情報バラエティアナとスポーツ実況アナの違い
――熊崎アナも南波アナも、スポーツ実況をメインとするアナウンサーですよね。
そうです。スポーツ実況アナって基本的に顔出しをしないので、「好きなアナウンサーランキング」に入ること自体が珍しいんです。実況畑でやっていくって、声は知られても顔は知られる仕事ではなく、自分の素のキャラクターを出すチャンスはほぼないわけですから。
でも、これまでスポーツ中心に着実にステップアップしてきた南波さんが、ここにきてこれだけ人気者になるなんて、もうそういう時代じゃないことを証明したんでしょうね。
――情報・バラエティをやるのか、スポーツ実況をやるのかはどこで分かれるんですか?
僕の時は入社時に自分で選べたんです。僕はスポーツ観戦が好きだったのでスポーツ実況をやってみたいと志願しました。
――この道を選んでキツイと感じたことはありますか?
挫けるというほどではないですが、スポーツ実況はデビューまで時間がかかるんです。新人は2~3年くらい、放送にのらないけど現場に行ってひたすら修行する期間があります。
一方で、もう退社しましたが、情報バラエティにいった国山ハセンは2年目から「アッコにおまかせ!」にレギュラー出演していました。
仲が良い同期が華々しいところで活躍していて、こっちはひたすら野球場や競馬場に行っては実況の練習をするというのは、少しもどかしさがありましたね。
――今の新人アナは状況が違うんですか?
最近はみんないろんな仕事を担当していこうという方針に変わりつつあります。僕もその方針のおかげでありがたいことに「ラヴィット!」や「ひるおび」、ラジオ番組の「アフター6ジャンクション2」などに呼ばれるようになったわけですし。以前の私には想像もつかなかった仕事にチャレンジさせてもらっていると、ここ1年で特に感じます。
上村(彩子)アナ、日比(麻音子)アナ、篠原(梨菜)アナ、佐々木(舞音)アナ、吉村(恵里子)アナが世界陸上やクイーンズ駅伝で実況を担当するなど、これからは女性のスポーツ実況も当たり前になっていくと思います。
もちろん、我々の時と同じように時間をかけてトレーニングする期間が必要だとは思いますが、男女関係なくというほうが健全ですよね。
ランクインメンバーはアベンジャーズ
――そのトレーニング期間に努力を怠らなかった熊崎アナは現在、オリンピックや世界陸上という大舞台での実況も担当しています。思い出深い仕事はありますか?
2022年にあった冬の北京オリンピックでしょうか。新競技のフリースタイルスキーのビッグエアを担当することになったのですが、諸事情により直前で上司から「(解説者なしで)ひとりでやってくれ」と。
――新競技なのに地獄のようなシチュエーションですね……。
でももうやるしかないので、もともとかなり勉強をしていましたが、そうと決まった瞬間から人間ってここまで仕事に入り込めるのかってくらい集中して準備しました。振り返っていろいろ反省点はありますが、あのときの自分の中ではベストの仕事ができたのではないかと思ってます。
――先ほどお名前が出ましたが、ハセンさんは退社されて現在は映像プロデューサーなど様々な分野で活躍されてます。熊崎アナはフリー願望はあるんですか?
僕はありません。というのも、オリンピックや世界陸上の実況はフリーが指名されることはなく、局アナじゃないとできないんです。TBSの力で大舞台の実況ができているわけですから、今の環境を手放すのはもったいないじゃないですか。
――「ラヴィット!」に出演する機会は増えてはいるけど、あくまで軸足はスポーツ実況と。
何年やっても実況でスポーツ中継をつくりあげる楽しみは変わりませんからね。とはいっても、知名度はあったほうがスポーツ選手の取材をするうえで絶対プラスです。
プロ野球選手は「ラヴィット!」を見てから球場入りする選手がけっこういますし、陸上の長距離ランナーも朝5時の朝練が終わった後に見てくださる方が多いんです。「『ラヴィット!』、見てますよ」と選手や監督から言われることもありますし、それをきっかけにチーム事情の話を聞いたりと懐に食い込めることもあります。
なので、今後も表に出る仕事は大事にしたいですね。
――ではやっぱり「好きな男性アナウンサーランキング」に入るに越したことはないですね! 今年は赤荻アナ以上の順位を狙う?
そういう記事にしやすいコメントが言えればいいんでしょうけど、マジで無理です。だって去年のメンツ見てください。アナウンサー界のアベンジャーズですよ(笑)。僕は地道に細々とやっていきます!
取材・文/武松佑季
撮影/下城英悟

