早くも将来の「有望株」の争奪戦がスタートしている。11月30日に開催された「全日本相撲選手権大会」。高校、大学、社会人の枠を超えた「アマチュア横綱」を決める戦いに熱視線を向ける男たちがいた。大相撲の親方衆である。角界関係者が解説する。
「ざっと確認しただけでも、大嶽親方(元前頭玉飛鳥)、音羽山親方(元横綱鶴竜)、桐山親方(元関脇宝富士)、錣山親方(小結豊真将)、高砂親方(元関脇朝赤龍)、武隈親方(元大関豪栄道)、武蔵川親方(元横綱武蔵丸)、湊川親方(元大関貴景勝)、が土俵前の特設席、枡席、ボックス席で観戦していました。目的は有力選手の視察と学校関係者への挨拶のためです。今大会は、アマチュアの中でも選りすぐりのメンバーのみが出場資格を得られ、高校生2人、大学生45人、社会人33人が出場しました。アマチュアとはいえ、予選の時点で大相撲に当てはめると幕下中位レベル、予選を通過した決勝トーナメントに進出した16人は幕下上位〜十両レベルの戦いになります。横綱・大の里がかつてのアマチュア横綱を戴冠したのはもとより、先の九州場所で十両優勝した藤凌駕も昨年大会で3位にランクインするなど、上位入賞者の多くが大相撲でも番付を難なく関取まで駆け上がっている印象です」
中でも眼光鋭く見えたのは武隈親方と湊川親方だった。決勝トーナメント前には枡席で2人の母校でもある埼玉栄高校相撲部の山田道紀監督を挟んで座る場面もあった(上の写真で左から武隈親方、山田監督、湊川親方)のだ。
「埼玉栄出身の選手をチェックしていたのでしょう。1番の目玉は、今回優勝した日本大学1年生の鮫島輝。埼玉栄時代には個人タイトルと縁遠かった選手ですが、身長185センチ、体重160キロの恵まれた体格から馬力のある四つ相撲と強烈なカチ上げでトーナメントを勝ち上がりました。もちろん、卒業後に大相撲入りする場合は争奪戦が必至となる。弟子の獲得には親方の縁が鍵を握りますが、埼玉栄OBの親方はわんさかいます。さらに日大OBも含めるともっと増えます」(前出・角界関係者)
もっとも、すでに争奪戦で一歩後退しているのが武隈親方のようで、
「日大出身の力士を獲得するのは難儀でしょう。というのも、武隈親方は推薦入学が内定していた日大をソデにして大相撲入りした過去があります。それだけに、いまだに日大との間にわだかまりが残っていると言われているんです」(前出・角界関係者)
かつての「不義理」はいつまでも「足かせ」となるのか…。

