
チュニジアは“格下扱い”できない難敵だ。3年前に3失点完敗。欧州の国よりやりにくいかもしれない【北中米W杯】
北中米ワールドカップの組分け抽選会が行なわれ、日本はグループFでオランダ、チュニジア、欧州プレーオフB(ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニア)の勝者と同組となった。本稿ではグループステージ第2戦で対戦するチュニジアを考察する。
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チュニジア代表は「カルタゴのワシ」という異名にふさわしく、粘り強く、したたかな戦いぶりを見せる。現在のFIFAランキングは40位と突出して高いわけではないが、組織力はアフリカ屈指であり、実際、アフリカ予選は10試合で9勝1分け、22得点・無失点という驚異的な成績で突破した。11月にはフランスのリールでフランスに挑み、1-1で引き分けている。
予選突破を決めたアウェーの赤道ギニア戦は、キャプテンのフェルジャニ・サッシ(アル・ドゥハイル)も「最も苦しかった」と認める試合だった。相手が深く構え、中央のブロックを固められて、なかなかゴールをこじ開けられない。カウンターのリスクにも向き合う形だったが、最後の最後で交代出場のFWフィラス・シャウア(クラブ・アフリカン)が突破口を開き、モハメド・アリ・ベン・ロムダン(アル・アハリ)が決勝点をねじ込んだ。
前線に君臨するのがイッサム・ジェバリ(ガンバ大阪)だ。独特のキープ力と、ボールの引き出し方の巧さは、相手にすると実に厄介だろう。中盤を見渡すとサッシ、ベン・ロムダン、そして守備と組み立ての質を兼備するエリス・スキリ(フランクフルト)が並び、中盤から違いを作るハンニバル・メジブリ(バーンリー)が絡む。
この顔ぶれは、日本と対戦した2022年(3-0でチュニジアが勝利)、2023年(2-0で日本が勝利)の対戦時から大きく変わっていないため、日本にとっては“既知の強敵たちがさらに成熟した”構図になる。
指揮を執るサミ・トラベルシ監督は2025年2月に就任したばかりだが、アフリカ予選で6連勝と結果を残しており、選手からの信頼は厚そうだ。システムは4-1-4-1、4-2-3-1、5-3-2と幅広く、相手や試合状況で柔軟に使い分けてくる。
たとえばリードした後半は5-3-2気味にスライドし、中央の守備密度を上げるなど、展開に応じてラインの高さも積極的に調整する。
試合中に形を変えることも珍しくなく、相手が構え直す前にイニシアチブを奪う狙いが見える。本大会でもオランダ、日本、欧州プレーオフ2(ポーランド、ウクライナ、スウェーデン、アルバニア)の勝者と対戦相手に応じて、システムチェンジや戦術の使い分けをしてくるかもしれない。選手交代も臨機応変で、ゲームチェンジャーとなる選手たちは彼ら個人が持つネームバリュー以上に相手を苦しめるだろう。
後方の安定感は特に優れている。センターバックのモンタサール・タルビ(ロリアン)とダイラン・ブロン(セルベット)は、強さと読みを兼ね備えた“いかにもアフリカの堅守”というタイプで、空中戦や対人で日本が苦戦する可能性は高い。GKアイメン・ダーメン(CSスファクシャン)は守備範囲が広く、前へ出る判断も速い。最終ラインとGKの連動性はアフリカ勢の中でも整っている。
12月にはアラブカップに国内組とアフリカ・中東の選手が参加しており、ここは控え組の生存競争の場にもなっている。主力から控えまで層を整えようという意図が強く、監督の色が短期間で浸透しつつある印象だ。
日本との対戦成績は1勝5敗と大きく負け越しているが、先述のとおり、過去3年で二度の対戦経験がある。互いに相手の戦法をある程度、把握しているはずで、勝敗はディテールの部分に大きく左右されるだろう。
“妙に崩れない守備”と“少しの隙を逃さない攻撃”。それが今のチュニジアの骨格だ。日本にとっては決して格下扱いはできない難敵で、とにかく戦い方が粘っこい分、ポット1のオランダやもうひとつの欧州の国よりやりにくいかもしれない。
しかし、勝利できればおそらく決勝トーナメント進出に大きく近づくだけでなく、そこから先の戦いの弾みになるだろう。
文●河治良幸
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