自民党と日本維新の会が衆院議員の定数削減に向けた関連法案をまとめることで合意した。1年以内に定数465の1割削減を目指す。1年以内に結論を出せなかった場合は、選挙区25、比例20をベースに自動的に1割削減するという「自動削減条項」を埋め込んだ。高市早苗総理が維新の強い意向を受け入れた形だ。これに政治ジャーナリストの長島重治氏は「維新が強引にねじ込んだ『時限爆弾』は1年後に容赦なく高市総理と維新を襲うことになるだろう」と指摘する。
「うちは企業献金で自民に譲ったんや。そこを汲んでもらわんと吉村や藤田がもたん」
12月1日。総理大臣官邸では、マリンブルーのジャケット姿の高市早苗総理と濃紺のスーツ姿の吉村洋文・日本維新の会代表(大阪府知事)が笑顔で向き合った。定数削減での合意がまとまったからだ。
トップ二人の笑顔とは裏腹に、数日前まで両党は連立離脱の危機に陥っていた。そもそも衆院議員の定数削減は、自民と維新の連立合意に含まれた項目だ。
「身を切る改革」を掲げる維新にとっては譲れないテーマで、この臨時国会で比例50削減を決めることが前提だった。ただ、すでに国会の会期は12月17日までしか残されていない。誰の目にも時間切れは明らかになり、維新は焦っていた。
一方で、自民は期限を設けずに他の野党も巻き込んでの協議を主張していた。議論は平行線をたどった。一時は維新が水面下で「約束が違う。“離婚”もやむを得ない」と連立離脱をちらつかせた。
事態が動いたのは11月30日。高市総理の最側近の木原稔官房長官が沖縄視察から東京に戻ってきた夜だった。
東京・赤坂の衆院議員宿舎の会議室に自民からは木原官房長官、萩生田光一幹事長代行、維新からは藤田文武共同代表、遠藤敬総理補佐官が集まった。遠藤氏が自民側にこう訴えた。
「うちは企業献金で自民に譲ったんや。そこを汲んでもらわんと吉村や藤田がもたん。定数削減するっていう実効性の担保が必要や」
維新側は定数削減について期限を区切って実現性をもたせることに強くこだわった。今国会の成立をあきらめて、定数削減のスケジュールだけを決める「プログラム」法案に妥協する代わりに、1年後に結論を出せなかった場合は実効性の担保として「自動削減条項」の導入を求めた。
対する自民は維新が求める比例50削減には抵抗があった。公明党が猛反発していたからだ。
公明党が自民党に送った「警告」
衆院定数465(小選挙区285比例区176)のうち、比例区のみ50削減となると、比例票頼みの公明や共産は3割近く議員数を減らすことになる。
連立を離脱したとはいえ、自公連立の26年間の積み上げは大きく、地方ではいまだに首長選挙や地方議員選挙で自民と公明がタッグを組むことも多い。
そんな中、公明党の党勢に直撃を与える「比例区のみでの1割削減」を自民が受け入れたらどうなるか。公明党側は「削減対象が比例区のみになれば、全国の地方議会で自民党との協力は難しくなる」と自民側に警告を何度も送り続けた。
それでも「自動削減条項」を絶対防衛ラインに抱える維新側に、萩生田幹事長代行が「野党からも協力を得るためだ。せめて小選挙区と比例区のバランスが大事だ」と主張し、自動削減条項は比例区のみ50削減から小選挙区25、比例区20の計45削減で決着した。
この30日の「赤宿合意」を受け、翌1日の総理大臣官邸での高市総理と吉村代表の合意につながった。まさに薄氷の上での合意だった。
とはいえ削減対象に小選挙区を加えたことで、そのハードルは格段に上がってしまった。比例区だけならバサッと切ればいいが、小選挙区となると、現職議員の身分に直結する。
1票の格差問題もからみ“方程式”は格段に複雑になる。高市政権側にこの複雑な式を解く秘策でもあるのだろうか。政権幹部はこうささやく。

