エビが跳ねているように左右に揺れる――TikTokをはじめとしたSNSで、主に迷惑行為を行う人や反社会的な人々の界隈で生まれた「横揺れダンス」。昨年頃から小中学生の間でも流行り出し、先生や親たちが困惑している。その歴史は意外に古く、2013年に始まった動画共有サービス『Vine』が発端だった。困惑する親と教師、そして横揺れダンスの火付け役となったTikTokerのグリ長に話を聞いた。
TikTokerグリ長が明かす「横揺れダンス」の誕生秘話
エビが跳ねているようなジャンプをしながら左右に揺れる不思議なダンス、通称「横揺れダンス」。
元々は動画共有サービス『Vine』(2016年にサービス終了)でスキニーのダメージデニムをはいた不良少年らが複数名で踊る動画が投稿され、一部の間で盛り上がっていたのが発端だ。「横揺れダンス」の火付け役であるTikTokerのグリ長さん(28歳)にブームのきっかけを聞いた。
「ノルウェーの音楽プロデューサーが作った『CHERNOBYL 2017』って曲がクラブで流行り、曲に合わせ横揺れ的なダンスが始まったんですよ。
で、曲の中に『JEG VIL AT VI』っていうノルウェー語(私たちに〜してほしい、のような意味)の歌詞があって、それが空耳的に『ヤリラフィー』って聞こえることから、ダンスをやる人達を『ヤリラフィー』とか『ヤリラ』って言うようになりました。
ヤリラが下火になる1年前くらいに僕がTikTokに『横揺れダンス』として投稿したらバズったという」
スキニーのダメージデニムをはき、言葉を選ばずに言えばDQN系(迷惑行為を行う人々の総称)というかヤカラ系に見えるグリ長さん。
だが動画がバズったことで、YouTubeチャンネル登録者数43万人のプロダンサーや芸人のかまいたち、スーツアクターのほしら(51歳)までもが真似るなどして、一気にダンス動画が拡散された。
中学3年生の息子を持つ母親が言う。
「学校の先生から『お子さんが廊下で踊って、振り上げた手が女子生徒の顔に当たってしまいました』と連絡が来て『あんた何してんの!』と怒ったら『横揺れダンスだよ、流行ってるんだよ』と。
ダンスするのは別にいいのですが、時と場所はわきまえてほしいです。ほんとウチの愚息が…。周りに迷惑かけたり人が不愉快になるようなダンスはしないでほしいです」
小学校の低学年と高学年の息子を持つ母親も「本当にやめてほしいです、あのダンス」と顔をしかめる。
「家の中でもたまにエビみたいに跳ねてやってて、見てるだけでイラッとする動きですよね、あれ(笑)。学校では廊下でも友達と一緒にやってるみたいで、バカっぽいしほんとやめてほしいです」
「子供が横揺れダンスで体を動かすようになった」という親も…
小学6年生の娘を持つ母親は「ウチの子はダンス習ってるんで、ああいう下品なダンスはしませんね」と笑う。
「ウチの子はこういうバカな踊りはしませんね。中学受験する子も多いエリアなんでそんなお友達もいないと思います」
いっぽうで「いつもSNSばっか見て運動不足気味だったけど、横揺れダンスで体を動かすようになったから微笑ましく見てる」と言う、小学4年生の息子を持つ母親も。
「家の目の前で滝汗になるまで踊ってましたよ(笑)。息子が横揺れ動画に『いいね』をつけるから、私のスマホのリールが横揺れだらけになっちゃったんで、それはマジ勘弁って感じですけど…。体を動かすのは別にいいんじゃないのかなって思います」
小学校の教師はこのブームをどう見ているのか。
「ダンスすることは悪くないので、校庭などでやる分には注意はしません。でももちろん、みんなが教室移動する時にふざけて誰かが始めて、連鎖するように複数人が踊り始めたりすれば危ないので注意します。
担任の判断になりますが、うちは教室内の広いスペースで友達同士であまり激しすぎずに踊るなら注意はしないです。でも流行らせた人たちが不良系の人という点で親御さんは心配になりますよね。
やはりSNSによって大人だけでなく子供も簡単にそういう動画が見られるようになって、ゾーニングできない状況なのは良くないですよね。子供たちが非行に走るきっかけは教師としては防ぎたいです」
親や教師たちは、横揺れダンスのブームに不安を感じている。散々な言われようだが、火付け役となったグリ長は現在のブームをどう見ているのか。
「交差点のど真ん中で横揺れした動画を投稿したら『迷惑やろ!』とアンチコメントがいっぱいつきましたので、実は僕も交差点ではやらんとこって思いました。だから少年少女たちにも言いたいです。人の迷惑になる場所ではやっちゃダメだよって」

