られる。かつて「たる募金」で苦境を乗り越えた球団らしく、今も堅実な運営が続いている。
ただ、そのやり方だけでは限界が見えてきた。象徴的だったのが、西川龍馬のFA移籍だ。今季の契約更改では、推定3億円から4億円へ増額。九里亜蓮もオリックスで11勝を挙げた。もし広島に残っていれば…。
こうした流れの中で「親会社がもしダイソーなら…」という議論がにわかに熱を帯びている。なぜ100円均一ショップを全国展開するダイソーが俎上に載るのか。ダイソーを運営する大創産業は広島県東広島市に本社を置き、国内外に5000店以上を構える巨大企業。資金力という点では申し分ない存在なのだ。
「ダイソーが親会社ならFA流出は減る」
「大型補強にも踏み込めるようになる」
そんな期待が高まるのは、現在の運営方針に対する不満の裏返しでもある。親会社が赤字を吸収できる他球団とは違い、カープは自力で黒字を維持しなければならない。どうしても補強に慎重になり、戦力面で後れを取りやすい構造だ。
とはいえ、独立採算で歩んできた歴史には、確かな意味がある。球団は戦後の広島復興を象徴する存在として生まれ、多くの市民や地元企業に支えられてきた。こうした背景が「市民球団らしさ」を形づくり、地域に根づいた文化とファンの一体感を育ててきた。
育成力の高さや、生え抜き中心のチームづくりもカープの魅力だ。グッズ売り上げが好調で黒字を維持できているのは、熱心なファンあってこそだろう。
もしダイソーのような企業がバックにつけば、補強の幅は広がるだろうが、その一方で「カープらしさ」をどう維持するのかという課題が生まれる。資金力と伝統のどちらを優先するか。簡単には割り切れない。
球団創設から75年、カープは地域とともに歩んできた。その歴史と姿勢は大きな魅力でもある。身売りという話が現実的ではないのは、こうした背景があるからだ。
限られた予算の中でも、戦力を底上げする工夫はできる。育成を柱に据えながら、補強が必要な場面ではしっかり動く。その前向きな姿勢を、松田元オーナーに期待したい。
(ケン高田)

